要望書:福井県と福井県原子力安全専門委員会への要望書

FoB-FoA-熊川断層の3連動を考慮するよう国と関西電力に要求してください

従来の耐震評価を引き下げることは断じて容認しないでください

従来の耐震評価で3連動を認めれば、大飯3・4号機は運転できないことを確認してください

福井県知事 西川 一誠 様

福井県原子力安全専門委員 各位様

大飯3・4号機の総合的安全評価(ストレステスト)1次評価について、原子力安全委員会は 3月23日にわずか5分の会議で、原子力安全・保安院の審査書を基本的に妥当と認めました。 同時に、その総合的安全評価は、「何らかの基準に対する合否判定を目的とするものではなく」と しています。2月20日に貴委員会は、「ストレステストの結果だけで判断することはない」とい う点を繰り返し保安院に確認されましたが、安全委員会の総合的安全評価(ストレステスト)は 大飯3・4号機の安全性を確認したものではないということ、まさにこのことが安全委員会自身 によって公認されたのではないでしょうか。
では、再稼働の判断基準はどのようなものかが改めて問題になってきます。その問題を端的に 含み、安全性にとってきわめて重要な問題として、大飯原発のすぐそばを通る活断層、FoB- FoA-熊川の3連動問題が大きく浮上してきました。連動性を検討するようとの1月27日付 保安院指示を受けた関西電力は、2月29日に報告書を出しましたが、その中で連動を考慮する 必要はないとの考えを示しています。
しかし、これを受けた3月6日と12日の保安院の地震・津波に関する意見聴取会では、連動 は当然考慮すべきだとの強い意見が 4 名の専門委員すべてから出されました。福井県の厚生常任 委員会などでも連動を考慮せよとの意見が出されています。それでもなお関電は連動を考慮する ことに強い抵抗を示しています。ところが同時に、次の3つの場合を想定してそれに備えようと もしています。その際、機器の現行耐震評価で最も余裕のない制御棒挿入性が端的な問題として 扱われています。

  1. 関電は3連動を考慮する必要はないことを基本としている。
  2. 「念のため」3連動を考慮しても、ストレステストの合格基準である1.8Ss(クリフ
    エッジ)を下回ることから、「問題がないことを確認しました」と称している(関電の2
    月29日付「参考」)。ただし、「問題がない」の意味は規定されていない。
  3. 現行評価方式では、3連動した場合の制御棒挿入時間の評価値は、評価基準値(許容値)
    2.2秒を超えるのは確実。そのため、3連動しても評価基準値内に納まるよう、現行の 計算方式の方を変更している。すなわち、Ssでの制御棒挿入時間の評価値は、現行(バ ックチェックの中間報告)では2.16秒なのを1.88秒にまで引き下げている。

このように、安全性に関わる判断基準においても、ストレステストの基準1.8Ssを前面に 出しつつも、他方では耐震評価基準をも満たすようにせざるを得ないと考えているようです(詳 しくは、別紙の説明資料を参照してください)。

上記(3)で述べた1.88秒は、3月13日の原子力安全委員会・総合的評価検討会(第5 回)で初めて表面化したものです[参考資料1]。これは驚くべき得手勝手な改ざんではないでし ょうか。そもそも2.16秒は、これまでの耐震バックチェックの中間報告の中で慎重に検討さ れ確認されてきた値のはずです。貴委員会でも、2009年12月21日の会議に出された資料 No.2-4の33頁に記述されています[参考資料2]。これに対し1.88秒は、まだ保安院 に報告さえされていない数値で、単に口頭で関電から聞き取っただけのものにすぎないことは保 安院に直接確認しています。3月13日の検討会の場で、この問題を質問した久木田委員からさ え何も疑問が出されなかったこと(速記録)は、非常に不可解なことだと言わざるを得ません。

このような事情を考慮して、以下の点を貴委員会に要望します。よろしくご検討くださるよう お願いいたします。

要望事項

  1. FoB-FoA-熊川断層の3連動を考慮するよう国と関西電力に要求してください。
  2. 東北地方太平洋沖地震では、3つの断層破壊が連動したことから、あの悲惨な福島原発事故 が発生しました。この事実を踏まえて1月27日の保安院指示は出されているはずです。熊川 断層を含む3連動を考慮しないままの安全性評価では、誰も納得できないでしょう。

  3. 従来の耐震評価を引き下げることは断じて容認しないでください。
  4. 関西電力が口頭で保安院に伝えたという制御棒挿入時間の評価値1.88秒は、従来の耐震 バックチェックで確認されてきた2.16秒を不当に引き下げるものです。しかも、それは保 安院に報告さえされていないもので、耐震評価のどの位置にくるのか明らかではありません。
    福島原発事故を踏まえた現在では、耐震安全評価は厳しい方向に改訂するべきなのに、この ような甘い方向への引き下げなど、けっして許されるものではないと考えます。
    このような関電と保安院の癒着体質は、福島原発事故の起こる前の安全神話の世界をほうふ つさせるものです。この姿勢では、若狭で過酷事故が起こるのは避けられません。

  5. 従来の耐震評価に立って3連動を認めれば、制御棒挿入時間の評価値は評価基準値を超える こと、したがって大飯3・4号機は運転できないことを確認してください。

2012年3月24日
グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス 京都市左京区田中関田町 22-75-103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
大阪市北区西天満 4-3-3 星光ビル 3 階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581

付属説明資料1
付属説明資料2
参考資料1
参考資料2