福井県の質問書並びに要望書

関西電力の「トラブル低減に向けた取り組み計画」(1月15日付)は、
県知事が要求した「最近のトラブル増加に対する対策」にはなっていません。
関電の安全管理のずさんさを覆い隠し、下請けに責任を押しつけています。
ただプルサーマル再開のために幼稚な「対策」を編み出しただけです。


質問書並びに要望書
  • 関電の「トラブル低減に向けた取り組み計画」で、トラブルが減少すると判断されますか?
  • 関電に対し、「水平展開の突っ込み不足」など、今年度のトラブル増加とその新たな傾向に即した「低減対策」を出すよう要求してください。
福井県知事 西川一誠様
2008年1月23日
 
 関西電力は1月15日、「トラブル低減に向けた取り組み計画」(以下「取り組み計画」という)を貴職に提出し公表しました。これは、関電のプルサーマル再開を巡って、昨年貴職が県議会の答弁で4項目の対策が必要だと発言されたことに対し、そのうちの「トラブル減少対策」という1項目への回答として出されたものです。

 関電の原発では、今年度に事故やトラブルが頻発しています。美浜3号機事故以降、2006年度にはいったん減少しましたが(7件)、今年度は12月現在でも異常事象が19件にも達し、倍以上になっています。事故・トラブルはとりわけ昨年8月以降に増加しています。
貴職は、この状況を県民の安全にとって放置できないものとして、「最近のトラブル増加に対する対策」を求められたはずです。しかし関電の「取り組み計画」では、5年間のトラブルを対象とすることによって、今年度のトラブル増加の傾向が見えないようにしています。また、「異常事象」と「軽微事象」を同列に扱い、さらに、5年間156件のトラブルをすべて同レベルで扱うことによって、美浜3号機事故のような大事故さえ目立たないようにしています。

 それはともかく、貴職が最も重視されているのは今年度のトラブルのはずです。それについては、数が多いばかりか、質的に新たな重要な傾向が出ていることに目を向けるべきではないでしょうか。大飯2号機で起きた2次系配管の大幅減肉は、2004年7月の大飯1号機の大幅減肉が水平展開されていなかっとことを示しています。また、8月の美浜3号機事故後の「総点検」がいかにずさんなものであったかを改めて警告しています。ところが関電は、昨年12月の私たちとの交渉の場で、「その他部位から主要点検部位に格上げした」だけで、17年間も肉厚測定を行わず、10年間も技術基準を割り込んだ違法な運転を続けていたことに対して、反省の言葉もありませんでした。
 1月16日の福井県原子力安全専門委員会では、委員からまさに「水平展開の突っ込み不足によるトラブルはなかったのか。水平展開の立て方に問題はないのか」「大飯2号機の配管減肉は大飯1号機の配管減肉の水平展開不足ではないのか」との厳しい意見が出されました。実際、関電の「要因分析」には、現実に起こっている「水平展開不足」、関電の安全管理の問題点を具体的に指摘するような「要因分析」は一切存在しません。
 さらに、美浜2号機、高浜2号機では相次いで蒸気発生器入口管台でのひび割れが見つかっています。これは材料であるインコネル600の脆弱性を示すものでありながら、未だ詳細な調査結果は出ていません。以前にも関電の原発では、インコネル600製の上蓋管台などでもひび割れが見つかっていました。関電のひび割れ発生予測時間よりも早い時期にひび割れが発生しています。そのような経験があるにもかかわらず、蒸気発生器入口管台では、ひび割れの発生予測さえ行っていませんでした。他の原発に対する対策としては、次回定検まで「漏えい監視」を行うというだけです。これは漏えいを認める危険な運転姿勢であり、「維持基準」にも反するものです。この「管理方法」は、定検制度の改悪の先取りであり、「事後保全」的な対策であると言わざるを得ません。

 関電はトラブル多発の原因を、下請け会社作業員の「し忘れ・し間違い」に負わせています。その対策として、関電社員が「作業計画書の読み合わせに参加する」というものです。これが原因や対策と言えるでしょうか。ただ、自らの安全管理のずさんさの責任を下請け会社に押しつけ、余りにも幼稚な「対策」を言葉として並べているだけです。

 以上のように、関電の「取り組み計画」は、貴職が県民の安全の観点から最も問題にされている最近のトラブル増加に対する「低減対策」にはなっていません。 福井県として是非、原子力安全専門委員会での議論も踏まえ、「水平展開の不十分」など、今年度のトラブルの量と新たな傾向に焦点を当てて、関電の安全管理のずさんさを問題にしてください。関電に対し「トラブル低減対策」の根本的な変更、出し直しを要求してください。このままでは新たな重大な事故が発生し、県民や周辺住民に被害が及ぶ事態も避けられません。
 貴職の4項目の中には、「耐震安全性の確保」も含まれています。関電は3月に耐震安全性の見直しに関する「中間報告」を出す予定になっています。柏崎刈羽原発の被害状況、活断層等に関する調査はまだこれからです。それらの調査結果を踏まえて検討してください。
 プルサーマル再開を急ぐ関電のスケジュールに合わせるのではなく、貴職が要求された4項目について、じっくり検討されるよう要望いたします。



質問事項
  1. 関電の「取り組み計画」は、トラブルの対象期間を5年間に広げており、今年度のトラブル増加に焦点が当たっていません。貴職が要求された「最近のトラブル増加に対する対策」になっていると判断されますか。

  2. 関電の「取り組み計画」は、1月16日の福井県原子力安全専門委員会で委員から指摘されたように「水平展開の突っ込み不足」などがあり、問題点が検討されていません。実際、大飯2号機での2次系配管減肉は、大飯1号機の減肉の「水平展開」がなされなかったことによるものです。また、美浜2号機などでは、蒸気発生器入口管台でのひび割れという新たな損傷も見つかっています。このような重要問題に触れてもいない関電の「取り組み計画」でトラブルが減少すると判断されますか。

要望事項

  1. 関電の「取り組み計画」は、貴職が要求された「最近のトラブル増加に対する対策」にはなっていません。そのため、今年度のトラブル増加とその新たな傾向などの原因と「低減対策」を出し直すよう関電に要求してください。

  2. 貴職の4項目のうち、「耐震安全性の確保」については、少なくとも関電が3月に出す予定の「中間報告」をじっくり検討してください。

以上の質問事項と要望事項に対して、関西電力がプルサーマル再開を表明する前に、文書でご回答くださるようお願いいたします。

2008年1月23日


グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
京都市左京区田中関田町22-75-103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
大阪市北区西天満4-3-3星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581