大飯原発3・4号の地震動の過小評価等に関する要望書
「活断層の3連動で760ガル」は断層モデルだけの評価
これで安全性判断するのは国の耐震設計審査指針に違反しています
おおい町長 時岡 忍 様
貴職が強調されているとおり、大飯原発3・4号の運転再開については、安全性の確認が最も優先されるべきだと私たちも考えます。とりわけ、福島原発事故以降は、安全性については最大限の注意が払われるべきです。現在、大飯原発近傍の活断層FoB−FoA−熊川断層の3連動問題が大きな焦点になっています。原子力安全・保安院は、3月28日の「地震・津波に関する意見聴取会」や、30日の福井県原子力安全専門委員会で、「3連動で760ガルは妥当」との判断を示しました。
しかし、現行の約36�であるFoB−FoA断層の2連動時の基準地震動700ガルと比べ、約63�にもなる3連動の基準地震動が760ガルで妥当という保安院の判断は、あまりにも過小評価であると、多くの人が疑念を抱いています。
そのため、私たちは4月3日に、保安院に質問書を提出しました。ご参考までに、この要望書の別紙としてつけています。
活断層の3連動評価について、保安院の判断は下記のようになっています。
「FoB〜FoA断層と熊川断層については、念のために連動を考慮した地震動評価結果(760ガル)が事業者より示されており、妥当と判断する。更に、この地震動を用いた施設の耐震安全性評価の実施が必要」。
- 「活断層の3連動で760ガル」との断定は、国の耐震設計審査指針に違反しています。
- 3連動の場合の耐震安全性評価の確認は、当然に、再稼働の前に行うべきです。
- 耐震安全性評価の基準は、ストレステストのクリフエッジ(崖っぷち、Ssの1.8倍=1260ガル)とは別の基準です。炉心溶融一歩手前を安全性の「基準」のように扱うのは極めて危険な考えです。
この判断について保安院は、断層モデルを用いた評価であると、30日に行われた福井県原子力安全専門委員会の場で説明しました。しかし、原子力安全委員会の「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(2006年9月19日、原子力安全委員会決定)では、基準地震動の策定については、応答スペクトルに基づく方法と、断層モデルを用いた手法の「双方を実施、それぞれによる基準地震動Ssを策定する」よう求めています。
それゆえ、「双方」を実施せず、断層モデルだけで760ガルと断定するのは、国の審査指針に違反しています。現行の700ガルは、双方の評価を実施した上で、応答スペクトルに基づく評価値を採用したものです。断層モデルだけで「3連動で760ガル」と断定する保安院の見解は、指針に違反し安全性をないがしろにするものです。
上記の保安院の判断では「この地震動を用いた施設の耐震安全性評価の実施が必要」と述べています。しかし、この耐震安全性評価をいつ実施するのかは明記されていません。3月30日の福井県安全専門委員会に保安院が出した資料2−2では、「耐震バックチェックにおける地震動評価の今後の予定について」という図式が示されているだけです。機器や制御棒挿入時間などの耐震安全性評価について、運転再開の後に、耐震バックチェックで評価すればいいというようなことは許されません。
その資料には「事業者による耐震安全性評価結果の確認及び耐震補強計画の策定」までしか書かれていません。補強が必要な場合に、実際に耐震補強工事を行うのではなく、「耐震補強計画」を確認するだけで運転再開を認めるようなことがあってはなりません。
3月30日の福井県原子力安全専門委員会に保安院が提出した資料2−3(または、地震・津波15−2−1添付資料)の3頁では、次のように記載されています。
「さらに、地震動評価における不確かさを考慮したケースについて評価した結果、大飯3・4号機ストレステスト1次評価で確認したクリフエッジ(基準地震動Ss−1の1.8倍)を下回る。」
しかし、ストレステストによるクリフエッジ(崖っぷち)は、炉心溶融の一歩手前の「基準」であり、そのような崩壊ギリギリの値と、耐震安全性の評価基準とは別もののはずです。700ガルの1.8倍である1260ガル以内だから安全だという評価は、極めて危険な判断です。
保安院は、3月27日の私たち市民との交渉の場で、現行の耐震安全性評価では、大飯3・4号の地震時の制御棒挿入時間について、評価基準値(許容値)2.2秒、評価値2.16秒であることを認めています。3連動の場合の制御棒挿入時間の評価については、クリフエッジと比べるのではなく、基準値2.2秒以内に収まるかどうかを評価すべきです。
現行の2連動の場合でも評価基準値(2.2秒)と評価値(2.16秒)の間の余裕はわずか2%しかありません。3連動になると、仮に760ガルを採用しても、制御棒挿入時間は評価基準値の2.2秒を超えてしまいます。その場合、大飯3・4号の運転ができないのは明らかです。
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保安院による「活断層の3連動で760ガル」との断定は、国の耐震設計審査指針に違反しています。このような判断は認められないと表明してください。
また、指針どおりに、3連動の場合の応答スペクトルに基づく地震動評価を行うよう国に求めてください。 - 3連動の場合の耐震安全性評価の確認は、当然に、再稼働判断の前に行うべきだと国に求めてください。
- 耐震安全性評価基準は、ストレステストのクリフエッジ(崖っぷち、Ssの1.8倍=1260ガル)とは別の基準です。クリフエッジという炉心溶融一歩手前を「基準」のように扱い、1260ガル以内ならば安全であるかのように判断することに反対してください。
2012年4月5日
原発設置反対小浜市民の会/プルサーマルを心配するふつうの若狭の民の会/グリーン・アクション/美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)
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