関西電力宛「水漏れ発見から約2ヶ月が経過した美浜1号機の格納容器コンクリート壁の劣化について、および、美浜3号機の蒸気発生器で見つかった異物等に関する質問書」の電話回答

2007年6月20日
関西電力株式会社社長 森 詳介 様

美浜1号機原子炉格納容器コンクリート内壁等からの水漏れ

美浜1号機原子炉格納容器コンクリート面からの水漏れは、3月22日に発見されてから約2ヶ月が経ちます。しかし、未だ調査中となっています。そのため、4月17日に貴社がホームページで公表している内容に関して以下の質問をします。

なお、下記のA部〜E部は、貴社の調査結果「にじみ発見箇所および目視点検結果」に記載されている各部(○A部〜○E部)と同じです。

  1. Bループ室内壁からのにじみ箇所A部は、調査の結果、「放射能とほう酸が確認された」こと、およびキャビティの水抜きにより「にじみ」がなくなったことから、キャビティ水と推定しています。A〜E部の「ほう酸析出」部に含まれている放射能核種は何ですか。単位質量当たりの放射能はどの程度ですか。
    答:約9ベクレル/cc  核種はアンチモン、セシウム137が測定されている。Aの溜まり水を測っている。

  2. 現在、ライニング溶接部の貫通傷の有無を調査中となっていますが、進捗状況を示してください。全溶接線の何割が調査済みか等、具体的に示してください。
    さらに、溶接部以外の箇所を調査する予定ですか。調査している場合は、調査内容等を示してください。調査予定のない場合はその理由を示して下さい。
    答:・当初予定していた防水シートに覆われていない部分は4月26日に調査は終了。
    ・5月21日段階で、全溶接線を調査中。この時点では4カ所以外の漏れはない。
    ・オーニング部を除いた溶接線全てについて真空発泡試験を実施し、貫通傷の有無の調査を実施している。調査は終了して、4箇所以外には亀裂はない。調べた溶接線の長さははっきり分からない。プレス発表の2枚目の図に、ライニング線が示してある。コーナー部は調査している。キャビティの上の方は放射能が着くので養生シートをたらしている(半分より下くらいまで)。

  3. ライニングを取り除いて、その下にあるコンクリート面での水漏れ侵入箇所の亀裂を調査する予定ですか。調査している場合は、調査内容等を示してください。調査予定のない場合は、その理由を示してください。

    答:・コーナーアングル部の溶接部を切り出している。そこで露出したコンクリートの表面を点検して中性化していないことを確認している。
    ・ライニングを取り除いたコンクリートの表面を検査した。コンクリートの表面のPHを確認して中性化していないことを確認している。ここは、表面に水をたらしてリトマス試験紙を入れてphを確認している。
    ・にじみ出した析出物の成分を分析して鉄分はなかったことも確認している。
    ・これとは別に、3箇所A(最初に漏えいが確認された壁)、C(天井)、E(壁)のコンクリート部は、コンクリートを深さ10�くらいはつって(鉄筋が見える)、鉄筋を目視して、錆がないことを確認している。検出物の成分からも鉄分はない。

  4. キャビティ底からA〜Eの各部に至る水漏れの経路にあたる壁及び床のコンクリートの厚さはそれぞれ何センチですか。各部について示して下さい。

    Aの壁(原子炉との間の壁の厚さ) 2.65メートル
    Bの天井(天井と上の階の床の厚さ) 1.8メートル
    Cの天井(同上)          1.8メートル
    D                 確認する。
    E                 未確認なので確認する。
    (参考までにDの部屋の天井の厚さは0.5メートル。Eの天井の厚さは1.8メートルくらい。参考までに キャビティとSGの間は0.95メートル)

  5. [1]キャビティとA部とのコンクリート壁の厚さは1メートル以上であり、またD部ではキャビティ底から数メートル以上も離れた箇所で水漏れが認められています。このことは、水漏れの経路にあたるコンクリート内部に多数の亀裂(少なくともヘアークラック)が発生していることを示しているのではないのですか。

    答:一般論として、建設後の乾燥収縮によるひび割れは発生していると考えている。一般論だが、この部分についてもそう考える。(コンクリートは乾燥によって小さくなる)
    [2]また、水漏れは、分厚いコンクリートが酸性のキャビティ水で湿潤状況になっていることも示しています。酸性の水により内部の鉄筋が発錆して劣化したり、コンクリートそのものも劣化が早まっていると考えられます。鉄筋やコンクリートの健全性をどのようにして確認するのですか。

