「生命と生活、環境・自然を守る−原発さよなら署名」に関連する質問要望書
内閣総理大臣 野田 佳彦 様
深刻な福島第一原発事故にかんがみて、私たちは脱原発への多くの人たちの意思を、署名を通じて集約してきました。昨年7月29日の第一次提出を踏まえ、今回最終的に集約した署名を提出し、これら全体の署名に託された意思に基づいて、改めて以下の点を要望します。
福島第一原発の大事故の責任をとり、政府は脱原発への転換を速やかに決定すること。原発の再稼働を停止するとともに、再処理工場と「もんじゅ」を永久停止すること。
自然エネルギーに転換すること。
昨年7月29日の交渉において、福島第一原発事故の実態と原因はまだけっして明らかになっていないこと、ストレステストの判断基準は立てられていないことが明らかになりました。この状況は今もまったく変わっていません。福島事故の実態と原因の解明がストレステストの評価よりも、何にも優先して行われるべきです。このことこそ、福島事故で多大な被害を被り、今もなお被害に苦しむ多くの人たちの思いに応えるべき道ではないでしょうか。
このようなとき、日本原燃は今年1月4日に、六ヶ所再処理工場のガラス固化試験に係るアクティブ試験の準備を開始しました。1月末までにガラス固化体の製造にかかるとしています。これでは、まるで福島事故などなかったかのような振る舞いではないでしょうか。原子力安全・保安院はストレステストの指示を昨年11月25日に日本原燃に対して出しておきながら、この試験開始に何も関与せず、黙って見過ごしています。福島事故を受けたいま、このよう姿勢が許されていいのでしょうか。
このような状況を考慮して、以下の質問をします。
1.六ヶ所再処理工場のアクティブ試験の開始がいまどうして許されるのですか
(1)今回のガラス固化試験再開にあたって、日本原燃から保安院に対して許可または承認を求めるような文書は寄せられていないとのことですが、これは事実ですか。保安院から承認を求めるようにとの指示を、なぜ出していないのですか。
(2)保安院は昨年11月25日に日本原燃に対し、アクティブ試験に関するストレステストの報告を提出するよう指示を出していますが、その報告書の提出時期は今年の4月以降だということです。アクティブ試験の開始は、少なくともストレステストに合格して後になるのが当然の措置ではないですか。原発では、ストレステストの合格が運転再開の条件になっているのに、なぜ再処理工場ではそうしないのですか。
(3)今回のアクティブ試験の準備には、高レベル廃液濃縮缶の運転が含まれていると報道されていますが、これは事実ですか。その濃縮缶の温度計保護管には2010年に腐食孔が生じたが、原燃は孔を塞ぐ措置をとらず、単に圧縮空気を保護管内に送って漏れを抑える措置をとっただけです。地震によって、その圧縮空気を送る装置の停止または送る管の破損が起こった場合はどうするのですか。
(4)六ヶ所再処理工場では、昨年7月22日に安全蒸気ボイラ2台が同時故障を起こし、多重性が成り立っていないことが浮上しました。保安院は12月22日に日本原燃の原因判断を妥当と評価しましたが、1月5日の原子力安全委員会でその内容が厳しく問題にされています(速記録11〜16頁)。安全確保の多重性が他でも成り立っていない可能性があり、安全委員会で指摘された欠陥的体質が日本原燃にあるのに、どうしてアクティブ試験を行うことができるのですか。
(5)高レベル濃縮廃液貯槽における崩壊熱除去(冷却)機能や圧縮空気による水素の掃気機能は、アクティブ試験中でも緊急安全対策やストレステストの対象になっています。冷却用の配管や圧縮空気を送る配管が地震で破損した場合でもそれらの機能は維持されるのですか。そのことは日本原燃のどの報告書に記載されていますか。
(6)福島事故を受けて、六ヶ所再処理工場をこのまま続けることに対する疑問が広く起こっています。少なくとも今は再処理工場の試験運転を凍結すべきではありませんか。
2.福島第一原発事故の実態と原因は未解明なのではありませんか
(1)これまでに得た保安院の見解では、福島事故の実態と原因が未だ解明されたとは言えず、解明のためには現地調査が必要だということでした。この考えは変わっていませんか。
(2)昨年12月16日付で保安院が東電に対して出した指示の中には、たとえば、3号機の格納容器圧力の挙動が説明できていないので再解析せよとの内容が含まれています。ところが12月22日付東電の回答では、やはりその説明はできないという結果になり、そのことは12月27日の技術的知見意見聴取会でも確認されています。つまり、事故の実態は未だ解明されていないということですか。
3. ストレステストの判断基準について
(1)大飯3・4号に対して適用したストレステストの判断基準はどのようなものですか。
(2)安全委員会はどの段階で保安院の見解を審査するのですか。その場合の判断基準はどのようなものですか。
4.地元了解について
原発の運転再開にあたっては、地元の了解が必要だとのことでした。また地元の範囲は福島事故を受けて広がっているとの見解が示されていました。
(1)大飯3・4号に関する地元への説明・了解の場合、福井県だけでなく滋賀県、京都府も対象に含めていますか。含めていないとすれば、それはなぜですか。
また、伊方3号、泊1・2号など他の原発の運転再開に当たっても、少なくとも30〜50�圏内の地元市町村は説明・了解の対象に含めていますか。含めないとすれば、それはなぜですか。
(2)了解を求める内容としては、福島事故が二度と起こらないことを説明するとのことでしたが、福島事故の実態と原因が解明されるまでは地元了解を求めることはないということですか。
(3)これまで4閣僚の判断は最終段階だということでしたが、地元には、その最終判断について了解を求めるということですか。
5.大飯原発に関する暴力団の関与について
関西電力は福井県の「暴力団排除条例」に違反して、暴力団と関係している会社と契約を結び、その会社は工事偽装請負をしていたことが明らかになりました。そのため福井県警と福岡県警が大飯原発の構内に捜査に入っています。
(1)このような事態を引き起こした関電の社会的責任についてどう考えていますか。どのような指導をするのですか。
(2)このような関電が大飯原発を動かすことはできないのではありませんか。
6.1月18日のストレステスト意見聴取会について
保安院は1月18日のいわゆるストレステスト意見聴取会で傍聴者を閉め出し、別室に少数の委員を集めて保安院見解を示し、それが了承されたことになったとのことです。また、聴取会の会議室周辺には多数の警官が配置されていました。
(1)傍聴者を別室に閉め出した理由は何ですか。声があがる程度で閉め出すのは、公開をうたった原則に反するのではありませんか。
(2)「利益相反」委員がいると指摘されていますが、その問題について調査したのですか。調査の具体的な結果と判断基準を明らかにしてください。
(3)警官を呼んだのは誰の判断ですか。どのような理由で行ったのですか。
(4)最終的な聴取会に参加した委員は何名ですか。その氏名を明らかにしてください。少数であれば、その聴取会は無効として、やり直すべきではありませんか。
2012年1月26日
「生命と生活、環境・自然を守る−原発さよなら署名」呼びかけ団体(95団体)