6月1日学習会‐再処理と経済性‐フェッター教授にきく19兆円負担のゆくえ

日時:2004年6月1日(火)18:30─20:30
会場:渋谷女性センター・アイリス7階会議室
    渋谷区渋谷1‐17‐7(全国婦人会館内)TEL03-5466-3956
講演:スティーブ・フェッターさん
    米・メリーランド大学教授エネルギー・原子力問題の専門家
資料代:800円
連絡先:ふぇみん婦人民主クラブTEL03-3402-3238
主催:コストから原発を考えるプロジェクトTEL03-5338-9800(グリーンピース・ジャパン)

スティーブ・フェッターSteveFetter
メリーランド大学公共政策学科教授、グローバルチェンジ研究所副所長。物理学者。軍備制限、核不拡散、原子力、人体への放射線の影響、気候変動問題、エネルギー供給の専門家。
アメリカ科学者連盟の副会長を務め、軍備管理協会で管財人を務めている。全米科学アカデミーの国際安全保障軍備制限に関する委員会、アメリカ物理学会の物理と社会に関するフォーラムの代表委員会、持続可能なエネルギー研究所の理事、「科学と世界的安全保障」の編集員などを務める。アメリカ物理学会会員であり、学会からは、ジョセフ・バートン・フォーラム賞を授与されている。スタンフォード大学国際安全保障軍備整備研究所、ハーバード大学科学国際関係研究所、マサチューセッツ工科大学核融合研究所、ローレンスリバモア国立研究所の客員研究員として活躍。カリフォルニア大学バークレイ校でエネルギーと資源に関してPh.D.を取得、マサチューセッツ工科大学で物理学のS.B.を取得。「サイエンス」、「ネイチャー」、「サイエンティフィック・アメリカン」、「国際安全保障」、「ブリティン・オブ・アトミック・サイエンティスツ」などに論文掲載。著書に「包括的核実験禁止に向けて」、共著に「アメリカの核兵器政策の未来」、「核転換点」など。

■再処理の経済性を問題視していますね。
「3万2千トンの再処理に11兆円をかける日本の計画では再処理コストが1キロあたり3千ドルを超える。ほかのコストが欧州並みに抑えられたとしても、ウランは1キロ=1600ドル以上にならないと見合わない計算になる」「ウランにその費用をかけられるなら、地球の大陸の代表的岩石である花崗岩(かこうがん)や、将来的には海水からも、より安くウランを取り出せ、事実上、ウランは無尽蔵になり、リサイクルの意味はない」「核燃料サイクルを進めた場合の日本の後処理費用(発電後に発生する費用)は、使用済み核燃料1キロあたり5500ドル。一方、数十年、乾式貯蔵してから最終処分に移す場合、最終処分コストが米国の3倍かかると考えても全体で1キロあたり1500ドル程度と、3分の1以下に抑えられる。今後40年間に単純計算で1千億ドル(10兆5千億円)以上の節約だ」

■利点はないのでしょうか。
「廃棄物自体の容積は減るが、それを管理する場所は小さくできない。放射能が強く高熱の廃棄物の割合が多くなるため、互いに離して置く必要があるからだ。欧州のように、再処理して作ったMOX燃料を1回だけ燃やして処分するなら、逆に直接処分の場合より管理施設は大きくなる」「安全面も、使用済み核燃料を置いておくのに比べ、巨
大な化学工場である再処理施設は汚染事故の可能性が高まらざるをえない」

■すでに欧州で日本向けプルトニウムが取り出されています。
「核爆弾は、民生用プルトニウムからも作れてしまうから、すでに抽出した分はMOX燃料として原発で使い、プルトニウムが取り出しにくい使用済み核燃料の状態にすべきだ。しかし、再処理工場を動かして新たなプルトニウムを取り出すと、核拡散への懸念は一層強まる」

■再処理工場はほぼ完成してウラン試験を待つ段階です。
「いったん放射性物質を使った試験をすると、施設の廃棄コストは跳ね上がる。現段階で日本にとって最善なのは、取り戻せない巨費の新規発生を防いだうえで、あらゆる選択肢を温存することだ。再処理工場は、いざとなれば数年で稼働できる現状を維持する一方、使用済み核燃料の乾式貯蔵施設を用意する。数十年は結論を出さずに貯蔵し、最終処分と再処理の双方の研究を続け、技術やコスト、政治情勢をみて判断すればいい」

*スティーブ・フェッターさんと共に報告書『再処理vs直接処分の経済学』を執筆したマシュー・バンさん(ハーバード大上席研究員)のインタヴューから
(2004年4月7日『朝日新聞』より)