    答:5箇所の内、3箇所(A、C、E)をコンクリートを削って目視点検したり、中性化の状況を把握(フェノールフタレイン法。PHの程度が色で異なる)した。 鉄筋は目視、析出物に鉄分が出ていないことで健全性を確認している。
    (これは、コンクリートを約10�削って点検したもの。10�で鉄筋が出てくるため)

  6. 遠く離れた内壁で水漏れが確認されていることから、原子炉格納容器のコンクリート壁を伝って下部から外部へ漏えいしている可能性について、付近の地下水等の調査で確認していますか。

    答:地下水等の調査の予定はない。美浜1の格納容器は鋼鉄製。耐圧漏えい検査で気密性は確認されている。

  7. 現在行っているライニング溶接部の調査で、作業員の被ばく推定量はどれぐらいですか。また、再溶接など補修工事に関する推定被ばく量はどれくらいですか。

    答:・作業が終了し、集計ができてから答える。
    ・通常の定検でキャピィティ水を抜いた後、水をかけてキャビティ内を清掃する。その場合は、防水用の服を着て全面・半面マスクを着ける。

  8. 環境への放射能放出を防ぐ最後の「壁」である格納容器の鉄筋コンクリートは、高温と放射線によって一般のコンクリートよりも早く劣化するのに加え、水漏れによっても劣化が促進されています。その上、水漏れの補修工事で作業員に多大な被ばくを強いることになります。美浜1号機は、これ以上動かさず、閉鎖するべきではないですか。
    答 美浜1号の運転を停止する計画はない。
  9. 他の原発でもキャビティ水の水漏れとコンクリートの健全性を調査すべきではないですか。
    答:定検に入るプラントについては、キャビティ水張り時に、キャビティ周りの壁面・天井を目視点検することにしている。

◆質問事項にはないが、6月14のプレスリリースをもとに、6月20日の電話回答時に確認したこと。
ライナーの亀裂4箇所(アイウエ)とコンクリートの浸みだし部5箇所(ABCDE)の相関関係について(関電プレス6/14を元に)

  • ・Aの部分はイエウと近い。そういう感じ。
  • ・BCDはライナーの亀裂部分から離れている。それで析出跡くらいしか残っていないと。
  • ・Eもイのあたりかな。ライナーの貫通割れに近いという意味。AとEはイに近い。
  • ・ライナーの亀裂とコンクリート部の浸みだし部分との相関関係ははっきりしていない。だいたいのイメージは得れるかなと。
  • ・2箇所(B、D)については、今回のライナー4箇所の亀裂部分から漏れたものではないと考えている。多分、過去にホウ酸を析出する事象が発生したのだろう。オーニング工事をする前に。オーニングする前のライナーに貫通部があったから検出物が出たのではないか。亀裂があったかどうかは分からないが検出物があるから。
  • ・元のライナーのどの部分に亀裂があったかは、オーニングで覆ってしまっているので分からない。しかし、今はオーニングで覆っているので漏れはない。Dはキャビティから離れている場所。
  • ・Dは、プレス2枚目の図のキャビティ先端の細くなっている箇所にある小さな□の一番左の部分から横に数メートルかいったところで、さらに深さは、この部分から約5メートルくらい下にある。
  • ・今回ライナーの亀裂のあった箇所から漏れたものではないと考えている。→どこから来たかは分からないということですね。そうです。今回亀裂・発泡が確認されていない所というとオーニング部になる。オーニング部は二重にライナーを貼っているのだから今回検査していないので。下のライナーがどうなっているかは検査していないので分からない。

美浜3号機関係

1.2次系配管のPWR管理指針について

(1)PWR管理指針は制定直後の1990年11月6日から保安規定に盛り込まれていたということですか。

答:そうです。平成2年に管理指針が策定された。その後社内ルールに取り込んだ。これが保安規定へのひも付けというもの。保安規定の中に管理指針は書かれていないが、このルールに取り込んでひも付けしたことにより、保安規定に盛り込まれたことになる。

(2)2004年8月に起こった美浜3号機の事故まで14年間、美浜3号機の破断箇所はずっと保安規定違反の状態だったということですか。

答:・当該箇所は点検範囲から漏れていたことは事実である。
・保安院からは保安規定違反とは指摘されていない。
・点検箇所抜けなどの事象を認知し、適切な対応をとらない場合は品質保証の観点から保安規定違反に相当するものと考えている。今回は、事故発生後まで、点検リストから漏れていたことを認知しておらず、結果として適切な対応をとることができなかったものである。

2.蒸気発生器で見つかった異物について

4月25日には、C−蒸気発生器の2次側管板上面で円柱状の異物が見つかり、続いて4月27日にはA−蒸気発生器の2次側管支持板(第3管支持板)上で線状の異物が見つかっています。
5月9日関電プレス

