使用済MOX燃料を憂慮する全国の市民の質問書

官僚主導で行われている偽装への疑問

使用済MOX燃料の処理方策に関する準備的検討の進捗

及び

高浜3・4号機用MOX燃料ペレットの大量不合格問題
に関する質問書


経済産業大臣 直嶋 正行 様

2009年10月2日
使用済MOX燃料を憂慮する全国の市民

 使用済MOX燃料の処理の方策をめぐる問題について、今年5月18日に国が国会議員の前で説明した内容が、その後、官僚的な都合に合わせて勝手に変更され偽装されています。脱官僚依存をかかげる大臣にとって、このような事実は見過ごし難い典型的な問題ではないでしょうか。
 表記の2つの問題について下記の質問をしますので、9月25日までに回答を文書でいただくよう、また、質疑応答の場を設けていただくよう要請します。

[1]使用済MOX燃料の処理の方策に関する準備的検討の進捗状況について

 使用済MOX燃料の処理の方策は2010年頃から検討を開始することになっており(原子力政策大綱)、その準備的検討が五者協議会で進められています。五者協議会の2007年5月8日付報告書によれば、検討計画については同年3月20日付で「高速増殖炉サイクル実証プロセス研究会」(以下、「プロセス研究会」)から「軽水炉サイクルからFBRサイクルへの移行に関する検討計画」(以下、「検討計画」)が出されています。この検討計画は、上記5月20日付報告書において「今後は第二再処理工場を含む燃料サイクル側の検討に入ることとし、その内容と進め方を整理」したものとされています。
 この検討計画によれば、2007年度中に「中間成果報告」を出し、2008年度末には「最終成果報告」を出すことになっています。しかし、国会議員に対する5月18日のヒアリングにおいて、資源エネルギー庁原子力立地核燃料サイクル産業課の田岡課長補佐から行われた説明では、これらは未だ出されていないとのことでした。
 ところがその後、これら報告書はすでに出されたかのような解釈が流布している向きがあります(佐賀県9月議会での知事答弁など)。その場合、たとえば07年12月6日付五者協議会資料が「中間成果報告に相当する」、09年7月28日の原子力委員会に提出された「プロセス研究会」資料が「最終成果報告に相当する」とされています。
 重要なのは、ある報告を「中間成果報告」と名付けるか否かではなく、その報告の内容が処理方策の検討を開始するための準備としてふさわしいかどうかにあると考えます。その際、原子力政策大綱が「処理の方策は、六ヶ所再処理工場の運転実績、高速増殖炉及び再処理技術に関する研究開発の進捗状況、核不拡散を巡る国際的な動向等を踏まえて2010年頃から検討を開始する」としていることが重要となります。
 以上を踏まえて、以下の点を質問します。

1.「中間成果報告」について

  1. 「中間成果報告」はすでに出されていますか。
  2. 2007年12月6日付五者協議会の報告書は「中間成果報告」ですか、それともそれに「相当するもの」ですか。後者の場合、「相当するもの」とはどういう意味ですか。
  3. 「検討計画」の4.2項では、「東海再処理工場、六ケ所再処理工場の実績から将来プラントに反映さすべき情報を整理して、今後の研究開発課題を洗い出す」との方針が立てられており、この「中間成果報告」が2007年8月末に出ることになっています。この「中間成果報告」は出されているのですか。もし上記12月6日付報告書がそれに相当するのであれば、このような内容はこの報告書のどこに書かれていますか。

2.「最終成果報告」について

  1. 2009年7月28日の原子力委員会に提出されたプロセス検討会の報告書は「最終成果報告」ですか。
  2. もしそうであるなら、「検討計画」で検討を予定されていた内容は、具体的にこの報告書の何処に書かれているのですか。たとえば、処理方策の検討開始にあたって踏まえるべき「六ケ所再処理工場の運転実績」はどこに総括されていますか。

