共同声明:大飯原発破砕帯−「活断層ではない」との強引な幕引きは許せない

共同声明

大飯原発破砕帯−「活断層ではない」との強引な幕引きは許せない

9月2日の大飯破砕帯に関する第6回評価会合を前に、「関電任せの調査ではなく、規制委員会の責任でトレンチ掘削」等を求める緊急ネット署名は4日間で4,304筆が集まり、同趣旨の19名の国会議員署名も提出された。脱原発弁護団全国連絡会も8月30日に同趣旨の声明(※1)を出していた。

しかし、9月2日の会合で、島委員長代理は、会議の最後に「一定の方向性が出た」と語り、暗黙のうちにF−6破砕帯は「活断層ではない」とした。今後は、9月中に規制庁が評価書案を提出し、有識者会合と他の有識者によるピア・レビューを実施し、評価書をまとめるという。
 2日の評価会合では、「活断層ではない」と断定できる明確な証拠は示されていない。さらに、F−6の連続性についても複数の委員から疑問が出された。このような状況で、「活断層ではない」と断定することは、新基準に照らせば許されることではない。

◆山頂トレンチ破砕帯の活動時期・・・関電自らが証拠不十分を認める
 非常用取水路(耐震Sクラス)の近くを通る山頂トレンチの破砕帯の活動時期について、関西電力は南側トレンチ破砕帯より古い時期のものだと主張した。しかし、関電が「根拠」とした鉱物の含有量のデータについて、重松委員からは「推定結果に誤差がある」「データが少なく、少ないもので断定していいのか」等の疑問が出された。これに対して関電は「そのとおりで、ご指摘のようにデータは多くなく・・」と自ら、証拠不十分であることを認めている。しかし結局、重松委員は「妥当」としてしまった。
 山頂トレンチの破砕帯の上に地層はなく、地層の変位によって破砕帯の活動年代を決めることができない場合は、「極めて軟弱な破砕帯」であるという「性状等」によって安全側に判断することになっている。しかし、このような議論は行われなかった。

◆F−6の連続性・・・引き続き複数の委員から疑問が出された
F−6の連続性については、渡辺委員や廣内委員から前回に引き続き「F−6の連続性は本当にこれでいいのか」と何度も疑問が出された。ボーリングデータをつないだだけの関電の評価では、当然にいくつかの連続性の可能性が考えられる。委員からは、ボーリングデータからしても南側トレンチの西側付近に「F−6」がつながっている可能性について指摘が続いた。この問題は、そもそも300mの南側トレンチを掘るように島委員長代理から求められたにもかかわらず、関電は70mの短いトレンチしか掘らず、トレンチの真ん中に出てくるはずの破砕帯はその東端にでてきた。「F−6を取り逃がしてしまった」(島委員長代理)という関電のずさんな調査に原因がある。委員の疑問に答えるためには、トレンチを掘るなどして実際に確認する以外にない。しかし、委員からの疑問が出ているにもかかわらず、2日の評価会合では、関電の主張する「新たなF−6」を認める形にしてしまった。
これについて島委員長代理は、最後に関電に対して「委員から要求があれば、ボーリング等の追加調査をやってもらうこともある」とだけ発言し、「一定の方向性が出た」と強引に議論をまとめてしまった。

◆「従来のF−6」と「新たなF−6」の整合性について説明なし
 廣内委員は7月の評価会合から、関電の「従来のF−6」と「新たなF−6」の食い違いについて関電に釈明を求めていた。2日の評価会合で関電は、「以前はこうでした。今回はこうです」とただ資料を示すだけだった。関電は、なぜ設置許可申請当時に台場浜までF−6が延びていると判断していたのか等についての説明は一切しなかった。
 この問題は、F−6に限らず、関電の当初の断層調査に根本的な問題があるのではないのかという根源的な問題にも通ずる。委員の度重なる要求に対して、関電はこの問題に蓋をしたままだ。
 さらに、敷地内破砕帯と密接な関係をもつ海成段丘面の高度変化等々、敷地近傍の3つの活断層(FoA−FoB−熊川断層)の連動による変形帯の上盤に大飯原発が存在すること等については、議論の対象外とされてしまった。

 関電は、高浜原発3・4号の再稼働審査が津波問題で行き詰まっている中で、破砕帯問題をクリアして、大飯原発の定期検査後の再稼働を進めようとしている。大飯3号は3日未明に運転を停止し、大飯4号は15日から定検に入る。全国の原発は再度「ゼロ」を迎える。このような「事情」の下で会合は、不明確な点を棚上げにしたまま強引に幕引きを図ったのである。

 今後、大飯破砕帯問題については、規制庁の評価書案やピア・レビュー等を厳しく監視していこう。他方、福島第一原発の汚染水問題はますます深刻さの度合いを深め海の汚染は進み、海外からも政府と東電に批判の声が強まっている。再稼働審査や原発輸出どころではない。また、復興庁の「子ども・被災者支援法」の基本方針案は被災者の声を聞くこともなく、支援の中身を骨抜きにしようとしている。
 これら多くの課題について、全国の力を合わせ取り組みを強めて行こう。

(※1)脱原発弁護団全国連絡会の声明 
  「大飯原発の敷地内について、規制委員会の責任でトレンチ掘削等を行うことを求める声明」(8月30日) http://genpatsu-jinken.net/movements/130831/

2013年9月3日

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