リーフレット:再処理工場で核物質の2重供給事態発生──問うべき日本原燃の「安全文化」
2007年4月15日
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資料作成:グリーン・アクション
事件の概要
2007年3月11日、六ヶ所再処理工場の脱硝建屋で、ウラン・プルトニウム混合粉末の入った容器(脱硝皿)に、誤って、その上にかさねて混合溶液(MOX溶液)をそそぐという2重供給事態が発生しました。通常、ウラン・プルトニウム混合粉末は容器から取り出され、からになった皿にMOX溶液が注がれなければならないのです。今回は臨界事故には至りませんでしたが、核物質の取扱い上、原燃の核物質取り扱い能力の基本が問われる事件です。
事件の経過──安全管理上の欠陥
まず「全自動」で運転されていた装置において、なんらかの理由で(この点は明らかにされていません)警報が鳴りました。しかし、その異常警報の原因が分からないまま次に、「半自動」運転に切り替えられ運転を続けたのです。そして、不注意にも作業員が運転手順書に定められた操作を誤り、さらに、テレビカメラの照明が暗かったという理由で、容器が空であることを確認できなかったといいます。別の作業員が混合溶液の誤供給に気付き、あわてて運転を止めました。
日本原燃の「安全文化」は問われるべきです
フランスのアレバNC社が2006年11月に起こした同様の事件*2は、フランス原子力安全当局(ASN)に厳しく非難され、国際原子力事象評価尺度(INESアイネス)レベル2とされ、企業の品質管理と安全文化にかかわる重大な事態と捉えられています。
日本における過去のINES評価事例
──レベル1(逸脱)
もんじゅナトリウム火災事故’95
美浜3号機蒸気噴出事故’04
──レベル2(異常事象)←今回の事態はこのレベル!
美浜2号機蒸気発生器細管破断事故’91
──レベル3(重大な異常事象)
東海再処理施設火災爆発事故’97
改善処置の履行まではアクティブ試験を中断すべき
今回の事態に関して、日本原燃は手順の見直しと設備の改善を施すと公表しています。しかし、本件は、「全自動」運転装置の不備、操作手順の逸脱、目視確認用テレビカメラの照明不足という安全管理の基本を怠り、保安規定にも違反した非常に重大な事態です。今回の事件は再処理工場の安全管理の基本を損なわした出来事であり、スケジュールを優先している原燃の安全文化そのものが問われるべき出来事です。
原燃が今、市民に対して行うべきこと
- 「安全文化」にかかわる問題が生じたことに鑑みて、アクティブ試験を直ちに中止する。
- 今回の事態を起こした管理上・システム上の根本的な欠陥を明らかにする。
- 今回の事態について、詳細な事実関係と原因を公的な場で説明する。
そして、少なくとも……
「安全文化」が欠如したままのアクティブ試験を直ちに中止するべきです。
*1:出典:日本原燃(株)発表資料(2007年3月12日/3月20日)
*2:仏アレバNC社での「異常事象」──カダラシュATPu工場(MOX燃料製造工場)の粉砕処理工程において、核物質スクラップがすでに装填されていたにも関わらず、さらに追加された。幸い臨界には至らなかった。