追加質問書

経済産業大臣 平沼赳夫様

I 福島第二原発3号機の全周に及ぶシュラウドひび割れについて

  1. 2001年8月30日付ニュークリアオニックス・ウィーク誌に,「東京電力がひび割れを確認したのは,経済産業省に報告する少なくとも1年前である」との記事が掲載されました。この記事を知って保安院が2001年9月に東電に事実関係を確認したところ,そのような事実はないと東電から回答を得たとのことです[2002年9月6日付の私達への回答]。東京電力に電話したというのは,まさに内部告発を受けて保安院が調査を行っている最中でした。
    • 1−1 保安院は,2002年9月6日付の私達への回答書において,当該シュラウドのひび割れが,問題の29件に含まれているとしています。このことは,8月29日に東京電力及び保安院が公表したどの報告のどの部分に記載されていますか。
    • 1−2 記事を確認し,電話をしたのはどの部署の誰ですか。
    • 1−3 東京電力が電話で否定したことを保安院が正しいと認めたのであれば,保安院は,ニュークリアオニックス・ウィーク誌の記載が虚偽であることを認めたことにもなります。保安院は東京電力に対し,記事の訂正を要求するよう求めましたか。求めなかったとすれば,それは何故ですか。
    • 1−4 東京電力が電話で記事の内容を否定した後,さらに事実関係を調査することはしなかったのですか。それはなぜですか。内部告発を受けての調査中であり,上記報告書の検討中であったことから,さらに調査をすべきだったのではありませんか。
  2. 2.東京電力2001年8月24日付報告書では,SUS316Lにおける応力腐食割れが,シュラウドのリング部付近において発生するとの評価がなされています。保安院は,この評価に従う形で,2001年9月6日の点検指示において,点検箇所をリング部付近に限定しています。ところが,今回の不正事件により,東京電力は,既にSUS316Lについて,H4等リング部以外でもひび割れの兆候があることを把握しており,これを隠蔽していたことが明らかになりました。
    • 2−1 保安院は,2001年9月6日の点検指示において,点検箇所をリング部に限定するにあたって,どのような検討を行いましたか。
    • 2−2 上記報告書の,ひび割れの発生箇所をリング部に限定した評価は,リング部以外のひび割れの兆候の事実を隠蔽し,検査を簡略化するために東京電力が意図的に行ったものであることを認めますか。
    • 2−3 保安院が点検指示をリング部に限定したのは誤りであったと認めますか。保安院がこのような評価を,虚偽であると見抜くことができなかったのはなぜですか。あるいは,東京電力の意図を承知の上で,点検指示を出したのですか。
  3. 東京電力は1997年に,シュラウドの自主点検の点検間隔を,これまで2年であったものを10年にしたと報じられています。これは事実ですか。保安院はこの報告を受けていましたか。これを容認したのはなぜですか。

II 保安院が2002年8月の段階で問題の原発について妥当であると評価していることについて

  1. 保安院は2002年8月2日に,問題となっている福島第二原発2号機について,検査結果を「良」として定期検査終了証を交付しています。なぜひび割れが隠蔽された原発の検査結果を「良」とし,終了証を交付したのですか。この原発が不正のリストに含まれていることを承知していたのではないですか。保安院がこの段階で承知していた事実に照らして説明して下さい。
  2. 保安院は2002年8月8日に,問題となっている福島第二原発3・4号機と柏崎刈羽原発1号機について,7月に東京電力から提出された定期安全レビュー報告書を,「妥当である」と評価しています。なぜひび割れが隠蔽された原発の定期安全レビュー報告書を「妥当である」と評価したのですか。この原発が不正のリストに含まれていることを承知していたのではないですか。保安院が8月7日に東京電力からどのような説明をうけ,どのような情報を得たのかという事実に照らして説明して下さい。
  3. 保安院は,ひび割れが疑われる原発の安全評価を自ら行い,これを2002年8月29日に公表したとしていますが,評価に必要な情報は,いつ入手したのですか。

III 原子炉圧力容器上ぶたひび割れ問題について

  1. 1990年代初頭,フランスの多くの原発で,原子炉圧力容器上ぶたにひび割れが発生しました。フランスのEDFは,1991年に出した報告書の中で,上ぶたにひび割れの危険性がある原発として大飯2号炉を指摘していました。この指摘に対し,貴省は関西電力に検査等を行うよう指示を出しましたか。出していないとすれば,それはなぜですか。
  2. 関西電力は,1993年から95年にかけて9機の原発の上ぶた管(管台)を渦電流探傷検査し,損傷本数をゼロと発表しています。この検査では,今回問題になっている「ひび割れやその兆候」もなかったことを,貴省は確認しているのですか。
  3. 関西電力は,「予防保全」の為として,1996年以降,7機の原発で上ぶたを交換してきました。交換済みの上ぶたは調査もされず原発敷地内に放置されています。本当に「ひび割れやその兆候」もなかったかどうか明らかにするために,いますぐ取り出して詳細で精密な調査を行うべきと考えますがどうですか。
  4. 今年に入り,アメリカのデービスベッセ原発でも上ぶたひび割れが見つかっています。NRCは米国内の全てのPWR原発について検査・報告するよう指示しています。このNRCの措置を受けて,貴省は電力会社に検査等の指示を出しましたか。出していないとすれば,それはなぜですか。

IV 蒸気発生器細管の検査について

  1. 貴省は1999年5月に,蒸気発生器細管の検査について,これまでの全数検査から半数検査でよいという新基準を作成しました。半数検査でよいという新基準の根拠は何ですか。
  2. 新基準でいけば,蒸気発生器細管の全数検査は26ヶ月に一回となります。これは,定期検査の間隔を13ヶ月に1回と定めている現行の法令に違反しないのですか。

V 2つの報道について

  1. 2002年9月13日付読売新聞は,通産省の検査官が,1989年に東京電力からひびについての報告を受けながら,これを隠蔽し,東京電力に対しては「ヤミ修理」を行うよう事実上の指示をしていたことを伝えています。このことは,今回の不正事件が,東京電力と貴省の共謀によるものであることを意味しています。貴省の責任を明らかにしてください。
  2. 同日の共同通信は,保安院が内部告発者についての情報を,東京電力に漏らしていたことを伝えています。東電のみならず貴省がウソをついていたことが明らかになりました。今回の事件は内部告発により端を発し,原子炉等規制法の内部告発者保護規定の最初の適用といわれています。これを最も遵守しなければならない貴省が,この規程に違反し,告発者の人権を蹂躙したのです。貴省の責任を明らかにしてください。

VI 「維持基準」「事後保全」について

貴省は今,ひび割れのある原発をそのまま動かしてもよいとする「維持基準」や,漏えいが起こった後で対処すればよいとする「事後保全」を検査制度に導入し,原発の検査・安全管理の大幅な緩和を行おうとしています。これに対しては地元からも懸念の声があがっています。事故の危険を一層高める検査制度の改悪を行うなど言語道断です。制度改悪の作業を直ちに中止すべきではないですか。

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