3.六ケ所再処理工場の運転実績や「もんじゅ」研究開発の進捗状況の評価について

 政策大綱の44頁では、「具体的には、研究開発の場の中核と位置付けられる『もんじゅ』の運転を早期に再開し、・・・」とされ、また、立国計画の49頁「(3)課題と今後の対応」には、「今後の高燃焼度燃料や軽水炉使用済MOX
燃料の実証試験等については、六ヶ所再処理工場及び第二再処理工場に係る要件を踏まえ検討を行うべきである」と書かれています。さらに、立国計画の基本シナリオでは、「1.
早期にFBR 原型炉「もんじゅ」の運転を再開し、”発電プラントとしての信頼性の実証” と “運転経験を通じたナトリウム取扱技術の確立”を実現する」とされています。
 政策大綱でいう2010年頃の検討開始は、2007年には六ケ所再処理工場が運転開始し、「もんじゅ」が運転再開することを前提にしています。これらの条件と実際の進捗状況のギャップについてはどのように考えているのですか。検討開始の条件はすでに満たされているとの考えですか。もしそうなら、その理由を説明してください。

4.2010年に検討開始する場合

 六ケ所再処理工場は2010年10月以降にならないと運転開始はできません。また、「もんじゅ」が仮に2010年初期に運転再開できたとしても、政策大綱ではその運転状況を3年程度見極めるはずでした。
 仮に、2010年に処理の方策の検討を開始するとしても、それは2005年時点の政策大綱が予定したのと内容が異なるものになるのではありませんか。異ならないのなら、その理由を説明してください。

[2]関電・高浜3・4号機用MOX燃料ペレットの大量不合格問題について

 高浜3・4号機用のMOX燃料ペレットに1/4もの高い確率で不合格品が出たと関西電力は8月19日に公表しました。その際関電は、「メロックス社はこれまでの経験に基づき、当該ペレットはMOX燃料として採用が可能だとしていますが、当社と原燃工では最終的に厳しく対応することとし、当該ペレットを採用しないこととしました」とプレスリリースで述べています。
 この記述は、関電とは別の事業者用に製造されたMOXペレットでは、関電と同様の問題が起こった場合でもペレットを採用した経験があると解釈できるため、問題が他に波及する可能性があります。また、自主検査項目中のどの項目で不合格になったかなどについては、国に報告していると関電は述べています。
 そこで、次の点を質問します。

1.関西電力からの説明について
 関電は不合格になった自主検査項目がどれかなどを国に説明したと言っていますが、国は関電からいつどのような説明を受けたのですか。

2.自主検査の評価について
 関電等は国の検査項目とは別に自主検査項目を設けて安全性の確保を行っています。国としてはそのことの報告を受けているはずですが、自主検査項目も安全性を確保する上で重要な検査であると考えていますか。今回関電がとった不合格の措置については妥当なものと評価していますか。

3.他の電力への調査指示について
 今回関電が大量の不合格ペレットを出したという事実を受けて、国は他の電力にどのような調査をするよう指示したのですか。

4.他の電力の自主検査について
 佐賀県によれば、九州電力も自主検査をしているとのことですが、これは事実ですか。
 四国電力および中部電力も自主検査をしていますか。

5.不合格項目について
 関電が不合格とした自主検査項目は、九州電力などそれぞれでも自主検査項目となっていますか。

6.他でも自主検査項目となっている場合
 関電が不合格とした程度の測定値が他では出ていないことは確認できているのですか。

7.他では自主検査項目となっていないとき
 関電が不合格としたペレットが1/4程度の確率で混ざっている可能性がありますが、そのことに関する安全性についてはどのように評価していますか。

8.玄海3号機へのMOX燃料装荷の中止について
 メロックス社で製造したMOX燃料ペレットの品質に疑問が生じた以上、玄海3号機へのMOX燃料装荷をとりあえず中止するよう指示するべきではありませんか。

9.アレバ・メロックス社の品質保証体制について
 今回メロックス社は、不合格となった検査に関する詳細なデータを関電に提供することを拒否しました。関電にとってその詳細なデータは品質の判断をする上で必要なものだったからこそ提供を要求したのです。これでは、メロックス社の品質保証体制がどうなっているのか、同様の不合格品が出ない保証があるのかどうか判断ができません。
 関電は、事前に第三者の評価なども求めて調査し、品質保証体制が成り立っていると判断し、その評価で国に製造許可を求めたはずです。その結果、製造に踏み切ることができたはずです。
 ところが、現在はメロックス社の品質保証体制に疑問が生じ、そのことを確認するためのデータさえ提供を拒否される事態になっています。つまり、当初関電が国に製造許可を求めた時と、状況が変わっています。
 メロックス社の品質保証体制に関する当初の判断を白紙に戻し、とりあえずは製造を中止するよう指示するべきではありませんか。

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