美浜3号機事故最終報告を受けての福井県への要望書:配管管理への独自の監視を強化し、情報を公開してください

福井県知事 西川 一誠 様

グリーン・アクション(代表:アイリーン・美緒子・スミス)
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(代表:小山英之)

11名もの死傷者を出した美浜3号機事故に関する原子力安全・保安院の最終報告が出されましたが、事故の本質的原因や責任はあいまいなままです。そのことは何よりも関電トップの人事が示しています。また、藤社長の、トップは安全第一だったが、「社内に十分浸透させることができなかった」という認識に現れていると考えます。

電力自由化という条件の下で、経済性を最優先し、定期検査の期間を短縮してきた関電トップの経営姿勢にこそ問題のあることが、多くの人たちによって指摘されてきました。しかし、上記のトップ人事はこの姿勢を変えるつもりのないことを示しています。事実、4月15日に公表された「原子力発電所の平成17年度保守運営計画について」によれば、大飯3号、高浜1号、大飯4号の定検期間はそれぞれ1.3ヶ月、1.6ヶ月、1.6ヶ月でこれまで同様に短いものです。また、3月28日の「平成17年度経営効率化計画」では、「事後保全化の範囲拡大、点検周期・工事範囲の見直し」など「設備保全の効率化に努め、長期的なコスト低減を目指します」と書かれています。

貴職は、3月22日に「国の配管管理システムへの関与および国の責任の明確化」を国に要請されました。管理のソフト面ばかりが強調される国の傾向に対して、ハード面での管理の強化を訴えられてきました。しかし、保安院の最終報告書では、国の責任については明記されていません。むしろ、「事業者の自立的保守管理能力の向上」が強調されています。現在の傾向からすれば、配管検査に関して、対象範囲を狭め、基本的に事業者の責任に委ねる方向が打ち出されています。

事実、2月18日付保安院の暫定指針では、これまでの「その他部位」の扱いがあいまいになり、さらに機械学会の案では、「その他部位」は事実上無視されています。公衆の意見を受けた機械学会の回答では、「規格の採用はそれぞれ設備管理者が選択するものです。また適合性の確認は採用者が自ら行うべきものであります」としていますが、これでは配管管理は電力事業者に委ねられることになります。規制緩和のこの姿勢は、まるで美浜事故を利用した火事場どろぼうのようなものではないでしょうか。関電の姿勢を見れば、このような方向はきわめて危険なことです。

このような状況においては、事業者はもちろん、国に対しても、責任ある管理を期待することはできません。それどころか、原発の老朽化が進む中で、再び「美浜事故」が起こる危険性が高まると言わざるを得ません。美浜事故は老朽化によって起こったとの認識に貴職は立たれています。私たちは、地元自治体がこれまでにも増して、原発に対する直接的な監視を強化されることを期待するものです。

福井県では、これまで原子力安全専門委員会が美浜事故の情報を収集し、独自の分析をされ、そこに提出された資料はすべて公開されてきました。私たちは、今後いっそうこの活動を強化されることを期待します。

以上の考えにしたがって、以下の点を要望します。

要望事項

  1. 関電の原発、とりわけ老朽原発の配管管理に対する独自の監視をいっそう強めてください。
  2. 配管検査等に関する情報・資料を積極的に収集し、それらをすべて公表してください。

2005年4月19日

連絡先

グリーン・アクション
〒606-8203
京都市左京区田中関田町22-75-103
(代表:アイリーン・美緒子・スミス)
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FAX: 075-702-1952

美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
(代表:小山英之)
〒530-0047
大阪市北区西天満4-3-3
TEL: 06-6367-6580
FAX: 06-6367-6581