3月5日付け日本原燃宛申入書に対する回答
再処理止めよう全国ネットワーク殿
日本原燃株式会社
広報渉外室
質問状への回答について
3月8日に受領しました質問に対し次のとおり回答致します。なお、質問の中で3月19日までに回答を頂きたい旨の要請がありましたが、ご質問にお答えするためにはある程度の時間が必要です。8日の申入れの際、口頭でその旨をお伝えし、貴殿の設定された19日には電話でご希望に添えないことをお伝えしておりますことを申し添えます。
- Q1.
- 使用済み燃料プールで291カ所もの不正溶接が起こった原因は結局のところだったのか、この点を誰にも分かるように端的に文書で説明してください。
- (回答)
- 点検の結果確認されたPWRプール漏えい箇所に確認されたものと同様の継ぎ足し溶接、燃料送出しピット漏えい箇所や燃料移送ピットA漏えい箇所に確認された切り欠き・肉盛り溶接等、計291箇所の不適切な溶接施工が行われていたことについて、当社が使用済燃料受入れ・貯蔵施設(以下、F施設という)建設当時に発見・是正し、あるいは未然に防止することができなかったことについて、根本原因分析を含む品質保証体制点検を行った結果、F施設建設当時においては以下に示す主な原因が考えられました。
(1) 施工会社においては、プールの構造や施工法が従来と異なることによる現場施工の難しさ等に関する事前検討が不足したこと、また、ライニングプレートを工場で切断・加工するための図面寸法に、現場寸法を反映する手順等をルール化する仕組みが無く、施工の手順等の指示が不明確なままであった。現地プロジェクトマネージャーに権限を集中させていたが、チェックがなされないまま元請会社2社から多量の工事を請負ったことや、施工経験の少ない新規会社を採用したことなどが、ライニング寸法不足による開先寸法不良や漏えい検知溝接続加工漏れ等の施工ミスを多発させた。また、不適合が発生した場合の措置について決めている管理要領(品質保証計画書等)を守るという意識が、教育の不足から徹底していなかった。そのため、開先寸法不良や漏えい検知溝接続加工忘れのような品質管理上の不適合を発見した際、本来は、施工会社の現地作業所長(またはプロジェクトマネージャー)が元請会社に相談し、当該ライニングプレートを再製作する等により処置すべきであったが、所定の手続きをとった場合、「工程に影響を与える」と考えて、不適切な施工を行った。
(2) 施工会社を管理すべき元請会社は、従来の経験との相違について事前検討が不足したため、不適合の発生を未然に防止するための品質管理上の要領が十分でなく、元請会社は施工会社に対し、不適合発生未然防止についての要領、たとえば、ライニングプレートを工場で切断・加工するために現場寸法を図面寸法に反映すること、またコンクリート打設前に設定する先張りライニングプレートの裏側に隠れる漏えい検知溝の接続加工時期を施工要領書に明記すること等、具体的な指示をしていなかった。現場工事においては、工事量に見合った管理体制が不十分であり、また問題のある溶接施工を発見できる検査を行っていなかった。
(3) 当社は、品質重要度分類について、原子力安全の観点で分類を行い、F施設プール等ライニング溶接施工管理は元請会社の自主管理とし、補修の困難さを深掘りして考えず、軽水炉実績から検査合理化検討において不適切な溶接施工の可能性を考慮しなかった。
設計・施工方法の事前検討について、元請会社に施工計画をレビューし、要領書に落とし込むことを要求せず、また軽水炉のプールとの構造的違いの認識が不足し、特別な審査を行わなかった。
調達要求事項については、当社が施工会社を承認する際、経営状態に係る情報をもとに評価すべきであったが、ルールが不明確であった。また、契約上、当社が施工会社を監査する権利を留保することを定めておらず、施工会社の現場プロジェクトマネージャーの品質保証活動の指揮命令権限について把握していなかった。
現場工事管理については、不適切な溶接施工を発見する検査と判定基準を定めていなかった。また、元請会社へ業務内容、工事物量に応じた現場指導員の配置や、不適切な溶接施工を発見できる検査を要求していなかった。
管理プロセスについては、不適合の確実な管理の点でルールが十分でなかった。これらについては平成16年1月23日 再処理施設総点検に関する検討会(以下、「検討会」という)配布資料 資料7-2-3 「使用済燃料受入れ・貯蔵施設 プール水漏えいに係る不適切な溶接施工の根本原因分析(RCA)について」において、根本原因分析結果の詳細を示しております。
また、平成16年3月17日に国に提出いたしました「再処理施設 品質保証体制点検結果報告書(改訂)」において、品質保証体制の自己評価と改善策を示しております。
- Q2−1.
