2月19日の交渉を踏まえた、渦電流探傷検査の精度、「中間貯蔵施設」などに関する質問書
関西電力社長 藤 洋作 様
2003年3月18日
I .上蓋管台に関係するもの
1.上蓋管台の渦電流探傷装置について、実機の場合「ECTの検出性能、並びに実機のノイズ信号の影響を評価して、深さ3mm以上の亀裂であれば検出できる」とのことでした。しかし、「上蓋管台の損傷ゼロ」を公表した貴社の「関西電力の渦電流探傷検査状況(平成7年12月末現在)」の表の下には、「参考:装置の検査精度約1mm」と記載されています。
- ECTの検出性能で言えば、何mmの亀裂を確認することができるのですか。
- 「検査精度約1mm」とは、スリーブ等のない、実験での検出性能のことですか。
- そうである場合、なぜ上記書類では、「検査精度約1mm」と記載したのてすか。
2.高浜1号機の炉底部管台で「信号指示」があり、これがSCCである可能性は否定されていません。他方、炉の上蓋管台で損傷が起こる現象について、貴社はこれまで、そこが高温であることをもっぱら問題にし、そのため温度低減化対策をとってきました。その対策の結果、SCC発生の予測時間は40〜60万時間にまで延長されたと主張してきました。ところが、炉底部管台の温度は、上蓋管台の低減化された温度と同程度です。その炉底部管台でSCCが発生したとなると、低減化された温度であっても、40万以上の時間ではなく、18万時間程度でSCCが発生することになります。ちなみに、炉底部管台と上蓋管台の材質は同じです。
- 高浜1号機で検出された「信号指示」が発生初期のSCCであった場合、貴社のいう温度低減化対策をとりさえすれば大丈夫だとの見解に強い疑問が生じることになります。問題は上蓋管台の安全性にも直ちに波及します。したがって、「信号指示」がSCCかどうかを早急に綿密に調査する必要があるのではないでしょうか。
3.上蓋管台のひび割れの進展速度は5年で1.3mmとの想定について質問します。
- 「原子炉容器上蓋の予防保全対策」−「B.判定基準」【1】のフランスの例では進展速度は1年当たり4mm。【2】のアメリカの例では1年当たり2mmとの説明でした。他方貴社の想定は5年で1.3mm(1年当たり0.26mm)であり、大きく異なっています。この違いは何に起因するものですか。具体的に説明してください。
- 傷の進展速度が5年で1.3mmという判断は、基本的にどのような方法から導かれたものですか。解析ですか、それとも実測データからですか。どちらの場合にしろ、その方法がどのようなものか具体的に提示してください。
- 3月7日に放映されたNHK「クローズアップ現代」では、デービス・ベッセ原発の上蓋に穴があいた事故も取り上げられました。その中で、NRCの職員は、損傷が数年間放置されていたのは、アメリカでは上蓋管台の維持基準がなかったためであり、現在上蓋管台の維持基準を作成中だと述べていました。他方、貴社のHPでは、上蓋管台の「判定基準」【2】で「米国で運用されている維持基準の考え方」と記載されています。上蓋管台について、アメリカの維持基準は存在するのですか。
4.貴社が取り替えた上蓋管台のデータはメーカーがまだ保存しているのですか。もしそうなら、そのデータを公表してください。
II .高浜1号機の炉内計装筒管台に関係するもの
1.炉内計装筒管台での渦流探傷検査に使われたプラスポイント型の探傷子について質問します。
- 渦電流探傷検査の検出性能について、交渉では「エンジニアリング・ジャッジ」として3mmの傷を確認できると繰り返し発言されました。この「3mm」とは、プラスポイント型ECTの検出性能のことですか。それとも貴社の判断基準ですか。
- 高浜1号機の炉底部について「1mm以下の信号指示」となっていますが、プラスポイント型の検出性能(検出限界値)が3mm以上であれば、なぜ「1mm以下」と判定できたのですか。
- プラスポイント型は検査精度が向上しているにもかかわらず、検出性能が従来型と同じ深さ3mm以上となっているのはなぜですか。
