京都府へ要望の報告:12月5日(木)

京都府への要望と報告

2013年12月5日(木)14時〜14時50分
(参加者):児玉正人、アイリーン・スミス、大津定美、小林 舞、藤井悦子
(府の担当者):京都府 府民生活部 防災・原子力安全課
課長 粟津一雄さん、 副課長 上田哲生さん

「原子力防災計画と原発再稼働審査の安全性問題についての質問・要望書」を提出し、
1 原子力防災計画について
2 再稼働審査の安全性問題について
3 原発の地震動の過小評価について
のうち、とりわけ1の部分を重点的に要望し、府の状況について説明を受けた。

<質問> 1の(1)広域避難計画について
�京都府の南方向、西方向、それぞれへの避難計画への詳細は決まっていますか?
�避難ルート、要援護者の避難、スクリーニングの実施場所・方法等は決まっていますか?
�台風18号の被害は、福井・関西一円でも道路の寸断など大きな爪痕を残しました。避難計画は、自然災害と原発事故の複合災害を考慮したものとなっていますか?
�福井県との協議は行われていますか?


・府内(南方向)への避難に関しては、具体的な調整をしているところ。
とくに避難受け入れ先の小学校や体育館などに関して、市町と調整中だが、施設管理者側がその期間使用できないことに関する事業者の逸失利益をどのように補償するか、国に基準を問い合わせているが、「検討中」という回答しかない状態で、進められていない。いつ見解が出るかも全く分からない。方向性を出しているだけで、具体的にどこに避難するなどのマッチングができていない。
・「スクリーニング」の実施は大きな問題になっている。
  避難者をどこでスクリーニングすべきか、国に問い合わせているが国の基準が示されず、回答を待っている状況。PAZ(5キロ圏)は放射能汚染がない状態で避難するとも考えられ、その場合はスクリーニングが必要ないことになるかもしれないが、受け入れ側が実施を要求するかもしれない。どの距離で、どのような場所でスクリーニングすべきかが難しい。
  京都府としては、原発から30�圏のところで行いたいと考えており、また実施場所の候補地も検討している段階。高速道路のSAやPAも使うことを考えている。
・避難ルートとしては基本的には国道9号、27号を考えている。台風18号の場合の被害状況も当課でまとめてHPにアップしているが、これら主要な国道のみならず、2ケタ、3ケタ番号の国道や府道も使っていくことを考えている。
・西方面への避難に関しては、京都府は兵庫県の南部に12万8千人の避難者の受け入れをしてもらう予定で、神戸市・西宮市等と調整中。また予備で徳島にも受け入れを調整中。福井県は兵庫の北部へ、滋賀県は大阪府へ避難をすることになっている。
・要支援者の避難に関しては、健康福祉課と調整中だが、移動手段など困難な問題があり、介護施設間のマッチングはこれから。
・国の指示を待たずに、府独自で行うことがあるのではないか、という質問に対しては、府が独自に進めても後から国の基準が示されると手戻りが生じて、作業が煩雑になる。事故後、府が独自に20キロ圏の避難計画を打ち出した後、国から5キロ、30キロ圏が示されて煩雑な作業が必要になったという前例がある。このような事態は避けたい。
(2)安全な水の確保について
�滋賀県の水の汚染予測について、京都府の見解をお聞かせください。
�安全な水の確保について、取り組み状況をお知らせください。

(府)
滋賀県が11月18日に若狭の原発事故時の琵琶湖の汚染予測で、北湖の2割が汚染され、最大で10日間ほどは飲料水として使用できなくなるという中間報告を出したが、琵琶湖は近畿の1350万人~1450万人の飲料水の問題なので、滋賀県としても真剣に取り組んでいると思う。京都府は滋賀県が最終報告を出すのを待って、滋賀県と密に連携をとって、京都府水道局などで水の濾過などで飲料水を確保できるように対策を進める予定。

(こちらの意見)
避難計画は国の見解待ちで、現状としては具体的な部分がまったくできていない、と言うことですね?このような状況では原発事故が起きても避難はできない。もちろん原発が動いていなくても事故は起きるが、このような状況で原発を再稼動するのは大問題だということを、府民の安全のために、京都府として強く主張してほしい。
同じく、放射性ヨウ素は濾過できないので、濾過では1450万人の10日分の飲料水は確保できない。別途どのように飲料水を確保するかだが、2012年から関西広域連合で検討するとされているが、まったく進んでいないということですね。滋賀県の調査経過が報道されているし、京都府は府民に対しHPサイトなどで分かりやすく原発事故が起こった場合の府民の水を確保する状況はどうなっているのか分かりやすく説明して欲しい。
このような状況で、また若狭の原発の再稼働が行われようとしているが、事故が起きたら飲料水すら確保できない。このような状況で原発を再稼動するのはやめてほしいと、京都府として強く主張してもらいたい。

(府)
京都府としては常々そのように主張している。

(3)兵庫県のシミュレーションについて
�兵庫県が今年4月に実施したシミュレーションの京都府域の予測結果を入手し、公開してください。

(府)
兵庫県が県民のために、条件などを独自に設定してつくられたもので、京都府として関与しておらず、府としては入手するなどの検討をしていない。

(こちらの意見)
このシミュレーションでは兵庫県と京都府の境の汚染が非常に高いことが示されている。京都府としても手に入れて、京都府民のために生かしてほしい。改めて入手することを要望する。京都府が主張されるように、京都府にはSPEEDIによる汚染予測データがあるとしてもこのデータに制約があることは明らかで、兵庫から予測データを取り寄せる必要がないという理由にはならない。大阪府も入手を申し入れている。
最後に、30キロ圏内の各地に避難困難な集落がある。その一つである綾部市の奥上林地区について、綾部市は府に対し、道路の改修やバイパスの建設を要望しているがどのように対応しているのかと質問。府は、避難路が1本しかないようなところ、崖を削って道路を作るような所に原発が立地された。奥上林のほかにも、舞鶴の野原や成生のような避難困難地域があることは承知している。担当部課が対応していると回答。

このあと、2の再稼働審査の安全性問題、3の原発の地震動の過小評価について要望した。関西電力など加圧水型炉を運転する電力会社が、メルトダウン・メルトスルーへの冷却をせずに放置し、格納容器の底に水をためて溶融した炉心を落として冷却するという方針などを前提に安全性審査に臨んでいることを、非常に危険であると危惧しており、こんなやり方では府民の安全を確保できないことを府としても強く主張してほしいと要望。
府は、原発の安全性に関しては、事業者の安全確保については国がしっかり関与すべき問題で、府が関与することは難しい。
こちらは、しかし府も大飯原発の視察などもしているので、その都度しっかりと意見していってほしいと要望。
府のほうは、「皆さんとお気持ちは同じです」と回答。

以上、府議会開会中で30分だけとされていた会談が延長され、50分間の会談を終わった。