(1)C−蒸気発生器の2次側管板上面で見つかった異物について

[1]
異物は配管等の加工作業で発生する金属削り屑の可能性があるとのことですが、いつ、どこからやって来たものですか。

答:前回定検(21回)で配管取替工事を実施した際に、配管溶接前のかい先加工中に発生した配管の切りくずが、配管加工部から運転中に流されてSG管板上まで流されてきたものと推定される。

[2]
前回定検(第21回)では、起動前に管板上面および管支持板のカメラによる確認、金属錆を除去する作業をおこなったのですか。

答:昨年10月9日〜10月19日にA・B・CのSGの管板部の2次側について、全ての伝熱管と管の間にカメラを入れて確認している。異物はないことを確認している。

[3]
今年の1月10日の運転再開以降4月まで、2次系に異物が混入した状態で運転を続けていたということですか。

答:いつというのは分からないので、運転中に流されてきたということ。結局は、運転中は異物は入った状態で何日間かは分からないが。

[4]
「蒸気発生器の2次側に持ち込まれた金属錆が管板上面に堆積するため、それを取り除く作業を定期検査毎に実施している」とのことですが、毎回カメラによる確認はおこなっているのですか。また、「金属錆を取り除く作業」とはどのようなものですか。

答:・カメラによる確認は毎回行っている。
・除去作業はほぼ毎定検でやっている。スラッジを水で洗い出す。除去作業を行った日付は確認していないが。

(2)A−蒸気発生器の2次側管支持板で見つかった異物について

[1]
線状の異物とは何だったのですか。また、いつ、どこからやって来たものですか。

答:給水系統の配管から発生した酸化鉄がSG伝熱管表面に付着し、これが線状にはがれたものと推定している。

[2]
「A−蒸気発生器の伝熱管全数は、既にECTを実施し、異常は認められませんでした」とのことですが、いつECTを実施したのですか。

答:ECT実施は4月13〜21日

[3]
「3台の蒸気発生器全ての2次側管板上面の点検を実施し、新たな異物等がないことを確認しました」とのことですが、全ての管支持板も検査するべきではありませんか。

答:・支持板上部でも実施可能な範囲の目視点検(カメラで)を実施している。問題ないことを確認している。目視点検は終わった。
・実施可能な範囲とは?→カメラで見えないところもある。実施可能な範囲とは支持板のフロースロット部を確認している。それ以外は伝熱管の内側をECTで確認。
・フロースロット部がどこかは確認する。

4月10日の交渉での積み残し(3月30日付不正報告書の内容について)

1.計器関係のデータ改ざんの調査について

(1)計器関係のデータ改ざんの調査期間を「現時点」としたのは、2006年8月31日の保安院指示によるものだったとのことですが、その指示文書を示してください。

答:平成18年(2006)7月6日に保安院が東電宛に指示文書を出した。これを受けて全事業者がスケジュールを保安院に提出し自主的に点検を始めたところから始まる。関電が保安院に提出した書類の日付は今は分からないが。
・その場合、定期検査に合わせて計器関係のデータ改ざんの調査を行うこととし、今年12月までに確認することになった。
・東電は8月31日に中間報告を保安院に出した。これについて同日保安院が文書を出している。

(2)2006年11月30日の保安院指示も、調査期間は「現時点」という趣旨だったのですか。

答:点検などの具体的な範囲・方法については、昨年11月30日の保安院からの総点検指示文書を受けて、当社が検討し作成したもの。保安院から調査期間を「現時点」という指示があったのではない。

(3)不正報告書は計器関係のデータ改ざんについて、「定期検査にあわせて点検を実施する」としていますが、1月10日まで定期検査を行っていた美浜3号機については調査されていません。なぜ調査を行わなかったのですか。

答:・美浜3号は現在の第22回定検で検査が終了する予定。
・昨年7月6の指示だったので既に使用状況に入っている機器もあり、終了していない。
・既に完了していた定期事業者検査において使用される計器(検査される計器)については、次回の第22回定検で実施すると計画していた。

2.引き継ぎメモで引き継ぎがあったとされる不適切事象について

(1)2つの不適切事象(大飯3号機のキャビティ水移送のデータ改ざんと大飯2号機の充てんポンプ出口弁漏えい)については、引き継ぎメモで制御員同士の引き継ぎメモがあったため保安規定違反にはあたらないとの回答でした。この引き継ぎメモに何が書かれていたのですか。内容を明らかにしてください。

答:・大飯3は、水の移送実績や水移送の監視状況が記載されていた。数値が書かれていた。
・大飯2は、充てんポンプから充てん高圧ポンプへ切替運転していたことを記載。
・「作業員同士の引継ぎメモ」とは、「日誌」として保存期間まで残しておくもの。

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