要望書:福井県知事へMOX燃料に関する情報公開

要  望  書

福井県知事 西川一誠 様

 今週にもフランスのシェルブール港出港が予定されている関西電力高浜原発向けMOX燃料の輸送は、2011年3月11日の福島第一原発事故以降、初めてのMOX燃料輸送となります。福島事故が今も続く中、事故の教訓がまだ活かされていないまま、原発を規制する新たな基準が施行されていないまま、関電が高浜原発運転再稼働の申請もしていない状況の中、更に、関電自らが認めているこの燃料を使用するかしないかまだ未定のまま、アレバ社のプレッシャーに屈して高浜原発敷地内に新たにMOX燃料を持ち込む「既成事実」を作るのは、絶対に許されないことです。

 関西電力は2009年8月19日、フランスのアレバ社で製造したMOX燃料ペレット4集合体分に不良品があることを、自主検査によって確認したと発表しました。4体分のMOX燃料ペレットは、約40万個にも相当します。このことは、多くの人々にBNFL事件を彷彿させ、「またも関電のMOX燃料で」と懸念されました。そして未だ、どのような症状で不良品だったのか、また不良品となった原因・理由はなんだったのかが一切公表されていません。
関電の当時のプレス発表では、ペレットの症状を確認するための自主検査の一つの項目で、目標値の範囲内に収まらない測定値を示すものがあったということのみが発表されています。問題となった4体分の不良品は、どのような検査項目で不適格となったのか、どのような方法で確認されたのか、そもそも検査データの詳細な記録を関電が持っているのか、判定基準についてはどのような取り決めが行われていたのか等々、全てがブラックボックスになったままです。
2009年の4集合体の不良品問題のさい、アレバ社は、「これまでの経験に基づき、当該ペレットはMOX燃料として採用が可能」だと主張ました。このアレバ社の姿勢には、アレバ社と関電との間に、品質保証に関する基本姿勢で差異があるのではないのか、すなわち、他の検査項目でもアレバ社が一元的に管理している検査データに問題がないのか、またこの状況は引き続き続いているのか、強い危惧が生じます。また日本向けの他社用MOX燃料で、2009年のこの関電向け燃料のように不良品となったようなペレットが採用されているという「経験」があるか、更にこのような燃料が今回の輸送で高浜原発に持ち込まれるのではないか、疑いが生じます。

 BNFLの場合は、ペレットの検査項目や検査方法・判定基準などは公表されました。また、BNFLでのペレット寸法に関するデータねつ造事件では、貴県の強い指導によって、関電は全てのペレット寸法データを公開しました。これは「企業機密」より、安全性が優先するという貴県の強い姿勢によって実現されたことです。それによって、1999年には、関電や国がさかんに主張した「高浜3号機用MOXペレットにはデータねつ造があったが、4号機用MOXペレットにはデータねつ造はない」という主張が虚偽であったことが明らかになりました。関電は未だこの虚偽について認めず、福井県を欺いたことに対し詫びていません。

 安全性・品質保証を最優先に考えれば、今回行われようとしているMOX燃料の品質管理の情報は全てガラス張りにし、生データを含め公開されるべきです。さらに、未だ不透明となっている4体の燃料が不良品となった理由と高浜に持ち込まれた残りの燃料12体のMOX燃料の安全性・品質保証についても、具体的に県民・市民の前に明らかにすべきです。 

 関西電力が2008年11月10日、国に提出した高浜3・4号機MOX燃料に関する輸入燃料体検査申請書の添付書類六「品質保証の計画に関する説明書」(以下、申請書)の内容には下記の重大な欠陥があります。この申請書6−3頁の「(2)メロックス社の評価」において、「メロックス社がMOX燃料製造メーカとして当社の要求事項を満たすMOX燃料集合体の製造を行う能力を有すること」の根拠の中に、「過去に実施した当社向けMOX燃料集合体の製造実績」を含めています。
 また、申請書6−2頁では、「a.原燃工の技術能力」として、「原燃工は、1999年から2001年にかけて実施したメロックス社での当社向け原燃工仕様MOX燃料集合体の製造において、ペレット以外の部品をメロックス社に供給するとともに、メロックス社を指導し、MOX燃料集合体を製造した実績を有している」と記述しています。
 つまり関電は、アレバ社と原燃工の能力認定の中に、1999年から2001年にかけてのアレバ社における関電向けMOX燃料の製造実績を含め重視しています。
 しかし、このMOX燃料は、保安院が2001年11月29日付で、「製造期間を通じてメロックス工場へ社員を派遣し、製造状況及び品質保証活動について確認を行うことが満たされていると確認できないため、申請が行われても合格とすることはできないと判断する」と通達した、まさにその燃料です。
 当時、この通達を受けて関電は2001年12月26日に、「当該MOX燃料の品質に問題はないとする当社主張が受け入れられない旨の経済産業省の回答は、原子力安全規制行政を担う官庁としての最終のご判断と受けとめました」として、「約60億円の負担が見込まれる」もののメロックス製MOX燃料の加工を中止することを決定しています。
 つまり、「品質に問題はない」とする関電の主張が認められなかったことを、関電自ら認め加工を中止しているのです。それにもかかわらず2008年11月10日の申請書には、このときのMOX燃料を製造実績に含めています。関電はBNFL事件のときに、得ていた不正情報を規制当局にも知らせないまま隠していましたが、またも事実上規制当局の判断に背く意向を示していたまま今日に至っているのです。

