福井県知事及び福井県原子力安全専門委員会への再要望書 – 高浜3・4号機使用済燃料ピットの臨界安全性問題

福井県知事及び福井県原子力安全専門委員会への再要望書
高浜3・4号機使用済燃料ピットの臨界安全性問題

県の求めに応じて出してきた関電の回答は
「参考」にしたはずの米国の規格を改ざんし、不確定性を小さく評価

米国の規格では、評価値0.965>基準値0.964 となり不合格です

これらを慎重に検討されるまで、高浜3号プルサーマルの起動を認めないでください

福井県知事 西川一誠 様
福井県原子力安全専門委員 各位様

2010年12月6日
グリーン・アクション
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会

 私たちは11月20日付で、貴職と貴委員会に宛てた要望書を提出しました。関西電力(関電) の高浜3・4号機使用済燃料ピットでは、関電が参考にした米国の規格ANSI/ANS-57.2 を適用すれ ば臨界が起こる危険性があると指摘し、この問題について慎重に検討されるよう要望したものです。 その後私たちは、この問題について関電に問い合わせていただくよう福井県原子力安全対策課の 岩永課長に申し入れ、課長から関電に要請が出されました。その結果、関電から福井県に回答が行 くと同時に、私たちにも直接同じ回答がFAXで送られてきました。専門委員のみなさまもすでに ごらんになっているものと思いますが、念のため添付いたします。
 関電の回答では、誤差伝播の一般式と、それを適用できる前提である変数の独立性について書か れているだけです。その実、伝播論を用いて不確定性が小さくなるよう操作し、不合格を合格にし ています。その点を以下で簡単に指摘した上で、改めてこの問題を重視して検討していただくよう 要請します。
 なお、以下で引用するコメント回答とは、前回要望書でも引用した「関西電力株式会社 高浜発 電所原子炉設置変更許可申請(1号、2号、3号及び4号原子炉施設の変更)コメント回答(その 2) 平成22年1月27日 原子力安全委員会 原子炉安全専門審査会 資料3−7号(平成2 2年1月 原子力安全・保安院)」のことです。

■関西電力の回答に対する批判点

1.未臨界の安全基準値を改ざんしています。

すでに前回要望書の別紙説明資料で指摘していますが、ANSI/ANS-57.2 第6.4.2.2.1 項によれば、 評価の判断基準は、ピットに関する実効増倍率の最大評価値Ksが、評価基準である最大許容増倍率 ka 以下であること、つまり、

ks(評価値)≦ka(基準値)

となっています。ここで評価基準ka は次式で定義されています。

2 ka=kc−Δku−Δkm

 ここで、関電はkc =1.000、安全余裕Δkm =0.020 とり、臨界実験に関する不確定性Δku を無視 してka=0.980 と定めています。このような基準のとり方がANSI/ANS-57.2 と異なっているのは明ら かです。
 もしANSI/ANS-57.2 のとおりにとるなら、関電の数値ではコメント回答表2より、 Δku =εc =0.0156 となるので、ka=1.000−0.0156−0.020=0.964 となります。この基準は臨界 実験に関する量だけから決まるもので、本来の趣旨に沿ったものと言えます。結局、

米国の規格にもとづけば、 基準値=1.000−0.0156−0.020=0.964

関電方式では、 基準値=1.000−0.020=0.980

となり、米国の規格を「参考」にしたとしながら改ざんして、基準値を緩和しています。

2.対象の異なる不確定性をごちゃ混ぜにして扱っています(臨界実験の不確定性とピット内 製作の不確定性をごちゃ混ぜに)

 関電方式では、Δku=εc=0.0156 をコメント回答表2内のラック等に関する4つの不確定性εp, εw,εf,εg と一緒にして扱っています。そのように扱ってもよい根拠として、関電の12月2日付 回答では、誤差の伝播論をもちだしています。しかし、誤差の伝播論では、ある「物理量」が関数 として与えられるのですが、それが何かがここでは規定されていません。
 ANSI/ANS-57.2 に従えば、それら「物理量」としてピットに関するksと臨界実験に関するka があ ると考えられ、それら各々に誤差の伝播論を適用することは妥当だと考えられます。しかし、関電 はこのような区別をせず、違った世界の量をごちゃ混ぜにして扱っています。

3.伝播論で不確定性を小さくし、非安全側に歪めています

 関電方式は、ANSI/ANS-57.2 規格を非安全側に歪めています。このことを以下で説明します。
 まずここでは、ピットのラック等に関する不確定性εR をεR 2=εp 2+εw 2+εf 2+εg 2 によって定義し ます。そうすると表2の注釈にあるε=√(εc 2+εR 2)と書くことができます。
 他方、ANSI/ANS-57.2 ではこれらの不確定性を区別し、事実上ε=εc+εR として扱っているの と同等になっています。つまり、直角三角形に例えれば、ANSI/ANS-57.2 では二辺の和として扱う べき不確定性を、関電は斜辺に置き換えて小さくしていることになります。
 結局、不確定性を根拠のない非合理な方式で小さくなるように扱って、本来なら不合格になるも のを合格にしています。逆にたどれば、このように不確定性を小さくしたいという動機で、誤差伝 播論をもちだしてごまかしたと考えられます。他の部分では安全側に扱うようにしながら、肝心の 論理で非安全側になるようまやかしの操作をしているわけです。

 これらの点についてぜひ慎重にご検討いただき、それまでは、高浜3号機の原子炉起動を認めな いでください。

2010年12月6日
グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
京都市左京区田中関田町22-75-103 TEL: 075-701-7223 FAX: 075-702-1952 美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3 階 TEL: 06-6367-6580 FAX: 06-6367-6581