使用済MOX燃料は超長期に地元で貯蔵されプール水の漏れで環境を汚染します 玄海3号、伊方3号のMOXを直ちに炉内から取り出すよう指示してください 福島I-3号、高浜3・4号、浜岡4号へのMOX装荷を認めないでください すべてのプルサーマルの進行を凍結してください
使用済MOX燃料は超長期に地元で貯蔵されプール水の漏れで環境を汚染します 玄海3号、伊方3号のMOXを直ちに炉内から取り出すよう指示してください 福島I-3号、高浜3・4号、浜岡4号へのMOX装荷を認めないでください すべてのプルサーマルの進行を凍結してください
経済産業大臣 直嶋 正行 様
使用済MOX燃料を憂慮する全国の市民
すでにMOX燃料は玄海3号機及び伊方3号機に装荷され、およそ3年後には使用済MOX燃 料となって炉内から取り出されます。その搬出先もないままに、使用済MOX燃料をつくりだす 行為そのものが原子炉等規制法に違反していると考えます。
現状では、使用済MOX燃料は超長期にわたって地元原発サイト内の使用済燃料プールに保管 されることにならざるを得ません。ところが、先行している米国では老朽化した使用済燃料プー ルから微量の放射能汚染水が数年間も気づかれないまま漏えいし続け、その結果、放射能汚染水 が大量に環境に流出しています。私たちはこのような事態になることを強く憂慮します。
昨年5月18日に私たちは420団体で、使用済MOX燃料の行き場がないことを主な理由と して、プルサーマル計画を凍結するよう貴職に要請しました。そのとき経済産業省は、使用済M OX燃料の処理の方策の準備が整っていないことを認めながら、その後強引に計画を進め、装荷 を許可しました。このことに私たちは強く抗議します。
今回改めて、使用済MOX燃料の行き場がないこと、プールでの超長期の保管による環境汚染 について質問するとともに、プルサーマルの進行を凍結するよう要請します。回答は文書で示す とともに、直接説明の場を設けてくださるよう要請します。
質 問 事 項
1.事業者の申請内容と原子炉等規制法第23条第2項第8号について
「原子炉等規制法」(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律)では第23条第
1項で「原子炉を設置しようとする者は、次の各号に掲げる原子炉の区分に応じ、政令で定める ところにより、当該各号に定める大臣の許可を受けなければならない」とし、その第2項で「前 項の許可を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を主務大臣に提出しなければならな い」と定めています。その記載すべき事項の中に、第8号として「使用済燃料の処分の方法」が 入っています。
この点、「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」第2条第1項第5号では、「法第2 3条第2項第8号の使用済燃料の処分の方法については、その売渡し、貸付け、返還等の相手方 及びその方法又はその廃棄の方法を記載すること」と規定しています。
これらの法的規定について質問します。
- これらの規定によれば、事業者は原子炉設置許可申請書に「使用済燃料の処分の方法」に関して、処分の方法と相手方を記載しなければならないということでよろしいですか。
- 例えば、九州電力の 1970 年 5 月の玄海原子力発電所の原子炉設置許可申請書では、使用済燃料の処分の方法の項に「使用済燃料は、動力炉核燃料開発事業団に送り、再処理を行なう」と書かれていますが、この場合、処分の方法が再処理で相手方は「動力炉核燃料開発事業団」 であるということでよろしいですか。
- 関西電力と東京電力は1998年に高浜3・4号機及び福島第一3号機でプルサーマルを実施するための原子炉設置変更許可申請書を提出し、その中の「使用済燃料の処分の方法」の項で次のように記載しています。「使用済燃料は、国内の再処理事業者において再処理を行うことを原則とすることとし、再処理されるまでの間、適切に貯蔵・管理する。再処理の委 託先の確定は、燃料の炉内装荷前までに行い、政府の確認を受けることとする。ただし、燃料の炉内装荷前までに使用済燃料の貯蔵・管理について政府の確認を受けた場合、再処理の委託先については、搬出前までに政府の確認を受けることとする」。貴職はこの申請を許可しました。
この事業者の申請内容について、以下を質問します。
- 処分の方法は再処理だということでよろしいですか。
