経済産業省が介入しなかった理由を世界の規制担当者が模索
platts “Inside NRC”
Vol.24, No.19 1、8、9ページ
2002年9月23日
日本語訳(グリーン・アクション)
WORLD’S REGULATORS TRYING TO FIND OUT WHY METI DID NOT INTERVENE
先週、国際原子力機関(IAEA)に集まった各国の上級規制官担当者は、日本の担当官が9月17日に行ったブリーフィング後も、なお依然として、日本の規制担当者が何故、炉心内部の点検データ隠蔽について信憑性のある情報を得ながら、東京電力株式会社に対し、原子炉を止めて徹底的な点検を行うよう命じなかったのか理解できないと述べた。
東欧のある国の規制当局局長は、「今朝受けた説明を聞いた限りでは、強固で独立した行動や何らかのフォローアップが[日本の安全当局によって]行われたという確信を持つにはいたらない」と述べた。
各国の規制当局者は、9月16・17日、ウィーンのIAEA本部において世界的安全基準設置への努力についての会議を行った。その数日前、日本の原子力安全委員会の代表が17日に規制当局者らにブリーフィングを行うことが決まった。
このブリーフィングが行われる直前、日本代表はIAEAに対し、彼ら自身も東電問題については報道記事から主に情報を得たと述べた。
9月17日当日、原子力安全委員会は各国の規制当局者に対し、原子力安全委員会、並びに日本の原子力監督機関である原子力安全・保安院の調査員が焦点を当てている問題について概要を述べる9月9日付けの説明書を手渡した。関係者によると、日本は今日・明日(9月23・24日)にストックホルムで開催される国際原子力規制者会議(INRA)においても同一、または類似の説明書を使用するとのことである。
原子力安全委員会のブリーフィングに出席したスカンジナビアの規制当局者によれば、この説明書は「約2週間前の情報よりも新しくて有用な内容は全く含まなかった」。同説明書は、8月30日と9月5日の会議において、原子力安全委員会がこの改ざん事件を取り上げ、「保安院が同事件について説明を行った」と述べている。
同説明書は、原子力安全委員会は、事件の原因ならびに「規制制度や人的、組織的等の背景要因」を考慮に入れ、「調査を行い、予防措置を講じていく」と述べ、更に、数箇所で、原子力安全性における“透明性”の重要性に言及している。
原子力安全委員会は、また、「稼働中の合理的な管理規則」について「討議」が行われるだろうとも述べた。この点について、ブリーフィングを行っていた原子力安全委員会の担当官は、今までのところ、日本は「ASME型の基準を定めていない」が、日本は「これを導入することを望んでいる」と述べた。
このブリーフィングについて、出席した規制当局者らは、失望させられたと述べた。彼らが本当に質問したかったのは、疑惑について何ヶ月もかけて電力会社役員と静かな論議をするのではなく、炉心内部に損傷があったかどうか即刻、調べる為に『なぜ原子炉を停止せよと言わなかったのか?』ということである。あるヨーロッパの規制当局者はブリーフィングの後で、「我々がはっきりこの質問をしなかったのは、(原子力安全委員会の発表者が)この質問に答えられないであろうことが明らかであったからである」と述べた。
INRCに対し他の規制当局者は、隠蔽工作疑惑が解明された時点での影響下にある施設の停止についての決定に、日本の規制機関は一切関与しなかった、という原子力安全委員会の説明書内の見解には、「大変困惑した」と話した。
原子力安全委員会の説明書には、「新潟その他の県知事からの要請に応え、東電は9月2日、柏崎刈羽原発1号機を停止し、定期検査を予定より前倒しして行うことを決定。東電は、更に、自主点検を行うため福島第一原発4号機と第二原発2-4号機を停止することも決定した。」とある。
「これは、(隠蔽疑惑が解明したあと)規制当局は完全に処理過程外にあり、即座に原子炉が点検されるべきとの決定は、電力会社のみに任せられていたことを示す」と西欧のある規制当局者は述べた。
IAEAの規制当局者や安全性に関する専門家は、彼らの見解によれば、東電事件に関してこれまでに明らかになった情報は、この事態が規制当局と東電の間に特有の問題ではなく、日本全体に関る問題であることを強く示唆しており、欠陥発見の隠蔽がこの他にも日本の他の原子炉や電力会社でも見つかる可能性が高いと話した。ある規制当局者は、「これは文化的な問題だ」と述べた。
一部には、東電の9月17日付プレス・リリースがこの安全性に関する文化的問題を象徴しているという声もあった。このプレス・リリースは、非難されるべきは個人ではなく同組織であると述べ、更に以下の様に付け加えている。
原子力の点検・補修に携わる保修部門の社員にとっては「スケジュールどおりに定期検査を終わらせて自分たちの電源を系統に復帰させる(=送電線に電気を送り出す)」ことが最大の関心事であり、そのことに強い責任を感じていた。……また、原子力部門の幹部にも同様の意識が強かった。……こうしたことにより、保修部門全体に「安全性に問題がなければ、国へのトラブル報告はできるだけ行いたくない」という心理が醸成されていった。
(中略)
9月20日の締切時間に届いた日本からの未確認メディア報告は、東電に加えて、沸騰水型原子炉を経営する他の2社、東北電力株式会社と中部電力株式会社も、原子力安全・保安院への検査報告内容を改ざんしていたと主張している。あるヨーロッパの規制担当者は、この安全文化を前提に、「同様の行為が他の原子炉や経営企業、電気請負業者でも見つからないはずがあろうか?」と疑問を投げかける。
あるカナダの専門家は、「これらは安全文化の問題だ。これは、我々が発展途上国や旧ソ連のような国々において従事してきた類の問題である。日本ように進んだ計画において起こるべくことでないはずだった。」と述べた。
「このような問題を処理する日本の公的手続きは存在するのは明らかだが、その上に、それらを秘密裏に処理する“日本式”方法も存在することも明白だ。」とある米国の担当官は述べた。東電の隠蔽工作を正面切って非難する経済産業省と原子力安全・保安院による攻撃的な発言によっても、「経済産業省と業界の間に癒着がある可能性を退けることは決してできない。」東電が秘密裏に炉心設備の修理を行っていたとき、「規制当局はどこにいたのか?常駐監査官は?」と彼は質問する。
彼はまた、「もしこれが日本の文化的理由によって原子力産業で起こるのなら、航空産業でも起こる可能性がある。これは連邦航空局(米国航空産業の監督機関)に対して気を配るよう我々から警告するべきことかもしれない」とも述べた。
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