福井県原子力安全専門委員会への公開質問・要望書

福井県原子力安全専門委員会への公開質問・要望書

人々を重大事故の崖っぷちに導くような
4閣僚の判断基準はけっして認めないでください

福井県知事西川一誠様
福井県原子力安全専門委員会委員 各位様

野田総理と3閣僚は4月6日に、「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」を決定し、関西電力に大飯3・4号機に関する工程表を出すよう指示しました。
http://www.meti.go.jp/topic/data/120406-11.pdf
関西電力は4月9日に工程表をだし、4閣僚はその日のうちにそれをおおむね基準に適合していると認め、近く関係閣僚会議を開いて再稼働妥当との判断を示すとされています。こうして、大飯3・4号機の再起動をめぐる判断が福井県などに求められる状況になってきています。
そうなると、貴委員会におかれても、次の点に関する判断が求められるのではないでしょうか。

  1. 4閣僚の判断基準は、大飯3・4号機の再稼働に関する安全性判断の基準としてふさわしいものと言えるのかどうか。
  2. 4閣僚の判断基準を仮に認めた場合、大飯3・4号機はその判断基準を本当に満たしていると言えるのかどうか。
  3. これらの点について私たちは、強い疑念を抱いています。4閣僚の判断基準は、安全性の判断基準とはほど遠いどころか、いままでの安全を担保する考え方から著しく後退させるものであり、むしろ逆に重大事故に導くものではないかとの疑念を抱いています。しかも、この判断基準は大飯3・4号機に限らず、すべての原発に関わる普遍的な性格をもっています。それゆえ、判断基準への評価はきわめて慎重を期すべきだと考えます。
    そこで、4閣僚の判断基準への疑問を、質問事項として貴委員会に提起しますので、それに対する見解を明確に示してくださるよう要請します。

4閣僚の判断基準への疑問

4閣僚の判断基準は3点あり、それぞれについて下記のような疑問があります。
(1)基準(1)は、地震・津波による全電源喪失という事象の進展を防止するための30項目の安全対策が既に講じられていることです。これら対策の有効性は、第1章の「事故原因及び事象の進展に関する『基本的な理解』」を前提にしていると考えられます。

  • 疑問1.地震によって、たとえばタービン動補助給水系の給水管または蒸気管が破損すれば、たとえ30項目の対策が立てられていても、炉心溶融は防げないのではないでしょうか。
  • 疑問2.対策の基礎となるべき福島第一原発事故の実態と原因は未解明なのではありませんか。
    対策の基礎には、地震によってけっして機器・配管等は破損しないという前提があり、そ の前提の根拠は、福島第一原発では地震による配管等の破損はなかったという「基本的な理解」にあります。しかし、その「理解」は、基本的に耐震解析に基づいているだけで、実態調査はなされていません。むしろ地震によって配管が破損した兆候が、たとえば1号機で3月11日の17:50に原子炉建屋入り口で強い放射線が存在したことで示されています。そのことは政府の事故調査・検証委員会の中間報告でも、「この時点で,1号機R/B(引用者注:原子炉建屋)やその付近において,通常より遙かに高い放射線量が指し示された原因は,原子炉圧力容器内の核燃料から通常よりも多くの放射性物質が放出され,それが建屋内に漏えいしたということ以外に考え難い」と記述されています(104頁)。福島第一原発で地震によって配管等が破損しなかったという実態確認は未だなされていないのではないでしょうか。この点、保安院自体が「まだ分からない」と認めていることを付記しておきます。
  • 疑問3.対策の中できわめて大きな疑問になるのが、対策の中で基本的に重要な役割をもつ はずの空冷式非常用発電装置の配備場所です。配備される道路の背後は急勾配の斜面であり、ここはこれまでにも崩れた疑いがもたれています。また、2月29日付関西電力報告書のA断面図によると、4号機原子炉建屋との間が土砂に埋まることから、すぐ傍にある発電装置が配置される場所も同様になると予測されます。
    http://www.kepco.co.jp/pressre/2012/__icsFiles/afieldfile/2012/02/29/0229_1j_01.pdf
    さらに、想定されている地震動は700ガルですが、関西電力が活断層3連動の場合に想定している760ガルの揺れで崩れることはないのか、さらにクリフエッジとされる1260ガルの場合はどうかなどの検討はなされたのでしょうか。

