大飯原発の断層(破砕帯)再調査に関する要望書
- トレンチ調査の位置について、確実にF−6を含むよう厳密に検討してください
- 断層の活動年代を特定するために、トレンチ調査の現場から直接に試料を採取し、地層の年代を特定してください
- F−6断層のみならず、周辺の断層の活動性、及び周辺の活断層との関連性を調査してください
地震・津波に関する意見聴取会 委員各位
経済産業大臣 枝野幸雄 様
原子力安全・保安院長 深野弘行 様
7月17日の「地震・津波に関する意見聴取会」(以下、「意見聴取会」)において、委員の皆さまから「再調査の必要有り」との意見が多く出され、大飯原発F-6断層(破砕帯)について、現地での再調査が決定しました。
7月18日に原子力安全・保安院は、指示文書「敷地内破砕帯の追加調査計画の策定について(指示)」を関西電力と北陸電力に出しました。関西電力宛の指示文書では、F−6断層が活断層ではないことを前提としたような「念のための」調査となっています。指示文書では「F-6破砕帯の活動性について、専門家からの意見を聴取した結果、活断層であるとの指摘はなく、活動性は無いのではないかという意見が複数ありましたが」と、委員の発言の一部だけを取り出し、活断層ではないとの予断に満ちた表現となっています。
しかし、意見聴取会では、「個人的には活断層ではないと思うが」と述べた委員も、「トレンチのスケッチ図が正確であることを前提にした話」だと前提をつけたうえで、関電の資料では「シルトが確定できない」など詳細が分からないため「活断層であることを100%否定することはできない」と述べています。さらに、「活断層であることを否定する資料はない」と明言し「再調査すべき」「活断層でないと評価したのは甘い」との厳しい意見が出されました。それにもかかわらず、保安院の指示文書は、これら委員の厳しい意見を覆い隠すような内容となっています。
さらに、牧野経産副大臣は、19日におおい町オフサイトセンターで、再調査について「活断層ではないと思うが、念には念をいれての調査だ」とまで述べています。国の審査で「活断層ではない」としてきたその判断そのものに大きな疑義が出されているにもかかわらず、反省の弁はありません。
このような保安院の指示文書などから、私たちは、大飯原発の断層調査について、しっかりとした調査が行われるのかと強い危惧を抱いています。
先日7月25日には、断層の調査の主体などに関する緊急要望書をお送りしました。今回は、調査内容について要望します。
7月31日の意見聴取会もまた、社会的注目を集めています。委員の皆さんの良識有る判断を期待します。
1.トレンチ調査位置について
「関電の追加調査計画の概要 表-1」(別紙1)では、トレンチ調査は2箇所になっています(�台場浜付近(陸域)、�1・2号炉背面山頂付近)。また、ボーリング調査は既往トレンチ調査位置付近を中心に4箇所です。断層の連続性を確認するためには、ボーリング調査ではなく、トレンチ調査が重要です。
別紙1
http://www.kepco.co.jp/pressre/2012/__icsFiles/afieldfile/2012/07/25/0725_4j_01.pdf
(1)渡辺満久教授(東洋大学・変動地形学)は関電の追加調査計画に対して、「敷地内の道路を掘削することが望ましい」と述べています。2箇所のトレンチ調査位置は、山頂付近などで、敷地内のF-6断層が走っている道路でのトレンチ調査が計画されていません。ボーリング予定位置でトレンチが可能な箇所については、トレンチ調査を実施してください。とりわけ�正門付近は、トレンチ調査を実施してください。
また、以前にもお送りしている、渡辺教授が6月27日に大飯原発敷地内を観察した報告書(6月28日付 別紙2)では、関電の調査位置�正門付近は掘削が可能となっています(別紙2のA地点)。
別紙2 http://www.jca.apc.org/mihama/ooi/watanabe_doc20120628.pdf
(2)さらに、6月28日の報告書では、1・2号と3・4号の間の道路地点も調査可能地点として指摘されています(別紙2のD地点)。この地点もトレンチ調査を実施してください。関電の計画では、この地点は含まれていません。
(3)渡辺教授は、「関電のトレンチ調査位置�(台場浜付近・陸域)は、F−6断層から外れている可能性があるため、もっと東側も掘削する必要がある」とコメントしています。これも考慮してください。
これら複数地点の調査でも、同時並行して実施すれば、時間はかかりません。
2.F−6断層の活動年代を特定するために、トレンチ調査の現場から直接に試料を採取し、地層の年代を特定してください