- プラスポイント型の検出性試験の対象および条件について、管の板厚や、外側に圧力容器がついた状態で行われたのか等、具体的に示してください。
2.「高浜1号機原子炉容器炉内計装筒管台の保全について」は、「【1】深さ3mm以下:良/【2】深さ3mmを超えた場合:健全性評価を実施」を「検査の判定基準」としています。この「検査の判定基準」について質問します。
- 炉内計装筒管台に関するこの「検査の判定基準」は、いつ定められたのですか。
- 検査の結果「傷」があると判定した場合、その傷については何らかの補修または修理が必要だと考えていますか。
- 3mmを超えた場合に実施される「健全性評価」について、手順および対策が必要となる割れ深さ等、具体的な内容を明らかにしてください。
- 上蓋管台について、この「検査の判定基準」と同様の具体的判定基準は定められていますか。定められている場合はその内容を明らかにしてください。また、その他の機器についてはどうですか。
3.美浜2号機等の高経年化対策報告書では、炉内計装筒管台での「SCCの発生可能性は否定できないとされています」とのことですが、報告書の該当箇所を提示してください。
4.炉内計装筒管台のひび割れから漏洩が発生した場合、1時間当たり2.3トンの一次冷却材が漏れ出すとの想定について質問します。
- 1時間当たり2.3トンの一次冷却水が漏れるという推定は、ひび割れの形態に依存していると考えられますが、その形態をどのように想定したのかも含めて解析方法を提示してください。
- 貴社は、原子炉圧力容器の底部に穴があいても、通常の充填ポンプ流量(13.6t/h)より漏洩流量(2.3t/h)が小さいから大丈夫だと説明されました。圧力容器の底部でひび割れが発生すれば漏洩は止まりません。運転中原発の圧力容器の下部に穴があくことを想定していること自体が極めて異常であり、恐怖すら感じます。事故終息がどのような経路をたどると想定しているのか、明らかにしてください。
5.高浜1号機の炉内計装筒管台に対する「経年的な調査」について質問します。
- 次回定期検査でNo.48管台の渦流探傷検査を実施するとのことですが、その他の管台についても渦流探傷検査は実施するのですか。
- 「経年的な調査」とは、今後定期検査毎に渦流探傷検査を実施するということですか。「経年的な調査」の具体的なスケジュールを明らかにしてください。
6.美浜1・2号機、大飯1・2号機について、WJP施工時に実施された渦流探傷検査の検査結果、検査データおよび工事報告書を開示してください。7.平成4年〜8年にかけて代表プラント(美浜1・2号機、大飯1号機、高浜2号機)で実施された炉内計装筒管台での渦流探傷検査の検査結果、検査データおよび工事報告書を開示してください。8.「漏えいしないという観点からは、約2mmの板厚が残っていれば強度上問題ありません」とのことですが、残り2mmにかかる応力および管台材質の耐力等を示し、漏洩が発生しないことを具体的に示してください。
III .「中間貯蔵施設」に関係するもの
1.貴社は使用済み燃料中間貯蔵施設(リサイクル燃料備蓄センター)を建設する方針ですか。福井県を除く地域に建設するのですか。和歌山県御坊市に建設する意向をもっていますか。
2.各原発サイト内の使用済み燃料プールでは、管理容量が決められていますが、これはきちんと守る方針ですか。
3.現在ある中間貯蔵施設の指針では、金属製の乾式キャスクで輸送及び貯蔵することが想定されていますが、この指針に則った計画を立てているのですか。
4.中間貯蔵施設から運び出す先としては、現在六ヶ所村に建設中の再処理工場ではなく、その次にいつかどこかに建設されるはずの第2再処理工場を予定しているのですか。
5.指針によれば、中間貯蔵施設ではキャスクの蓋を開けないことになっています。その場合、再び運び出すときに、内容物に対する黙視検査はどのようにして実施するのですか。
以上
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