原子力安全・保安院宛て要望書:「放射能予報」を出してください──アクティブ試験に関するトラブル情報の基準・公表様式及び運転・放射能放出情報の公表様式の改善について

2006年5月16日
原子力安全・保安院長 広瀬研吉様

六ヶ所再処理工場のアクティブ試験では、使用済み核燃料のせん断・溶解に伴い、放射性物質(放射能)が主排気筒から大気中に放出されています。海洋へもすでに4月28日に、約600立米の放射性廃液が予告なしに放出されました。しかし日本原燃は、その600立米の廃液中にどのような核種がどれだけ含まれていたかについては、まだ公表しようとしていません。

また、日本原燃は早くも4月11日早朝に溶解槽セル内で漏洩事故を起こしましたが、その公表は約1日半後の翌日午後3時になって初めてなされたため、報道関係からも批判が上がっています。さらに4月23日にも、洞道内で漏えいを発見しましたが、これも翌日に公表しています。この洞道内漏えいの調査について、5月1日は「休日」として公表せず、5月2日に調査結果を公表しています。その中で「洞道内の配管からの漏えいではないものと判断」し、「低レベル廃液貯槽等から混入したものと考えられます」と予測しているものの、どの貯槽かの特定はできておらず、「引き続き、原因究明のための調査を継続する」ことにしました。そして結局、原因不明のまま、5月3日からせん断作業を再開しています。しかも、その状況の公表は連休明けの5月8日まで行いませんでした。このようなやり方に私たちは強い憤りを覚えざるを得ません。

これらトラブルの状況に私たちは注目しています。同時に、試験の日常的な進行に伴って、放射能が大気中にいつどれだけ放出され、どの方向に流れていくか、また海洋へいつどれだけ放出されるかは、私たちの重大な関心事です。

日本原燃はトラブル情報、試験の運転状況及び放出放射能の測定結果などをホームページ上で公開しています。しかし、現在の公表基準(公表区分)や公表様式には下記に述べるような多くの欠陥があるため、実態を的確に把握することができません。

そのため、下記の点についてぜひ改善するよう強く指導していただくことを、貴職に要望いたします。

下記の要望事項のそれぞれについて、回答を文書で5月26日までに寄せてくださるよう要請します。

要望事項

1.4月28日に海洋に放出した約600トンの廃液中に含まれていた放射能量(Bq単位)を核種ごとに直ちに公表すること

2.放射能放出に関する予告をテレビ・ラジオ・新聞などを通じて行うこと

現在、放射能の放出は予告なしで行われているため、後になって結果を知ることしかできません。天気予報ではあらかじめ雨が降ると知ることができるからこそ、傘の用意もできるのです。

大気への放射能については、何時に放出され、どの方向に流れていくかをあらかじめ知ることができれば、子どもを外で遊ばせないなど対策をとることもできます。放射能が放出される時間とそのときの風向き予測について、テレビ・ラジオ・新聞などを通じて周辺住民に広く知らせ必要があります。特に周辺の保育園や幼稚園、小中学校などには直接知らせるようにするべきです。

また、海洋への放出については、あらかじめ放出時間が公表されれば、船などは放出口付近や海流の下流を避けて通ることができます。海岸で子供が遊ばないようにすることもできます。漁業組合や海岸近くの学校などには放出時間を直接知らせるべきです。

3.トラブル情報の公表基準(公表区分)を改めること

4月11日の午前4時前に、溶解槽内で約40リットルの液体が漏えいしましたが、この事実が公表されたのは翌日の午後3時でした。ほぼ1日半も経過してからです。この方式は、青森県・六ヶ所村と日本原燃との間の協定に基づく「六ヶ所再処理工場におけるアクティブ試験等の係るトラブル等対応要領」(以下、「対応要領」)に基づくものだということです。それによれば、1リットル以上100リットル未満の漏えいの場合は「原則として翌日の午後にホームページに掲載」となっています。

しかし、今回漏えいした40リットルは100リットル未満であるとはいえ、その中にはあらゆる種類の放射能が含まれ、例えばプルトニウムは年間に環境に放出する量に匹敵するほどが含まれていました。もし原発であれば、このような漏えいは大問題になるところです。すぐに公表してはならない理由が何かあるとでもいうのでしょうか。たとえ100リットル未満の漏洩量であっても、直ちに公表するように改めるべきです。

4.情報の公表について「休祭日」を設けないこと

前記「対応要領」には、トラブル情報の公表及び運転情報の公表について、「ただし翌日が休祭日の場合には翌勤務日に掲載」とのただし書きがあります。例えば、5月1日は運転情報の公表がなされていませんが、日本原燃ホームページ上のカレンダーでは5月1日は赤い字、つまり休日扱いになっています。土曜日も休祭日に入れているようで公表は休みになっています。いったい、土曜日や5月1日を休祭日の範疇に入れることをどこで決めているのでしょう。

試験は土日にも行われ放射能も放出されているのに、公表の方は土日は休みのため、例えば4月10日(月)の分を開けると、4月6日(木)17:20〜9日(日)17:20の進行状況が書かれています。つまり、木曜17:20以降の進行状況は告ぎの月曜のそれも午後3時ごろにならないと知ることができません。