(2)基準(2)は、福島第一原発を襲ったような地震・津波が来襲しても、同原発事故のような燃料損傷には至らないことを国が確認していることです。ここでは、どのような地震や津波が想定されるのか、また、「同原発事故のような燃料損傷」とは要するに炉心溶融のことだと考えられますが、なぜ炉心溶融が安全性の判断基準となるのかが問題になります。

  • 疑問4.ここで想定する地震について、FoB-FoA-熊川断層の連動による地震は、未だ検討されていないのではありませんか。
    想定する地震については基準(2)の注2で規定されており、「複数の活断層の連動可能性等について論点が提起されている場合には、その可能性を考慮して地震動を保守的に評価し た場合の地震動の下でも、燃料損傷に至らないと判断されることが必要」とされています。FoB-FoA-熊川断層の連動による地震はまさにこの場合に当てはまり、原子力安全・保安院も3連動を評価すべきだと認めています。その場合、関西電力は揺れは760ガルだとしていますが、これは断層モデルだけの評価です。耐震設計審査指針に則して応答スペクトルと断層モデルの双方を検討して新たに基準地震動を設定し、それに基づいて制御棒挿入性などの耐震安全性が評価されるべきです。しかし、そのような評価は未だなされていないのではないでしょうか。
  • 疑問5.耐震安全をめぐる基準は、クリフエッジの炉心溶融ではなく、従来の耐震安全評価 基準におくべきではないでしょうか。炉心溶融を判断基準にするのは、福島事故を逆手にとって、従来の安全性基準をないがしろにするきわめて危険な考えではないでしょうか。
    大飯3・4号機の耐震安全性で最も厳しい評価状況にあるのは制御棒挿入性で、評価基準値2.2秒に対して評価値が2.16秒と余裕が2%しかありません。活断層の3連動の場合、仮に過小評価の760ガルだとしても、評価値は評価基準値2.2秒を超えるのは確実です。そのためか、この従来の評価基準値を捨て去って、いきなりクリフエッジの1260ガルより低いから問題ないという「基準」が持ち出されています。評価基準値の2.2秒は、燃料被覆管は1200℃を超えてはいけないという点を判断基準として(「軽水型動力炉の非常用炉心冷却系の性能評価指針」)、それより相当手前の仕様を評価基準値とした安全側の考えです(「制御棒挿入による原子炉緊急停止に係る安全余裕に関する検討について」2009年2月27日原子力安全委員会、原子炉安全専門審査会)。
    http://www.nsc.go.jp/anzen/sonota/kettei/20090330_D15.pdf
    これに対して、今回の4閣僚の基準(2)は、事実上、燃料溶融に至る燃料温度2800°C、すなわち炉心溶融を基準にするという無謀な考えに立つものではないでしょうか。
  • 疑問6.津波高さは古文書の調査結果を待って想定すべきではないでしょうか。基準(2)では、津波の来襲に対しても燃料損傷が起きないことを要求しています。その場合の津波は注3で記述されているように、「15mの津波、あるいは、各発電所の想定津波高さより9.5m以上の高さの津波に耐えられることを求める」という、たいへん奇妙な想定になっています。なぜ、実際に起こりえる津波高さを評価しないのでしょうか。この点、未だ古文書の津波追加調査が終了しておらず、丹後半島の調査はまったく手が付けられていません。これらの結果を待ち、それに基づいて津波高さを想定すべきではないでしょうか。

(3)基準(3)は、「更なる安全性・信頼性向上のための対策の着実な実施計画が事業者により明らかにされていること」等です。

  • 疑問7.なぜ必要で重要な対策なのに運転開始前の実施を求めないのでしょう。例えば、フィルター付きベント設備や免震事務棟の設置は15年度中なので3年後になります。その間に福島第一原発のような事故が起こればどうなるのでしょうか。

質問事項

上記の7項目の疑問点について、知事と貴委員会はどのような見解であるのか、これら疑問点を質問事項としますので、広く市民が理解できるよう明確な回答を示してください。

要望事項

従来の安全性基準を踏みにじり、人々を重大事故の崖っぷちに導くような、4閣僚の判断基準はけっして認めないでください。

2012年4月11日

グリーン・アクション
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