美浜3号機取り替え用配管の刻印ねつ造・隠ぺい及び、美浜1号機での立て続けの事故等に関する質問書

関西電力社長 森 詳介 様
2005年11月25日

1.美浜3号機取り替え用配管の刻印ねつ造・隠ぺいについて

11月10日の新聞報道等によって、美浜3号機の取り替え用配管の刻印が今年1月に三菱重工 高砂製作所でねつ造され、貴社がその事実を隠し続けていたことが発覚しました。この問題に関して質問します。

(1)1月に起きた配管ねつ造について、なぜこれまで公表しなかったのですか

(2)貴社は、11月10日付「お知らせ」で、「今回の三菱重工における刻印打替えについては既に是正しておりますが、品質保証上あってはならないことと受け止めています。また、当社においても、その対応において不適切な点があり、反省しています。当社としては、二度と同じことを発生させないよう、品質保証活動を一層徹底してまいる所存です」と述べています。しかし、貴社の責任等については全くふれられていません。

[1]「対応において不適切な点」とは何ですか、具体的に説明してください。

[2]「反省しています」とは、何を反省しているのですか。

[3]この問題について、貴社はどのような責任をとるのですか。

(3)なぜ、美浜発電所は原子力事業本部にこのことを報告しなかったのですか。

(4)美浜発電所は、当初「不適合シート」の是正措置欄に何も記入せず、後になって是正措置の必要なし(この場合、正しく配管を取り付け直す必要なし)に○を記入したのですか。刻印改ざんがあったことをもみ消すためですか。

(5)配管の刻印がねつ造されたのは、今年2月2日のことでした。この頃は、まだ美浜3号機事故について国の事故調査委員会の途上であり、貴社の事故報告書も提出されていない時期でした。事故調査委員会では、貴社の品質管理・安全管理、外注管理のずさんさが大きな問題となっていました。

[1]この刻印問題について、国へは、いつ、どのような内容を報告したのですか。

[2]事故調査の最中に起きた刻印のねつ造をなぜ公表しなかったのですか。

[3]取り替え用配管を発注したのはいつですか。

2.美浜3号取り替え用配管の肉厚測定結果について

原子力安全・保安院は、11月10・11日に行った美浜3号機等への立ち入り検査を踏まえ、「立入検査の結果に基づく対応について」(11月18日)を出しました。その中で、「関西電力が測定した測定結果と照合したところ、448ポイント中、17ポイントで測定装置の測定誤差を超える数値が確認されました。

○当院としては、技術基準適合性確認に万全を期すため、測定誤差を超える数値が確認されたものについて、再評価を行うよう関西電力に対し指示することといたしました」となっています。保安院と貴社の測定値は最大で1.5mmもの差があります。

この測定値の違いについて、その原因等を詳しく説明してください。

3.美浜1号機で立て続く事故等について

(1)調整運転中の加圧器安全弁からの蒸気漏れ事故について

調整運転中の9月17日に起きたB−湿分分離加熱器蒸気ドレン管からの蒸気漏れによって、貴社は9月29日から原子炉出力を低下し原子炉を止めて配管を取り替える予定にしていました。その出力降下の直前である9月29日4時頃に、今度はB加圧器安全弁の出口温度が上昇し安全弁シート部からの漏えい事故が起きました。この事故について、貴社は10月19日に事故原因と対策を発表しました。

そこでは、

(ア)加圧器安全弁の出口側配管を取り外すと、配管が弁に対して下方向に22mmずれる位置にきた

(イ)このズレは、「従来からズレが生じていたものと推定された」

(ウ)運転中に加圧器自体の熱膨張で、当該弁が上方向に移動(44mm)した

(エ)そのため、出口側配管と反対側のシール面の密封性が低下して蒸気漏れがおき、温度が上昇した

また、シートに異物が付着した可能性については「明確な混入等は特定できませんでした」とも述べています。

しかし、これでは、なぜ今回、蒸気漏えいが起きたのかの原因は特定されていません。

[1]出口側配管が22mm下方向にずれるのは、運転開始以来のことですか。

[2]そうであるなら、明らかな設計・施工ミスですが、なぜ放置し続けたのですか。

[3]運転開始以来35年間、蒸気漏えいは起きなかったのに、なぜ今回起きたのですか。長期間の使用による「老朽化」によるものですか。

[4]シート面への異物混入については、どのような検査をしたのですか。

(2)同日に起きたA1次冷却材ポンプのシール水漏えい事故について

上記事故と同日の9月29日19時頃、出力降下の最中に、今度はA1次冷却材ポンプのシール水が漏えいする事故が起きました。この箇所は、1次冷却材の流出を防止するための重要な機器です。この事故について、貴社は10月19日に事故原因と対策を発表しました。

そこでは、

(ア)1次冷却材ポンプ内部にある、No.3シールリングスプリング(バネ)を測定した結果、納入時(新品)に比べて、約2割バネ力が低下していたため漏えいが生じた。

(イ)バネは1984年(S59年)に取替えただけで「長期間にわたり使用していた」

(ウ)定検の度に、バネの自由長や負荷時の長さ等を測定していたが、「前回の定期検査時との比較をおこなっていたが、経年的なバネ力の変化を確認するような管理は行っていなかった」と述べています。

また、今後の対策として、No.3シール部のバネを新品に交換すること、No.3シール部のバネは、定検ごとに経年的なバネの力の評価を行い、計画的に取替えるとしています。

[1]このバネは1984年以降、21年間も「長期間にわたり使用」されていました。これは、老朽化による事故ではないですか。

[2]なぜ、「前回の定期検査時との比較をおこなっていたが、経年的なバネ力の変化を確認するような管理は行っていなかった」のですか。

[3]No.1とNo.2のバネについて、点検しないのはなぜですか。

[4]他の原発全てについて、バネの力の変化を経年的に示してください。

[5]他でも、「経年的な変化を確認する」検査を行っていない箇所がありますか。あるとすれば、具体的のその箇所を明らかにしてください。

(3)事故が頻発する美浜1号機の閉鎖に関して

美浜1号機では、今年1月以降9回も事故・故障が連続しています。それも、原子炉を起動し調整運転を開始しようとするたびに事故が続発しています。また、事故の発生箇所は、2次系のみにとどまらず、1次系の重要な箇所でも多発しています。このように繰り返えされる事故は、老朽化によるものだと考えますがどうですか。

また、出力30万kWの小型の美浜1号機を閉鎖しても、電力供給にはなんら影響はありません。大事故が起きる前に、美浜1号機を閉鎖すべきではありませんか。

(4)原子力事業本部が美浜町に移転して以降、美浜発電所で事故等が多発していることに関して

貴社は、美浜3号機事故の再発防止策の一環として、原子力事業本部を7月に美浜町に移転しました。しかし、その7月以降、美浜1・2号機では事故が多発しています。また、3号機では取り替え用配管の刻印改ざん問題についても原子力事業本部に報告されない等の異常事態が続いてきました。

なぜ原子力事業本部が美浜町に移転してから、このように事故等が多発しているのですか。その理由と責任を明らかにしてください。

(5)美浜3号機の運転再開に関して 

仮に、保安院が技術基準適合命令を解除したとしても、上記のような状況からすれば、美浜3号機の運転再開ができるような状況ではないと考えますが、どうですか。

2005年11月25日

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作成:2005年10月20日

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