要望書:関西電力のプルサーマル計画を認めないでください
2003年12月4日
福井県知事 西川誠一 様
貴職は、私たちの8月26日の申入書に対し、10月10日に文書で回答されました。その中で、関西電力のプルサーマル計画について、「県としては今後、品質保証体制の確立および県民の信頼回復に向けた国や関西電力の取り組みを十分確認し、地元高浜町の意見や県議会での議論を踏まえ、慎重に対処していくこととしています」と述べられています。
10月23日に関電は「MOX燃料品質保証報告書」(以下、「報告書」と言う)を発表し、同日福井県にも同報告書を提出しました。記者会見で関電は、国や福井県などの確認を受けた後、「皆様のご理解のもと」、今年度内にMOX燃料の加工契約締結を目指すと述べています。
その後、12月1日に貴職は、福島県知事及び新潟県知事とともに、総理大臣に宛てて「原子力安全規制体制のあり方の検討等に関する要請書」を提出されました。その中で、「我が国の原子力政策は、今、極めて重大な局面にある。核燃料サイクル政策をはじめこれに関連する再処理問題、バックエンド問題等の諸課題はいずれも不透明性を抱え、これらの政策方針に対する国民的理解は依然として不十分である」との基本認識を示されています。
この認識に立てば、上記諸課題が不透明なままで、あるプルサーマルの実施だけを認めるというような態度はとられないものと理解します。この点では、プルサーマル承認を白紙に戻した他の2県の知事と同一歩調をとられることを期待します。
核燃料政策の不透明性とこれらの政策方針に対する国民的理解のなさだけでなく、関西電力のプルサーマル計画は更なる問題を抱えております。とてもプルサーマルを実行できる状況ではありません。以下、最近の関電プルサーマルをめぐる新たな状況について、私たちの考えと情報を提供したいと思います
1.関電「報告書」には、BNFL事件についての原因究明もなく、今後情報を公開していくという姿勢すらありません。
関電の「報告書」は、1999年のBNFL社によるMOX燃料データ不正事件を踏まえて出されたものです。にもかかわらず、当時関電が、なぜ高浜4号のMOX燃料に不正なしと決めつけたのかについて、会社としての組織的原因究明についてまったく触れていません。さらに、コジエマ社で製造中のMOX燃料を廃棄し、60億円もの損害を出したことについても、その事実経過と責任について触れていません。
BNFLのデータねつ造を明らかにするきっかけとなったのは、福井県がMOX燃料ペレットに関する情報を関電に公開させ、それを一般に公開したことにありました。関西電力はこの経験からは学ばず、「報告書」には情報公開を積極的に進めるという姿勢が全くありません。
また、10月27日、関電の藤洋作社長は定例記者会見で、MOX燃料の発注先について「事前に地元の皆さんの意見を聞くことは考えていない」と述べました[10/28付毎日新聞]。この関電の姿勢は、福井県民の意向など眼中にないという横柄な姿勢です。先の県議会等で、「BNFLが発注先になることには県民感情としていかがなものか」と県議会議員から意見が出されていたことさえも無視しています。
2.海外のMOX製造会社に関して新たな状況が生まれています。
(1)コジェマ社
コジェマ社のカダラッシュMOX燃料加工施設は地震の危険があるため、フランス政府によって認可が取り消され、今年7月をもって商業用MOX燃料の製造が中止されました。しかし、そのフランス政府の意向をコジェマ社は真っ向から無視するように、翌月の8月12日、米国との間で、米国のデューク原発で使用予定のMOX燃料をこの危険な施設で製造する契約を結びました。フランス政府の安全規制当局(DGSNR)の許可なしに進められたものです。そのMOX燃料は米国の核兵器解体から生じたプルトニウムを使ってMOX試験用に使う4体です。試験用だからとの理由で、再びMOX製造を強行しようとしているのです。
次にフランスでは、コジェマ社のプルトニウム輸送に関し、「秘密防護」法令が8月9日に公布されました。これによってコジェマ社の核物質輸送に反対して情報を流した場合には7年以内の禁固刑か10万ユーロ(約1270万円)の罰金が科されることになりました。反対運動のみならず、メディアに対しても情報統制と秘密主義を一層強化する時代錯誤の法律です。このような状況では、コジェマ社で製造したMOX燃料の安全性に関する情報が公開される見込みはまったくないと言えるでしょう。BNFL社のデータ不正に関する教訓から言えば、このような秘密主義を背負ったコジェマ社との契約など到底認められるものではありません。
(2)BNFL社
他方、BNFL社の新MOX工場は、技術的に未だMOX燃料を製造できないばかりか、11月4日以降セラフィールドでは労働者のストライキにより、再処理工場までも運転停止を余儀なくされています。また、英国政府は、国営のBNFL社に対し、収益性のある子会社ウエステイングハウス社の売却を計画するなど、BNFL社は企業として末期状態にあります。
以上のように、核燃料政策の不透明性とこれらの政策方針に対する国民的理解のなさ、関電「報告書」の内容、また新たな海外MOX製造会社の状況からも、関西電力はとてもプルサーマルを実行できるような状況にはありません。これらの事を踏まえ、福井県での関電プルサーマル計画を認めないよう、強く要望します。
2003年12月4日
以上
- グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
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