六ヶ所再処理工場に関する質問書と政府(経産省)の回答

以下は再処理工場の問題等について、市民団体(止めよう再処理!全国ネットワーク)と、資源エネルギー庁・原子力安全保安院との間に交わされた質疑応答の中で確認された「資料提出」に関する質問書とその回答です(2月13日)。

福島瑞穂議員(参議院)提出の質問書(2003/2/14付け)に対する回答

平成15年3月6日
経済産業省

<確認された資料提出>

1.日本原燃の再処理工場の事業許可申請書の海流評価について、保安院が持っている資料及びデータを全て開示してください。(坪井課長から提出すると確認済み。)

1の回答:資料の確認や開示の可否についての検討に時間を要するため、後日回答する。

2.2月7日回答の7において「流速・流向の計算結果を放出口地点以外の20地点の測定データと比較した」という趣旨が書かれています。その計算結果と測定データを比較したという資料を提示してください(坪井課長から提出すると確認ずみ)。

2の回答:公開されている文献「電力中央研究所報告 研究報告:U88070 排液海洋拡散モデルの開発(平成元年3月)」に記載されている。

3.関連して、海洋から陸地へ押し寄せる汚染という被曝経路による被曝線量の計算結果を教えて下さい。

4.以上の被曝線量が無視できるという根拠を示す資料を提示して下さい。(坪井課長から提出すると確認済み。)

3・4の回答:平常運転時の再処理施設周辺の一般公衆の線量評価では、再処理施設から排出される放射性物質による放射性雲からの外部被ばくや排気中に含まれる放射性物質の呼吸摂取による内部被ばく等の代表的な被ばく経路による実効線量を適切に加え、そのうち最大となる線量を評価している。その評価結果が十分に低いものであれば、上記以外の経路の被ばくの寄与を考慮しても一般公衆の線量を低く抑えることができる。したがって、代表的な被ばく経路について一般公衆の実効線量を定量的に評価すれば、線量告示に定める周辺監視区域外の線量限度に対する適合性等を判断する上で十分である。このことは2月7日に回答したとおり。

日本原燃(株)は、上記の考え方及び事業指定申請書に示された以下の理由により、お尋ねの被ばく経路による被ばく線量の計算を行っていない。

  • 周辺に海水浴場がなく、漁業活動に伴う海浜利用もないこと。
  • 将来、湾内のしゅんせつなどの海浜作業及びむつ小川原港内における岸壁作業が生じたとしても、作業形態から被ばく経路としては無視できること。

なお、施設の運転開始後は、定期的な環境モニタリングを行うことにより、放射性物質の蓄積状況を把握し、現実に周辺住民等の線量が年線量限度を十分下回っていることを確認することになっている。

5.溶接不良問題について、新聞報道されてから原燃からの報告があるまでの間、保安院の現地の検査員はどのような行動をとったのか、例えば下請け業者の事情聴取にどの様に係わっていたのか等、具体的に説明して下さい。

5の回答:現地の原子力保安検査官は、使用済燃料受入れ・貯蔵施設の燃料プール等の点検に係る立会等を実施しており、日本原燃(株)の下請け業者の事情聴取等には係わっていない。

なお、使用済燃料貯蔵プールは、プール水の放射性物質濃度が極めて低いこと、当該溶接部にかかる圧力が低いことから、国の溶接検査の対象となっていない。また、今回のプール水の漏えいについては、使用済燃料プールの重要な機能である冷却能力等に問題を及ぼすものではなく、漏えいした水も漏えい検知装置を経由して液体廃棄物処理施設に送られ、ここで蒸留処理した後、放射性物質濃度が基準値以下であることを確認した上で放出されるものであり、本件は、下請け業者も含めて、建設段階での事業者の品質保証体制の問題である。

6.新聞報道されてから原燃からの報告があるまでの間、保安院の現地の検査員から保安院(東京)にどのような報告がなされ、それに対してどの様に対応したのか具体的に説明して下さい。

6の回答:原子力安全・保安院は、現地の原子力保安検査官から日本原燃(株)が行っていた点検作業に立ち会った結果など、点検作業の進捗状況等の報告を受けていた。

7.使用済み燃料プール及び本体貯槽等についての国の使用前検査記録および検査報告書を開示して下さい。(坪井課長が開示の検討を約束)