- 品質保証体制点検結果報告書において、5つの品質保証体制における反省点を挙げている。(1)化学安全の観点及び不具合発生時の影響(補修の困難さ)を考慮した品質保証上の配慮が十分でなかった。(2)施工段階の品質保証の重要性に対する認識が十分でなかった。(3)F施設施工時の人員配置に適切さを欠いていた。(4)協力会社と適切なコミュニケーションを行える体制でなかった。(5)(1)から(4)の事項に対して、トップマネジメントの関与が不足していた。これらの反省点はF施設にとどまらず、再処理工場本体をつくったときの貴社の品質保証体制全体に根本的な欠陥があったことを示しています。それゆえ、工場はつくり直す以外に安全性は保証されないのではないかと私たちは懸念します。これだけ重要な反省点をもつほどに欠陥のある品質保証体制のもとで建設された工場について、その安全性が保証されているとどうして言えるのですか。
- Q2−3.
- 原子力安全・保安院は、検討会資料9−4の20頁において、「『事業者の信頼性』の基礎となる品質保証体制については、今次点検の結果、幾多の本質的な課題が浮き彫りになった」と述べています。そうすると、品質保証体制に本質的な課題を抱えていて信頼性に欠ける貴社の行う点検によって建物の健全性が確認されているとどうして言えるのですか。
- (回答)
- 品質保証体制点検は、プール等で発見された不適切な溶接や硝酸漏えいなどの不具合に端を発しており、そもそも「当社の品質保証体制に問題があるのでは?」という前提でスタートしました。このため、点検が当社の独り善がりにならないよう、社外専門家で構成される「品質保証プロセス評価顧問会」を設置して専門的・中立的立場からアドバイスを得ることとし、また、点検実施組織から独立した監査組織「品質保証システム検証WG」を設置して監査業務を行い、さらに第三者審査機関の監査を受けるなど、点検の計画、実施及び結果に関して透明性・客観性を担保できるよう点検体制を工夫いたしました。
このような体制で臨んだ点検の結果、設備及び建物の健全性が確認されておりますので、ご指摘のような心配はないと考えます。また、点検は、過去の不具合はもちろん、設備の製造過程で想定される不具合も洗い出すことができる判断基準を設定し、実施しましたので、技術的な妥当性も十分にあるものと考えております。
すでに当社の点検に関しては原子力安全・保安院から点検実施要領書等の確認をいただくとともに、六ヶ所再処理施設総点検に関する検討会の方々にも点検現場を視察の上で審議いただくとともに、当社が3/17に提出しました報告書(改訂)について評価いただいているところです
- Q2−2.
- 例えば、「化学的な安全性など原子力安全以外に対する品質保証の考慮が十分でなかった」との反省点は、検討会委員からも指摘されたように、再処理工場の本質が化学的過程にあるという認識が貴社に欠如していたことを示しています。これでは、再処理工場に、隠された本質的な欠陥が存在するという可能性を否定できないのではないでしょうか。
- (回答)
- 六ヶ所再処理施設では、硝酸等の化学物質は再処理工程の中で放射性物質と共存するため、化学安全の多くの部分を原子力安全の一部としてとらえ、腐食対策、火災・爆発対策等に対して十分な措置を講じてきております。
本件につきましては、第8回検討会資料 資料8-5「六ヶ所再処理施設における化学安全に対する考慮」にて詳細にご説明しております。今回の点検では、化学薬品を扱う設備は全て対象に含まれており、点検の結果、健全であることが確認されております。
- Q2−4.
- 貴社は点検によって「設備及び建物の健全性」は確認されたというかも知れませんが、書類点検等でそれほど簡単に健全性が確認できるものなのでしょうか。品質保証体制に本質的な欠陥があったのに、どうして書類は信頼できるのですか。また、PWR燃料貯蔵プールの水漏れ箇所を突き止めるだけのことに1年4ヶ月(01年7月〜02年11月)、291箇所の不適切溶接が確認されるまでにさらに9ヶ月(〜03年8月)を要したのに、より複雑な本体箇所の欠陥の有無までがなぜそんなに簡単に短期間で確認できたのですか。
- (回答)
- まず初めに、「書類が信頼できるか」ということについてお答えいたします。書類点検で確認する書類については、代表設備を選定して現品点検を行い、書類と現品に相違がないことが確認できており、信頼性・信憑性はあるものと判断しています。また、元請会社及び施工会社約400社の工事責任者等約1,000名に対して書類の作成に関するアンケート調査を行いましたが、その結果から書類の信頼性・信憑性が疑われるような回答は得られませんでした。
次に「なぜプールの点検で時間がかかったか」についてお答えします。当社は、PWR燃料貯蔵プールの漏えい箇所を特定するために、より確実な方法としてプールの水位を低下させることとしました。水位低下作業に先立ち、PWR燃料貯蔵プール内の使用済燃料を移動する必要があったこと、また、水位低下に際してプール水を処理する能力に限界があったことから、漏えい箇所の特定に9ヶ月(平成14年2月〜10月)を要したものです。また、その後の不適切な溶接箇所の点検では、水中かつ放射線環境下という作業性の悪い条件であったこと、また点検の過程で送出しピットからの漏えいなどの事象が確認されたため、その原因調査を行い、原因に応じた検査方法を適用して点検したことなどが、7ヶ月(平成15年1月〜8月)を要した要因と考えております。この点で、今回の品質保証体制点検は、対象設備の大部分を占める再処理施設本体について、試験運転中のため設備へのアクセスが容易であった、また放射線環境でなかったなど、作業環境が良好であったことが、再処理施設27万基の設備を5ヶ月(平成15年9月〜平成16年2月)で点検できた理由の一つと考えております。
- Q3.
