エネルギー基本計画(案)に対する意見

経済産業省が行った、「エネルギー基本計画(案)」に対する意見募集(パブリックコメント)に、グリーン・アクションから提出した意見。

エネルギー基本計画の策定に国民の声を反映すべきである。

国は今まで、エネルギーまたは原子力計画について再三国民の意見を募集してきた。しかし、それらの意見募集はいずれも事後的に行われたもので、寄せられた意見を検討し、どのように政策に反映するか、もしくはしないかを決定するプロセスが、これまで一環して不透明であった。意見募集を行ったものの、それを受けての議論をまともに行わず、ほぼ原案通りの最終報告が出されるということの繰り返しであった。

ちなみに、現行の「原子力研究開発利用長期計画」策定の時に行われた意見募集では、高速増殖炉「もんじゅ」について、国民の意見は9割が「反対」であると、議長自らが認めたものの、それを受けての議論は策定会議の場ではついになされなかった。当時の新聞は、「国民の声、反映少なく」との見出しを掲げ、「案が固まってから意見を募集する方法は意見を反映させるのを難しくしている。制度の改善が課題」という一部原子力委員の声を紹介している。

以上をふまえて改めて提案したい。今回の計画を最終的に決定するプロセスでは

この意見募集も含め、これまでに集められた国民の意見を具体的に検討材料として採り上げるべきである。双方向的な議論が確保された透明なプロセスで検討を行い、最終報告においてこれらの意見の採用・不採用の理由を論理的かつ具体的に述べるべきである。

アイリーン・美緒子・スミス

「原子力を基幹電源と位置づけ推進する」という方針を見直すべきである

最終節「今後の検討課題」の「高度成長期を終え、…従来とは違うパラダイムの中で、…その需給や政策のあり方を不断に検証していく必要がある」との主張におおいに賛同する。しかし、当の基本計画案が旧態依然としていることに深刻な矛盾を感じざるを得ない。

せっかく「市場原理の活用」や「新エネルギーの開発・導入」、「分散型エネルギーシステムの構築」を盛り込んでいながら、原子力の推進に固執することで、それらを妨げている。

  • 発電・送電・小売りを一体的に行う一般電気事業者制度を維持する
  • 原子力発電の発電電力量の吸収余地を拡大する
  • 需要が落ち込んでいるいる時に優先的に原子力発電からの給電を認める優先供給電指令制度
  • 発電用施設周辺地域整備法に基づく支援を原子力発電を始めとした長期固定電源に重点化するといった施策は、市場原理を歪め、新エネルギーの開発導入を阻害し、分散型エネルギーシステムの構築を確実に遅らせるであろう。

高速増殖炉「もんじゅ」の失敗や、プルサーマル計画の行き詰まりは、核燃料サイクルの実現性について厳しく評価し直すべきであることを示している。また、当計画案では儀礼的にしか触れられていないバックエンド事業についても実現には大きな困難がある。

新エネルギーがなお克服すべき課題が存在するとして補完的なエネルギーに位置づけられるのであれば、核燃料サイクルについても同じく実現可能性について厳格な評価がなされなければ、もはや説得力を持たないのではないか。

「安定供給」に関していえば、核燃料サイクルが実現しなければ、新エネルギーの開発に遅れていることは、長期的にはむしろ致命的になるというばくち的な側面を正直に表現していないし、「環境への適合」についても、温暖化対策は、直接的には省エネやエネルギー効率の向上によって取り組まれるべきであって(当計画案がそれらについて一定の紙面を割いて触れていることは評価する)、右肩上がりの電力消費を奨励するかのように前提とし、それを原子力でまかなうことがあたかも温暖化対策となるかのように表現するのはおかしい。いかなる電源といえど増やさないことが最大の温暖化対策である。また、同じ「環境への適合」の項で放射能汚染について一切触れられていないことは極めて不十分であるし、恣意的であると感じられる。

以上をふまえれば、「原子力を基幹電源と位置づけ推進する」という方針は、そのディメリットに比して、その根拠が十分に示されているとはとても言い難い。よって、この方針は撤回するべきである。

最近、バックエンド事業や再処理事業に必要な費用が十分に準備されてきていないことが明らかになり、それを国民の負担でまかなうよう求める動きがあるが、それはこれまで原子力を推進してきた人たちの責任を問うことなしには許されないことである。しかし、この計画案ではそういった議論が曖昧なまま、既定路線の継続がことさらに打ち出されている。これでは、これまでの「矛盾の先送り」の繰り返しである。この悪循環を断ち切るためにも、「原子力を基幹電源と位置づけ推進する」という方針を見直すべきである。

小坂勝弥

以上

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