文科省・学校利用基準見直しに関する声明
文科省・学校利用基準見直しに関する声明
校庭の新「目安」毎時1マイクロシーベルト(年間約9mSv)は高すぎる
放射線管理区域(毎時0.6マイクロシーベルト)よりも高い「目安」
学校給食の放射能測定を行い、内部被ばくを評価すべき
「学校内」に限定せずに、トータルな被ばく管理が必要
子どもたちを守るために、法定1ミリシーベルトの順守と避難・疎開の促進を
2011年 8月27日
8月26日、文部科学省は、「福島県内の学校の校舎・校庭等の線量低減について」を発出し、校庭・園庭の使用目安を1マイクロシーベルト/時とすることを福島県等に通知しました。
私たちは4月19日に、同省が校庭等の使用基準3.8マイクロシーベルト/時(年20ミリシーベルトより算出)としたとき以来、この非常に高い基準について撤回を求め、署名・交渉・要請行動などの活動を行ってきました。今回の通知によって3.8マイクロシーベルト/時(年20ミリシーベルト)は正式に廃止されることになりました。これは、あまりに遅すぎたものの、福島県内をはじめ、全国の市民の声および国際的な批判に応えざるを得なくなったためです。
しかし、新たな「目安」にも以下の大きな問題があります。
1.依然として高すぎる「目安」
放射線管理区域(注1)は、毎時0.6マイクロシーベルトです。新「目安」の毎時1マイクロシーベルトは依然としてそれをはるかに超える値です。これを「目安」とする場合、年約9ミリシーベルトにもなります。
注1)放射性管理区域では、労働法規により、18才未満の労働は禁じられている。放射能マークを掲示し、子どもを含む一般人の立ち入りは禁じられ、厳格な放射線管理が行われ、事前に訓練を受けた者だけが立ち入ることのできる区域である(電離放射線障害防止規則など)。
2.学校外の被ばくを除外
「年1ミリシーベルトを目指す」としつつも、学校外の被ばくを除外しています。
子どもたちが学校で過ごす6.5時間だけを対象にして、通学時の被ばくなどは含まれません。
3.「内部被ばく」を考慮の対象としているが、給食の放射能測定はしない
内部被ばくを考慮するとしたことは、一歩前進といえます。一方で、学校給食の放射能測定は基本的に行わず、一部の自治体による取組みに任されています。これでは内部被ばくを考慮したことにはなりません。既に、子どもたちの尿から放射能が検出され、内部被ばくに対する不安が高まっています。実際に食材の放射能測定を行わず、計算だけで内部被ばくを考慮しても、子どもたちを守ることはできません。
4.「目安」を超えても、野外活動を制限することもしない
今回の文科省の通達では、校庭で1マイクロシーベルトを超える箇所があることを認めています。それに対しては、「除染などの速やかな対策が望ましい」と一般的に語り、「仮に毎時1マイクロシーベルトを超えることがあっても、野外活動を制限する必要はありません」としてしまっています。単なる「目安」であり、子どもたちを放射能から守る実行力ある措置を伴わないものです。これでは子どもたちは守れません。
福島の子どもたちを守るためには以下が必要です。
- 法定1ミリシーベルトの順守。線量が高い地域を「選択的避難区域」(注2)に設定し、住民が自らの判断で避難できる環境をつくること
- サテライト疎開(注3)など、あらゆる知恵を動員して、抜本的な被ばく回避を行うこと
- 学校内外および実際の内部被ばくも含めた形で、子どもたちの被ばく管理を行うこと
- 内部被ばく低減を実現するために、給食の放射能測定を行うこと。食材の産地公表を行うこと
注2)住民が自らの判断に基づき避難を行うことを、正当な賠償の支払いや行政措置などにより保証していくこと
注3)学校や支所などを核とする疎開者コミュニティの形成により、福島県人として疎開地で福島人として暮らすこと
◆参考 チェルノブイリ原発の周辺国の避難基準
○移住の義務ゾーン
- セシウムによる土壌汚染:555キロベクレル/平方メートル以上
- 積算線量:年5ミリシーベルト以上
○移住の権利ゾーン
- セシウムによる土壌汚染185〜555キロベクレル/平方メートル
- 積算線量:年1〜5ミリシーベルト
※「移住の権利ゾーン」の住民は、避難するか、とどまるかを選択することができました。避難する住民には、補償、移転先の住居、医療サポートが提供されました。
子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク
福島老朽原発を考える会(フクロウの会)
国際環境NGO FoE Japan
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
グリーン・アクション
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
連絡先:
福島老朽原発を考える会 阪上武 090-8116-7155
国際環境NGO FoE Japan 満田夏花 090-6142-180
参考:「政府が学校の放射線量に新たな目安」報道は計算が合わない→追記:文科省8月26日通知書の批判(Peace Philosophy Centre)