7の回答:資料の確認や開示の可否についての検討に時間を要するため、後日回答する。

8.化学試験の実施にあたって、今回の不正があった本体貯槽の設備及びそれ以外に不正の検査対象となっている設備が使われないのかどうか明らかにして下さい。(青木一哉企画班長から提出すること確認済み。)

8の回答:日本原燃(株)が引き続き調査中であるが、現時点においては、同社より再処理施設本体の貯槽において不正があったとの報告を受けていない。

なお、化学試験において個々の貯槽がいつ使用されるかについての報告は受けていない。

9.化学試験の実施に付いて、使われる設備と試験の内容を詳細に説明して下さい。

9の回答:化学試験は、日本原燃(株)が、建設中の再処理施設の機能及び性能の確認等を目的として核燃料物質を用いずに実施しているものであり、日本原燃(株)からは試験運転全体計画の報告は受けているが、化学試験で使われる設備等の詳細については報告を受けていない。

10.貯蔵ピットの検査は水を張った状態で実施する場合と、水を抜いて実施する場合とで検査精度にどのような違いが生じるのか説明して下さい。(青木一哉企画班長から提出すること確認済み。)

11.燃料移送水路及び燃料送り出しピットの検査を行う際、何故水を抜かないのですか。

10・11の回答:原子力安全・保安院の原子力施設検査官が、水中でも点検に支障がないことを、現場において試験片を用いて確認している。

12.ダイバー検査に伴う被曝線量の評価を明らかにして下さい。(青木一哉企画班長から提出すること確認済み。)

12の回答:作業に伴う放射線管理を行うことが日本原燃(株)の保安規定に定められており、また、作業員の被ばく線量は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「法」という。)に基づき、基準値以下に制限され、その結果が四半期毎に国に報告されることになっている。

13.再処理工場の全溶接線の何パーセントを実際に検査しているのですか?溶接検査、使用前検査、定期検査のそれぞれについて、明らかにしてください。

13の回答:そのような算定をしていない。そもそも溶接検査では、法令で定められた所定の放射性物質濃度以上の濃度の気体または液体を内包し、所定の圧力以上の圧力がかかる容器等を対象に検査している。また、使用前検査では、溶接部を含めた施設の外観や漏えいの有無等について、施設定期検査では、施設の性能について検査している。

14.今回図面上に溶接がない箇所の不正が問題になりました。溶接検査及び使用前検査で図面上溶接がない部分について、どの様な検査を行っているのか説明して下さい。

14の回答:溶接検査及び使用前検査で行っていることについては、問13で回答したとおり。

なお、日本原燃(株)再処理施設使用済燃料受入れ・貯蔵施設の使用済燃料プールライニングにおいて不適切な溶接施工がなされていたことを踏まえ、追加的に同施設内及び再処理施設本体内の同様のライニング構造を持つ貯槽等について調査を行っているところである。

六ヶ所再処理工場・海流シミュレーション解析の想定及びデータに関する質問

(2003年2月14日)に対する回答(2003年3月6日)

以下の質問事項について早期に回答をいただけるよう、よろしくお願いします。

1.北13km地点は、放出口の真北13kmにあるのか、それともおよそ北13kmだが、海岸から3km地点にあるのかどちらですか。

1の回答:北13km地点は、放出口のほぼ真北に位置する、事業指定申請書添付書類七第5.1−2図に示された位置である。

2.いずれにしてもその地点の水深は60m以上ありますが、昆布が採れる場所はせいぜい水深20mまでと言われています。この点はどう考えているのですか。

2の回答:評価結果が厳しくなるよう、海藻類の漁場の現実の場所ではなく、海水中の放射性物質濃度がより高くなる位置に海藻類の漁場が在るものと仮定して評価されている。

3.北13kmでの濃度評価に用いる海流としては、第5.1-32表の「憩流による廃液の拡散影響の及ばない海域」欄の頻度を適用しているのですか。それとも、憩流も考慮に入れているとすれば、北向と南向、東向と西向の頻度はそれぞれどうとっていますか。

3の回答:海洋放出口から北13km地点における海水中の放射性物質濃度の評価は、第5.1−32表の「憩流による廃液の拡散影響の及ばない海域」の流動パターン出現頻度が用いられている。

