「大飯原発3・4号の破砕帯、活断層3連動に関する 福井県と福井県原子力安全専門委員会への質問・要望書」 への東洋大学渡辺満久教授のコメント

2012年6月1日
グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス 様
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之 様

「大飯原発3・4号の破砕帯、活断層3連動に関する
福井県と福井県原子力安全専門委員会への質問・要望書」
へのコメント

東洋大学社会学部教授 渡辺満久

お送りいただきました、上記「質問・要望書」を拝見し、重要なことが指摘されていると考えました。そこで、3・4号機設置申請書や安全委員会の資料などを自ら確認した上で、以下の2点に関してコメントいたします。また、最後に、私見も述べさせていただきます。

1.F-6破砕帯(断層)

提示された図2の「北西側壁面基底部スケッチ」を見る限り、以下の理由から、F-6が活断層である可能性を指摘いたします。まず、F-6を覆うとされている礫層が岩盤と同じだけ上下方向にずれているように見えることです。また、岩盤と礫層との境界部には、岩盤に挟み込まれている「シルト」が連続していることも、断層活動があったことを伺わせます。
なお、「南東側基底部スケッチ」においては、F-6とされている断層は礫層に覆われており、新しい時代の動きが無いようにも見えます。しかし、このF-6の走向はN18゜Eであり、地質図に示されたF-6の一般走向がN5゜W程度であることと調和していません。したがって、このスケッチでは、本当のF-6が見えていない可能性があります。
3・4号機の設置申請書を見ると、F-6などの破砕帯(断層)には「粘土」があると明記されています。古い破砕帯(断層)であれば固結していることが多いので、「粘土」があるということは、この破砕帯(断層)が最近に活動している可能性を示します。敦賀原子力発電所の敷地内にある破砕帯(断層)の活動性に関して、私はこの点を重視し安全性を問いかけてきました。本年4月に、保安院の調査により、敦賀原子力発電所内の破砕帯(断層)の一部が活断層であると報告され、私の指摘が現実のものとなりました。
以上を総合すれば、F-6破砕帯(断層)が活断層である可能性は否定できません。F-6破砕帯(断層)の海岸部への延長部では、「固結している」との記述もあります。しかし確認すべきことは、破砕帯(断層)の敷地内での活動性です。図1にも示されているように、大飯原子力発電所の敷地内には、F-6と同方向の破砕帯(断層)が複数存在しています。F-6破砕帯(断層)が活断層である可能性があるということは、他の破砕帯(断層)も同様の可能性があるということになります。周辺の大きな活断層(Fo-A断層、Fo-B断層、熊川断層)が動いた時には、これらが連動して動く可能性を否定できません。破砕帯(断層)の中には、原子炉直下に存在するものもあり、それらが動いた場合には深刻なダメージが発生することになります。大飯原子力発電所の安全性を確保するためには、ご指摘の通り、敷地内での破砕帯の活動性を確認することが非常に重要です。

2.小浜湾内の活断層

熊川断層の延長部で確認された構造(図3)は、典型的な活断層の構造であると思われます。報告書によると、ガスの存在で詳細は不明であるとの判断がされているように思われます。しかし、ガスのために、このように見事にずれた「みかけの構造」が検出されるという事例は、見たことがありません。また、たとえ、ガスの効果があるとしても、活断層であることを否定できるものではありません。図3のような構造をもつ場合、その活断層の延長が1〜2km程度と短いとは考えられません。海岸部の反射法地震探査とボーリング調査結果をもとに、熊川断層は小浜湾内には連続しないと結論されているようです。しかし、活断層の存否を確認する場合に、このような調査方法が不適切であることは、我々が常に指摘していることです。熊川断層が小浜湾内に連続しないと断定することは困難であると考えます。
Fo-20断層では後期更新世以降の活動が認められないとのことですが、音波探査断面でそのようなことを断言することは困難です。たとえば、2007年能登半島地震を引き起こした海底活断層の一部には最近の動きが無いとされていましたが、それが誤りであったことは間違いありません。とくに、横ずれを主体とする動き方をしている活断層の場合、音波探査結果に基づいて最近の活動の存否を論ずることはできません。C-45.3G測線のデータをみると、Fo-20の延長部に活断層の存在を示す構造があるように見えます。このような観点から、「Fo-20断層は活断層ではない」と結論することは間違っていると判断いたします。
以上述べたことに基づけば、Fo-A断層・Fo-B断層と陸上の熊川断層とを結ぶように、海底活断層が小浜湾の中に連続している可能性があると考えられます。したがって、ご指摘の通り、連動性に関する再検討が必要であると考えます。

3.最後に

私は、原子力の利用に反対の立場にはありません。しかし、現状においては、原子力関連施設周辺の活断層評価は明らかに間違っており、過小評価が横行していることを指摘してきました。誤った評価によって、想定される地震動の大きさが小さく見積もられるとともに、活断層のずれによる被害も無視されていることに注意を呼び掛けてきました。
大飯原子力発電所周辺の活断層に関しては、上に述べた問題が検証されずに残っていることは間違いありません。F-6破砕帯(断層)が活断層ではないことが確認され、Fo-A〜熊川断層が実際に連動することを想定しても耐震性が確保されていることが確認されたのであれば、再稼働には問題はないと思います。しかし、今の段階で再稼働を認めるのであれば、間接的な言い方ではなく、「安全性は確保されていないが、いろんな理由で再稼働させる」と明言されるべきだと思っています。

東洋大学渡辺満久教授のコメント