原子力安全・保安院への質問書 – 高浜3・4号機使用済燃料貯蔵ピットの臨界の危険性について

原子力安全・保安院への質問書
高浜3・4号機使用済燃料貯蔵ピットの臨界の危険性について
関電の評価方式は米国の規格(ANSI/ANS)に沿っていないことが判明
では、どのような判断基準に沿っているのか明らかにしてください

 
原子力安全・保安院 御中
原子力発電安全審査課 御中

2010年11月26日
グリーン・アクション
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会

  私たちは、関西電力(関電)の高浜原発3・4号機の使用済燃料ピットAエリアで臨界事故が起こるのではないかと強く懸念しています。使用済燃料ピットでは、六ヶ所再処理の行き詰まりの結果、燃料をぎゅうぎゅう詰めにするリラッキングの措置がとられ、さらにそこに高浜1・2号機の高燃焼度燃料が貯蔵されるようになったからです。しかも、3号機のAエリアだけで、満杯になれば約8炉心分の使用済燃料が貯蔵され、そのピットのある建屋は格納容器の外に位置しています。
 関電の評価結果によれば、基準値0.98に対して臨界評価値は0.977とわずか0.3%の余裕しかなくなってきています。しかも、その臨界に関する評価方式がどうなっているのかについて、強い疑問が生じてきました。
 臨界に関する評価あるいは審査の基準がどうなっているのかについて、原子力安全・保安院審査課はこれまで電話で次のように答えてきました。

  • 臨界について国に審査基準はない。
  • 関電は米国の民間規格であるANSI/ANSを参考にして評価しており、その妥当性を国としては審査の結果認めている。

 確かに、高浜3・4号機に関する原子力安全・保安院の平成22年1月付けの見解「関西電力株式会社 高浜発電所原子炉設置変更許可申請 コメント回答(その2)」の7-3頁には、「本基準は、米国ANSI/ANS-57.2の基準を参考として定められたもの」と書かれています。しかし、誰によってどのように「参考として定められた」ものなのか、私たちには不明です。
 この点について私たちは、11月18日に関電と詳細に議論しました。議論の対象は、上記「コメント回答(その2)」の7-4頁表1及び7-5頁表2についてです。その結果、次の事実が判明しました。

  1. 表1と表2の方式はANSI/ANSの評価方式とは異なります。そのことは端的には、ANSI/ANSでは基準値として、ka=1−Δku−Δkmと定めているのに、表1では基準値は1−Δkm=1−0.020=0.980ととって、臨界実験に関する不確定性Δkuを無視していることに示されています。
  2. 表1では評価値0.977の中に不確定性ε=0.020を加えたとしており、その不確定性を表2で求めています。その不確定性は、臨界実験に関する不確定性0.0156と製作に関する�〜�の不確定性を各2乗して加えルートをとるというやり方です。つまり、本来はピットのラック寸法などの入力に関する不確定性であるべき量に、別の臨界実験に関する不確定性、それも95×95の手続きによって求めた0.0156を含めています。しかし、このような方式はANSI/ANSとは異なっています。
  3. 関電も以上の1と2の点を認め、関電の評価方式はANSI/ANSに忠実な方式ではないことを認めました。
  4. その上で関電は、ANSI/ANSに従うとΔku =0.0156となり、表2の他の1〜2の不確定性は評価値に加えることになると述べました。関電が認めたとおりに従えば、1〜4の不確定性分は各2乗して加えルートをとると0.0077となるので、評価値は0.977−0.020+0.0077=0.965となります。他方、基準値は1−0.0156(不確定性)−0.020(安全余裕)=0.964となります。それゆえ不等号が逆転し、臨界が起こる可能性が生じてきます。

 これらを踏まえて、以下の質問を行います。

  1. 関電が認めたとおり、ANSI/ANSの考え方に忠実に従って、Δku=0.0156、評価値の不確定性=0.0077とすると、評価値が基準値を上回ることになりますが、この結論に何か誤りがありますか。
  2. 原子力安全・保安院の「コメント回答(その2)」の表1,表2の評価方式がANSI/ANSの考え方と異なることは明らかで、関電もそのことを認めました。それでは、表1、表2の評価方式はどのような理論(統計的理論)に基づいているのですか。その理論を具体的に詳細に示してください。
  3. その理論は、ANSI/ANSとは別の、何らかの一般的に認められた規格に基づいているのですか。もしそうなら、その規格を示してください。
  4. 「コメント回答(その2)」の7-3頁に「本基準は、・・・参考として定められた」と書かれていますが、誰によって定められたのですか。その考え方が記述された資料を示してください。

2010年11月26日
  グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
    京都市左京区田中関田町22-75-103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

  美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
    大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581