4.平成元年3月申請書の第7−5−38頁に書かれている拡散方程式(5.1−34)は、流速(U,V)が場所(x、y)に依らず一定の場合に成り立つ式になっています。その場合の流速としては、第5.1-31表と第5.1-32表(いずれも平成3年での変更申請書の番号)で規定されている数値を用いたと理解してよろしいですか。

4の回答:ある地点(x、y)における鉛直平均速度U及びVは、地点及び時間の関数U=U(x,y,t)、V=V(x,y,t)で表されるものである。日本原燃(株)再処理事業指定申請書の記載では関数の表記が略されているが、地点によらず一定であることを意味するわけではない。このことは、平成15年2月7日に回答したとおり。

なお、仮想放出口におけx方向及びy方向への廃液の流速として第5.1−31表の仮想放出口条件に記載されているx方向及びy方向の鉛直平均流速が用いられている。

5.もし、流速として場所によって異なる数値を用いたというのであれば、前記拡散方程式との整合性はどうなるのですか。また、そのような解析が記述されている資料を提示してください。

5の回答:前項の回答のとおり。解析の詳細は、公開文献「電力中央研究所報告 研究報告:U88070 排液海洋拡散予想モデルの開発(平成元年3月)」に記載されている。

6.平成3年変更申請書第5.1-31表について以下の質問をします。

(1)廃液拡散幅の定義は? 憩流の行には37.5×4面のように書かれていますが、この「面」とは? 憩流以外は単に37.5などの書き方ですが、この違いは?

回答:「廃液拡散幅」とは、仮想放出口の幅のことである。「×4面」の表記は、東、西、南及び北の全ての方向(4面)に仮想放出口が設定され全ての方向に廃液が流れることを意味している。

憩流時以外は、仮想放出口から廃液が南又は北へ流れることが自明であることから、「×1面」とは表記されていない。

(2)廃液拡散幅とは、海底方向(z方向)への層の厚みですか。その場合にz方向への濃度は一定ですか。

回答:廃液拡散層厚さは、仮想放出口の鉛直方向の厚さであり、その厚さの範囲において濃度は一定と仮定している。

(3)相対濃度の定義は? これは仮想放出口中心の濃度ですか。仮想放出口内での濃度分布はどのようになっていますか。相対濃度が廃液拡散層厚さに反比例していないのはなぜですか。

回答:相対濃度とは、海洋放出口から1Bq/sで放出した場合の仮想放出口における放射性物質の平均濃度のことである。

仮想放出口において濃度は一定と仮定している。

相対濃度が廃液拡散層厚さに反比例していないのは、相対濃度が廃液拡散層厚さのみで決まるものではないためである。

(4)憩流の北と南方向、東と西方向の頻度はどのような数値になっていますか。

回答:日本原年(株)は、海洋放出口を含む海域の評価において考慮している憩流については、海面まで上昇した廃液が水平方向に広がるため、その分の流速があることから、この流速(非成層時:7cm/s、成層時:1.6cm/s)で、東、西、南及び北の全ての方向に廃液が流れるとして評価している。このことは、平成15年2月7日に回答したとおり。

7.遠方領域の解析における拡散係数について

平成元年申請書第7−5−39,40頁に、拡散係数の算出方法が書かれていますが、実際にとった数値が書かれていないので、以下の質問をします。

(1)実際にとったσの数値を教えてください。

回答:σは、放射性物質濃度の横断分布の標準偏差であり、廃液の流下距離に応じて計算された放射性物質の濃度分布から求められる値である。σは、場所によって変化するので、場所を特定しない限り具体的な数値を示すことはできない。

(2)rは放出点直上からの距離と書かれていますが、憩流ではこれはゼロではないのですか。憩流の場合に実際にとったrを教えてください。

回答:rは海洋放出口から海域の各地点までの直線距離であり、海洋放出口真上においてr=0である。rは、各地点の拡散係数を求める際のパラメータであり、各地点に応じて変わるものである。

(3)Bは拡散幅と書かれていますが、前記第5.1-31表にある廃液拡散幅と同じものですか。

回答:拡散幅Bは廃液の流下距離に応じて計算される値であり、仮想放出口の廃液拡散幅とは異なるものである。

(4)全体的に、拡散係数を実際にどうとったのか、具体的な数値を示してください。

回答:拡散係数は、遠方領域の各地点に対して5.1−51式で計算される値である。拡散係数は、場所によって変化するので、場所を特定しない限り具体的な数値を示すことはできない。

以上

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