保安院が関西電力に出した指示文書では、「�F-6破砕帯の性状を直接確認するための調査、�F-6破砕帯の長さを確認するための調査」の2点が調査内容となっています。このうち、�の調査の目的は不明です。「ずれ」の被害を想定するとき、長さの情報にはほとんど意味がありません。また、北陸電力への指示文書では「3.破砕帯等の活動年代を特定するための資料を提示すること」が含まれています。しかし、関西電力の指示文書には「活動年代の特定」調査が欠落しています。
17日の意見聴取会では、委員から「破砕帯から時間軸を読み取ることはできない」「段丘の年代をまとめてほしい」との意見が出されました。このことからも、当然にF−6断層の活動年代を特定する調査は必要です。
大飯3・4号の設置許可申請書では、トレンチ調査を実施した斜面2箇所から段丘堆積物を採取して、14C年代測定を実施しています(採取場所はトレンチ展開図に明記)。
その結果「ガス法で約3.3万年前オーバー、アルコール法で約5.6万年前オーバーの値が得られている」と記載されています。(7月17日意見聴取会 保安院資料19-3 試料1-1 12頁
http://www.nisa.meti.go.jp/shingikai/800/26/019/19-3.pdf)。
設置許可申請当時(1986年当時)の活断層の規定は、約5万年前以降に動いたものであったため、「上載層に変位なし」として、活断層ではないと結論付けたと推測されます。
その後、新指針で活断層の規定は12万~13万年前以降に動いたものとなりました。そのため、関電は2010年頃の耐震バックチェックで、海岸部の火山灰調査結果によって、「鋸崎付近に分布する中位段丘堆積物(最終間氷期の地層)と(F−6断層上載層が)同じ」であるとして、F-6断層は活断層ではないと結論づけています。[注:最終間氷期:約13万年前から11万年前]
しかし、最も当然な方法は、トレンチ内の地層の年代を特定することによって、F-6断層がいつ頃に動いたものであるかを明らかにすることです。まわりくどく、海岸部の火山灰と比較するのではなく、直接に、今回掘削するトレンチ内の地層の年代を特定することです。
3.F-6断層のみならず、周辺の断層の活動性の有無を含め、断層と周辺の活断層との関連性の調査を実施してください。
保安院の北陸電力への指示文書では、「2.周辺の小規模な断層(福浦断層等)の活動性の有無を含め、破砕帯と周辺の断層との関連性の調査を実施すること」が含まれていますが、関電への指示文書にはこの点が欠落しています。
ご承知のように、大飯3・4号の敷地内には10の断層(破砕帯)があり、原子炉建屋の真下にある断層もあります。17日の意見聴取会では、委員から「破砕帯が多い場所を選んでいるように見える」との発言もありました。
これらのことから、F-6断層に限らず、敷地内の断層の活動性の有無と、熊川断層、海のFoA、FoBの活断層との関連性も調査してください。これら活断層が動くことで、敷地内の断層が一緒に動き、地表にズレをもたらす危険があります。
これらのことから、下記を強く要望します。
- トレンチ調査にあたっては、確実にF-6を含むよう、下記の位置も調査してください。
- F-6断層の活動年代を特定するために、トレンチ調査の現場から、直接に試料を採取し、地層の年代を特定してください。
- F-6断層のみならず、周辺の断層の活動性の有無を含め、断層と周辺の活断層との関連性の調査を実施してください。
(1)ボーリング予定位置でもトレンチ調査を実施してください。
(2)大飯原発1・2号と3・4号の間の道路位置でもトレンチ調査を実施してください。
(3)関電のトレンチ調査位置�(台場浜付近・陸域)は、F−6断層から外れている可能性があるため、もっと東側も掘削してください。
※なお、7月25日付でお送りしている「緊急要望書」に記しているように、断層調査の主体から電力会社や原子力関連企業を排除して、第三者で調査・評価を実施すること、及び、原発の運転を停止して調査を行っていただくよう、こちらも合わせて要望します。
2012年7月27日
グリーン・アクション
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美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)
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国際環境NGO FoE Japan
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福島老朽原発を考える会(フクロウの会)
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