- 「再処理されるまでの間、適切に貯蔵・管理する」と書かれていますが、貯蔵・管理は原子炉等規制法第23条第2項第8号でいう「処分の方法」には該当しないということでよろしいですか。
- そのような「貯蔵・管理」がどうして「処分の方法」の項に書かれているのですか。
- 再処理の「相手方」はどこにも書かれていないということでよろしいですか。
- 「再処理の委託先については、搬出前までに政府の確認を受ける」となっていますが、これでは、搬出先が決まらない場合は結局「相手方」を記載しなくてよいことになるのではありませんか。
- 法的手続きに関するこのような判断を事業者が勝手に申請書に書くことがどうして許されるのですか。
2.原子力政策大綱等について
原子力政策大綱(2005)では、「(5)中間貯蔵及びその後の処理の方策」(p.38)において次のように書かれています(下線は引用者)。「中間貯蔵された使用済燃料及びプルサーマルに伴って発生 する軽水炉使用済MOX燃料の処理の方策は、六ヶ所再処理工場の運転実績、高速増殖炉及び再処理技術に関する研究開発の進捗状況、核不拡散を巡る国際的な動向等を踏まえて 2010 年頃から検討を開始する」。
また、原子力立国計画(2006)では基本シナリオ7)で「六ヶ所再処理工場の操業終了時頃(2045年頃)に第二再処理工場の操業を開始し、回収されるプルトニウムはFBRで再利用する」と書かれています。
- 政策大綱のいう「処理の方策」は、現在はまだ検討開始されていないということでよろし
いですか。 - 立国計画が策定された当時、六ヶ所再処理工場の操業開始及び「もんじゅ」の試運転再開
の時期は 2007 年が予定されていました。つまり検討開始までに踏まえるべき状況の観察期 間として3年間が採られていました。ところが現在、六ヶ所再処理工場はまだ試験運転終了 の目処さえ立っていません。「もんじゅ」は出力約1%で試運転再開して7月末から停止し、 2011 年春に出力40%運転に入り、2012 年秋にようやく100%運転に入る予定です。
このような3年間を経た後でないと「もんじゅ」がまともに動くという判断はできないの ではありませんか。全体的にいまから3年間は観察期間とするべきで、「処理の方策」の検 討開始はその後にするというのが大綱の趣旨に沿った妥当な判断ではありませんか。 - 「もんじゅ」か六ヶ所再処理工場のどちらかがつまずけば、第二再処理工場計画は宙に浮 き、したがって使用済MOX燃料の搬出先も見えなくなるということでよろしいですか。
3.使用済MOX燃料の超長期貯蔵の危険について
事業者の設置変更許可申請書では、使用済MOX燃料は「再処理されるまでの間、適切に貯蔵・ 管理する」と記載され、貴職はこれを許可しています。この点について下記の質問をします。
- 「再処理されるまでの間」とは、第二再処理工場が操業開始されるまでということですか。
現状では、少なくとも 2045 年以降までということでよろしいですか。その場合、原発の運転
期間を過ぎた後になってもまだ貯蔵されることがあり得るのではありませんか。 - それだけ長期にわたっての貯蔵・管理をどのように保証するかについて、事業者から何か
具体的な方策が提出されていますか。あればそれを示してください。 - 使用済燃料プール(ピット)から環境に放射能汚染水が漏れる事態を貴職は容認する立場で
すか、それともそれは防止すべきだという考えですか。 - 使用済燃料プールから環境への漏えいはどのようにして検知・判断するのですか。
- 米国のセーレム1号機の使用済燃料プールでは気づかれないままに5年間以上にわたって、
結果的に大量の放射能汚染水が環境に漏れていました。ここでは漏れ検知機構も役に立たな い状況でした。米国ではこのような漏れが大きな社会的問題になっています。
セーレム原発のような事態を防ぐ手だてがありますか。あれば具体的に示してください。 - 超長期保管の場合、老朽化によって予期せぬ危険が到来しかねません。超長期に保管する のは事実上核のゴミ扱いをしていることになりませんか。そのような長期保管自体を避ける
べきではありませんか。
要 請 事 項
危険で行き場のない使用済MOX燃料をつくらないために、
- 直ちに玄海3号機及び伊方3号機を停止させ、炉内のMOX燃料を取り出させてください。 玄海3号機の第2陣のMOX燃料の炉内装荷を認めないでください。
- 福島I-3号機、高浜3・4号機及び浜岡4号機について、MOX燃料の炉内装荷を許可し ないでください。
- 泊3号機、女川3号機、島根2号機及び志賀1号機について、プルサーマルの進行を現状で 凍結させてください。
2010年8月3日