 日本政府がメロックス工場を直接立ち入り調査できるような契約は結ばれていません。規制当局の立ち入り調査については、 2008年の申請書の6−6頁「3.2.4 製造状況等の確認について」の項目で、「規制当局の立ち入りについては、必要に応じて規制当局が原燃工およびアレバ社に立ち入り、当社の品質保証活動の妥当性について調査を行うことができることを契約書に定めている」としています。
 2008年10月20〜23日に実施した「メロックスに対する定期監査について」の中で、「d.輸入燃料体検査制度への適合の結果確認」の項目において、「規制当局が必要に応じ、メロックスに立ち入り、当社の品質保証活動を調査することを受け入れる」ことが、「メロックスの管理文章に定められていることを確認した」としています(申請書6−56頁)。
 結局、規制当局が行うことができるのは、関電の品質保証活動の調査に限られているということで、メロックスを直接調査することは契約に含まれていません。
 つまり、BNFL事件を踏まえて改正された電気事業法施行規則に関する、保安院の2000年7月14日付通達「MOX燃料体に係る輸入燃料体検査について」等では、保安院がメロックスを直接調査できる契約が要求されましたが、未だこれが実行されていないのです。
 この2000年7月4日付通達付属の「電気事業者及び燃料加工事業者の品質保証に関する確認事項について」の「2.輸入MOX燃料に係る事項」では、「(4)製造状況等の確認について」の項で、「電気事業者は、規制当局が必要に応じ、元請け企業及びMOX燃料加工事業者に立入り、調査を行うことができる旨、元請け企業及びMOX燃料加工事業者が定めていることを確認すること」となっています。つまり、規制当局が必要に応じて加工業者(今回の場合はアレバ社)に立ち入って調査できるような契約にしておくことが要求されています。

 同様の趣旨は、関電のBNFL事件後に設置された「電気事業審議会基本政策部会」が2000年6月22日にまとめた「BNFL社製MOX燃料データ問題検討委員会報告」にも、「同時に、電気事業者の品質保証に関する取り組みをより確固たるものとするためには、規制当局である通商産業省がその活動状況を定期的に確認するとともに、必要な場合は調達先に対する監査・検査が可能となるよう、事業者間の契約に担保させることも必要と考える」(報告書22頁)と明記されています。
 すなわち、保安院が調達先(今回の場合アレバ社のメロックス工場)に対して監査・検査が可能となることを担保するよう求めています。

 このような要求は、BNFL製MOX燃料データねつ造事件で、関電がデータねつ造の事実を知っていながら保安院に報告することもしなかったという深刻な事態に対する教訓として設けられたものであり、それゆえ、規制当局が「調達先に対する」監査を行う必要を認めたものであって、「関電の品質保証活動」を調査するものではないはずです。BNFL事件を引き起こした当事者である関電が、このように事件の教訓を省みることのない姿勢でいまだいることに対し、保安院は規制当局として厳しい態度で臨む必要があります。

 さらに、製造期間を二次混合からと規定し、プルトニウムの管理を放棄しています。2000年の申請書では「製造期間」について、「製造期間(アレバ社での当社向けMOX燃料集合体のための二次混合開始から全燃料集合体の組み立て後の検査完了までの期間)」(申請書6−6頁)と規定しています。そのため、国が要求している「製造期間を通じた・・・製造状況及び品質保証活動についての確認」とは、この二次混合開始の時点からとなるわけです。
 アレバ社メロックス工場のMOX燃料製造方法は、MIMAS方式と呼ばれるもので、一次混合としてプルトニウム約30%のMOX燃料を製造し、それを元に、顧客の要求するプルトニウム富化度に応じて、二酸化ウランを加える2段階混合方式となっています。
 他方、申請書の別紙6−4の6−68頁では、「原燃工の品質保証について」の「4.4.4 MOX燃料集合体発注先の管理」、「(7)顧客の所有物」の項で、「顧客の所有物である二酸化プルトニウムについて、MOX燃料集合体の発注先における管理を確実にする」と明記されています。
 「顧客(関電)の所有物である二酸化プルトニウム」は、まず一次混合で使用されるはずです。しかし、アレバ社メロックス工場における関電や原燃工が実施する品質管理が「二次混合開始から」とすれば、どうやって、関電所有のプルトニウムを管理することができるのでしょう。また、原燃工が行うメロックス工場における関電のプルトニウムの管理をどうやって行うのでしょうか。関電は、自ら所有するプルトニウムの管理について、根本的に重要な最初の段階の管理を放棄していることになります。このような今も改善されていない欠陥のある契約に基づく申請書は到底容認されるべきではありません。

 フランスの原子力安全局(ASN)は、「日本向けの製造品質の監督には従事していない」と局長名義でグリーンピース・フランスに答えており(2010年3月31日)、フランス・アレバ社で製造されたMOX燃料の品質について責任をもっていないことを明らかにしています。今「安全」を保証しているのはどこの規制当局でもなく、品質保証データのほとんどをブラックボックスにしているアレバ社のみです。

 以上に鑑み、これではとても今回輸送されるMOX燃料の品質管理は保証されていません。

 以上の多くの内容は以前から貴職にお伝えしていることです。福島原発事故が起こった以上、改めて検討する必要があり、記載しています。

MOX燃料計画が始まってから今に至るまでの関電の姿勢は、貴職や福井県民、市民を納得させることができる内容とはとても思えません。よって以下を要望致します。

要望事項
1. 2009年に製造された関西電力のMOX燃料について、第一次工程、そして不純物の項目も含む全ての品質保証項目の生データを関西電力がアレバ社から入手し、福井県の情報公開室で閲覧できるよう関西電力に要求してください。
2. 関西電力の今までのMOX燃料に関する様々な問題に関する調査を、国に求めて下さい。
3. それまでは、MOX燃料の輸送を了承しないでください。

2013年4月16日

グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
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