「琵琶湖の水がみんなのいのち・さよなら原発ネットワーク」が提出した、橋下大阪府知事への要望書
関西電力の原発も巨大地震や大津波に耐えられません
津波対策はわずか2メートル
全電源喪失は、原発の安全設計を根本から覆すものです
若狭の原発で事故が起きれば、関西の水瓶である琵琶湖が汚染されます
若狭の原発の運転停止を求めてください
要 望 書
大阪府知事 橋下 徹 様
3月11日の東日本大震災による福島第一原発の事故によって、原発の「安全神話」は崩壊しました。核燃料が溶融し、圧力容器が損傷、格納容器は破壊され、大気への放射能放出が続いています。放射能汚染は、大気、土壌、水、野菜、原乳、そして海にまで広がっています。労働者や住民の被ばくは今後一層深刻になっていくでしょう。福島県内の学校の校庭も汚染され、母親達は、子ども達を守るため校庭の土壌の撤去などを開始しています。
事故から2ヶ月が過ぎても、事故の終息にはほど遠い状態が続いています。
橋下知事は、敦賀3・4号炉の増設や老朽炉である美浜1号の建て替えという将来の問題について中止の意向を述べられています。
他方、菅直人首相は5月6日に浜岡原発の全号機停止を中部電力に求め、9日に中部電力はこれを受け入れました。多くの人々が求めていたように、東海地震の震源域にある浜岡原発が停止されることは、原発震災を防ぐ上で当然のことだと思います。また経産大臣は、浜岡原発の運転停止によって生じる電力不足に対して、「関西電力からの援助も考えている」と述べています。私たちは、「関西電力からの援助」の名の下に、現在定期検査で停止中の原発の運転再開などが強行されるのではないかと危惧しています。
実際、今回の福島第一原発の事故に照らせば、浜岡原発だけでなく、若狭の原発も危険な状況にあります。
福井県の若狭にある原発で大事故が起これば、若狭地方はもとより、隣接の京都府・滋賀県等でも大きな被害が生じるでしょう。さらに、美浜原発から約30kmの琵琶湖には、事故後数時間で放射能が到達し、関西の水瓶が汚染されてしまいます。大阪府は若狭の原発から約100km圏に位置します。しかし、琵琶湖の水を命の水とする大阪府民、関西住民は、原発から30km圏内に暮らしているのと同じです。
- 関西電力の原発については、下記のように大きな問題点があります。
関西電力は、4月26日の市民との交渉で
「津波がきて設備がこわれることは我々は覚悟している」と述べました。
実際に、関西電力の原発も、巨大地震や大津波に耐えることはできません。
関西電力の原発:
地震想定は、美浜原発でM7.7、大飯・高浜原発でM7.4 (東日本大震災ではM9.0)
津波想定は、わずか2メートル (福島第一原発では約15メートル)
活断層評価では、国の地震調査研究推進本部が示している和布−干飯崎沖断層から関ヶ原断層に至る約100kmの活断層の連動によるM8クラスの評価さえ退けている。(東日本大震災では、400km以上にわたる活断層が連動) - 今回の福島第一原発の事故の発端は、地震・津波による全電源喪失でした。この全電源喪失という事実そのものが、原発の安全設計の基本を根底から覆したものです。国の「安全設計審査指針」では、全電源喪失は起こりえないこととして想定されていません。これらの事実に照らせば、既存の原発は安全設計そのものが成り立たないことを示しています。
そのため、若狭の原発も運転を停止すべきではありませんか。 - 関西電力は、全電源喪失時でも、蒸気で動くタービン動補助給水ポンプで炉心の冷却が可能だとしています。しかしこのポンプが、地震・津波時にも壊れずに動くという保証があるのでしょうか。事実、これまでもこのポンプの故障が起きています。
- 関西電力は「緊急対策」として、全電源喪失を想定して、電源車や消防ポンプ、消防ホースの設置を行っていますが、全く小手先の対策です。35メートルの高台に配置した電源車を、地震や津波で敷地内の道路が破壊された中、5時間以内に接続できるのでしょうか。これらの「緊急対策」で、現在定期検査で止まっている原発の運転を再開しても大丈夫なのでしょうか。
- 福島第一原発の事故で明らかなように、電源車用等の燃料の運搬が必要になります。例えば、四国電力は伊方原発から60km以上離れた松山市等から燃料を運ぶとしています。
関西電力の原発はすべて狭い半島に位置しており、道路は一本しかありません。その道路が地震で破壊されれば、電源車用等の燃料の運搬はできるのでしょうか。
このような想定で、関西電力の原発は設計・設置されています。これでどうやって巨大地震・津波に耐えられるといえるのでしょうか。
政府は津波想定を9.5メートルかさ上げして、防潮堤の設置・かさ上げ等を求めています。しかし防潮堤設置によって、原発の安全性が保たれる保証はあるのでしょうか。
要 望 事 項
- 関西電力の原発は、津波対策さえできていません。現在定期検査で止まっている原発の運転再開を認めず、また現在稼働している原発の運転停止を関西電力に求めてください。
- 上記の疑問に対して、関西電力から回答を得て、大阪府民や関西市民に対し納得のいく説明と討論の場を設定するよう関西電力に求めてください。
2011年5月18日
琵琶湖の水がみんなのいのち・さよなら原発ネットワーク
[構成 関西の11団体]NPO地球とともに/(株)よつ葉ホームデリバリー京滋/グリーン・アクション/コープ自然派奈良・ピュア大阪・京都/脱原発へ!関電株主行動の会/脱原発わかやま/日本熊森協会滋賀県支部/毎月26日にランチタイムに関電前に集まる女たち/美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)/若狭の原発を案じる京都府民