もしどうしても公表に休祭日を設けるのであれば、試験自体も休祭日は行わないようにするべきです。試験を毎日行うのであれば、公表も毎日行うようにするべきです。

5.パソコンを持たない周辺住民にも状況が分かるような公表方法を採ること

前記「対応要領」では、公表区分の欄に「ホームページに掲載」と限定的に書かれています。しかし、ホームページでの公表は、パソコンをもたない多くの人たちにとっては何の益にもなりません。それゆえ、例えば、日本原燃PRセンターや青森県及び六ヶ所村の情報コーナーに常時のモニタデータを貼り出すこと、同時にそれをファイルして翌日以降も常時閲覧できるようにすることが必要です。さらに、それらデータに解説を付けた印刷物を各戸配布すること、ポスターにして公共機関等に貼り出すことなどが必要です。

6.施設の排気筒ガスモニタ及び排水モニタについて──放出放射能量の測定データをBq単位の数値で示し、過去にさかのぼって見られるようにすること

放射性物質(放射能)の放出量に関する測定は、気体については主排気筒A1ガスモニタ、液体については第1放出前貯槽排水モニタ(R)によって行われていますが、この公表の仕方には次のような欠陥が見られます。

  1. 単位がcpm(1分当りの放射線計測数)で公表されているだけで、放射能(Bq)で公表されていません。年管理目標値はBq単位なので、これではまったく不十分です。cpm単位だけでなく、cpm単位をBq単位に換算した放射能の数値も公表するべきです。
  2. 大気放出については、濃度(Bq/m3)についても1分ごとの数値で公表するべきです。また海洋放出については、放射能放出量(Bq)と放射能濃度の両方が分かるようにするべきです。
  3. 排気筒ガスモニタの数値が図内に表示されていますが、10分で次の数値に変わってしまい、過去の数値を見ることができません。せめて1週間分は数値を見ることができるようにするべきです。
  4. 風向、風速のデータも10分で入れ替わってしまいます。これらも測定値の数値と込みにして過去にさかのぼって見られるようにするべきです。
  5. 測定値のグラフは1週間前までさかのぼって見ることができますが、グラフのメモリが余りにも大きいために、実データをほとんど把握することができません。例えばいまの200分の1程度のメモリでのグラフを別に描くべきです。

7.敷地周辺の空間放射線量率及びガスモニタについて──敷地周辺モニタ・データを過去にさかのぼって数値で見られるようにすること

(1)図示について

  • モニタリングポストMP1〜MP9などでの空間放射線量率計(nGy/h)やガスモニタ(cps)の図示について、測定データの数値や風速、風向データが10分ごとに変わり、過去を見ることができません。
  • ガスモニタの数値(cps)は、クリプトン濃度(Bq/cm3)に換算して示すべきです。

(2)グラフについて

MP1〜MP9のグラフ(nGy/h)は、メモリが大きいのと、9つのグラフが混在するのとでほとんど読み取れません。濃縮・埋設事業所のMP1〜MP3及び3つのMS局のグラフ(nGy/h)についても同様の欠陥があります。

(3)数値表について

数値表では数値を見ることができますが、2時間分だけで過去を見ることができません。せめて1週間分は見られるようにするべきです。

8.敷地周辺ダストモニタについて──せめて1週間ごとの最大値と平均値を公表すること

ダストモニタについては、全アルファと全ベータについて、1ヶ月間の濃度の最大値だけを示すことになっていますが、せめて1週間ごとの最大値と平均値を公表するべきです。

9.放出状況について──気体及び液体の核種の放出量データをより細かく公表すること

  1. 気体の核種放出量については、Kr-85,H-3,C-14,I-129,I-131、α核種、その他の非α核種について、1ヶ月間の放射能放出量(Bq)を公表することになっています。ところが、原発では1週間ごとの放出量及び平均濃度を数値で公表しています。原発よりはるかに多くの量を放出するのだから、濃度も含めてせめて1日ごとに公表するべきです。
  2. 液体の核種放出量については、H-3,I-129,I-131,α核種、その他の非α核種について、やはり1ヶ月分の放射能放出量(Bq)を公表することになっています。液体の場合は、廃液を恒常的に放出するのではなく、断続的に放出します。それゆえに、放出するごとに、放出時間、放出量、放出濃度を核種ごとに公表するべきです。

2006年5月16日

申し入れ団体
花とハーブの里
核燃から海と大地を守る隣接農漁業者の会
核燃料サイクル阻止1万人訴訟原告団
再処理工場について勉強する農業者の会
ピースランド
三陸の海を放射能から守る岩手の会
みどりと反プルサーマル新潟県連絡会
グリーンピース・ジャパン
フェミン婦人民主クラブ
福島老朽原発を考える会
東京電力と共に脱原発をめざす会
浜岡原発を考える静岡ネットワーク
核のゴミキャンペーン・中部
放射能のゴミはいらない!市民ネット岐阜
グリーン・アクション
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会

連絡先
花とハーブの里
〒039-3215 青森県上北郡六ヶ所村倉内笹崎1521 菊川方
Tel/Fax: 0175-74-2522

美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
〒530-0047 大阪府大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3F
TEL06-6367-6580/FAX06-6367-6581
67-6580/FAX06-6367-6581