- 貴社は、ウラン試験を今年4月に開始すると表明しています。ところが、いまだに、不正溶接の原因等について青森県民にも、国民にも納得のいくような説明をしていません。しかも、プルサーマルが実施できる見込みはいまだにたっていないのに、なぜそのように急いでウラン試験を進めなければならないのか、この点の説明もなされていません。まだ海外に置かれているプルトニウムを使う目途さえたっていないのが実情なのです。それほどに急ぐ本当の理由は、原発の使用済み燃料プールが逼迫した状況になっているからではないのですか。もしそうなら、それは現在のスケジュール優先ともいうべき態度です。そのような安易な行為に走ることなく、安全性についてじっくりと検討すべきではありませんか。
- (回答)
- 当社は、本年3月17日に品質保証体制の点検についての結果報告書の改訂版を国に提出しました。これらのことについてはプレス発表を行うとともに当社のホームページで公表しております。現在、本件につきましては六ヶ所村の村民はもとより、様々な機会を通じて、県内諸団体の皆様に説明しているところです。
また、品質保証体制点検結果については、国の検討会において評価の審議が行われているところです。当社としては、今後も、様々な機会を通じて、地域の皆様にご説明してまいりますので、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
なお、3月20日、関西電力高浜原子力発電所が福井県よりプルサーマル発電の実施に関する正式な了解を頂き、2007年の実施に向けて動き出したと聞いております。当社といたしましては、原子力開発利用基本計画の精神に基づく形でプルサーマルが着実に実施されると考えております。当社は、これからも地域の皆様の声に耳を傾けつつ、安全性を第一にサイクル事業を進めることで、国民生活を支えるために必要なエネルギーの安定的確保に寄与してまいりたいと考えています。
- Q4.
- 私たちは2月4日に貴社に対し公開質問書を提出しました。1週間以内での回答を求めましたが、貴社からの回答が寄せられたのは約1ヶ月経過した後でした。私たちは「工事期間が厳しいとは言えない」という貴社の結論の裏付けとなる事実についてたずねたのです。ところが貴社の回答は抽象的で、具体的な事実に触れるのを避けています。私たちはQ1で「作業工数を計算した際の作業者の人数を明らかにすること」、またQ4で「各設備ごとに」実際の工事期間を記述するよう求めているのに、それらには答えていません。私たちは、国の公表検査資料に基づいて作成した添付資料も提示して、F施設における後張りライニング期間「約7ヶ月」の実態を問題にしているのです。その添付資料によれば、実質的な工事期間は約3ヶ月であったと読みとれます。この判断が間違いだというのであれば、各施設ごとの具体的な工程表を提示して、そのことを説明してください。
- (回答)
- ・ 作業工数(F施設プール:約6100人日,BWR発電所プール:約380人日)は,後張りライニング工事を行った作業員(溶接士,製缶員)が従事した実績日数の積算結果です。F施設プールの後張りライニング工事に携わった施工会社(協力会社含む)の作業員は約80名(※1)おり,溶接作業を行う溶接士及びライニングプレートの設定作業,溶接作業後の仕上げ作業等を行う製缶員に区分されます。 その内訳は,溶接士が13名,残りが製缶員となります。なお,F施設プールの約7ヶ月の後張りライニング工事期間中においては,1日当りに平均すると約35名(※2)の作業員が従事しておりました。また,作業工数を比較したBWR発電所での溶接士及び製缶員の数は,それぞれ5名及び12名と聞いています。
・ F施設各設備の後張りライニング工事期間は,添付資料(※3)に示すとおりであり,平成7年8月下旬から平成8年3月中旬までの約7ヶ月の中で工事を行っています。
※1:F施設プールの後張りライニング工事に携わった施工会社(協力会社含む)の作業員は約80名という数字は、一人一人の作業員を積み上げた数字であり毎日約80名全員が工事していたわけではありません。例えば1日に10名の作業員が210日作業すると合計2100人日ということになります。
※2:後段の「1日当りに平均すると約35名」という数字は、1ヶ月の作業日数を25日で換算し、7ヶ月分を掛け合わせ、その数字をF施設の作業工数である6100人日から割り込んだ数字です。日々の作業員の人数は作業内容に応じて変化します。
※3:前回、F施設の全体工程の表をお出しして同施設の工事が7ヶ月であることをお示し、工程に間違いのないことについて十分ご理解いただけると判断いたしましたが、今回、貴殿の強いご希望がございましたので詳細な工程毎の表をお出し致します。
(See attached file: 040305添付資料.jpg)
以上
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