21名の国会議員が「使用済みMOX燃料の処理の方策が具体的に明らかになるまでは、 MOX燃料の原発炉内への装荷を延期するべきです」との意見書を経産省に提出しました

使用済みMOX燃料の行き先が保証される見込みがなく、地元が核のゴミ捨て場になるのではないかという不安をぬぐい去ることができないことから、MOX燃料を炉内に装荷するのは当面見合わせるべきという趣旨の国会議員より経済産業省への意見書が、本日(6月16日)、国会内の経済産業省政府控え室を通じて二階経済産業大臣宛提出されましたのでお知らせいたします。 提出されたのは以下の衆議院、参議院合わせて21名の国会議員(敬称略)です。 相原久美子 (民主) 参 比例   阿部 知子 (社民) 衆 南関東 糸数 慶子 (無所属)参 沖縄   大河原雅子 (民主) 参 東京 大島 九州男(民主) 参 比例   金田 誠一 (民主) 衆 北海道 川田 龍平 (無所属)参 東京   菅野 哲雄 (社民) 衆 東北 喜納 昌吉 (民主) 参 比例   近藤 正道 (社民) 参 新潟 佐々木隆博 (民主) 衆 北海道  重野 安正 (社民) 衆 九州 下田 敦子 (民主) 参 比例   照屋 寛徳 (社民) 衆 沖縄 日森 文尋 (社民) 衆 北関東  福島 瑞穂 (社民) 参 比例 渕上 貞雄 (社民) 参 比例   舟山 康江 (民主) 参 山形 保坂 展人 (社民) 衆 東京   又市 征治 (社民) 参 比例 山内 徳信 (社民) 参 比例

経済産業省宛意見書の内容は、以下です。

表題:
経済産業省は、使用済みMOX燃料の処理の方策が具体的に明らかになるまでは、
MOX燃料の原発炉内への装荷を延期するべきです。

また、早急に使用済MOX燃料の行方について明らかにするべきです。
現状のままでは、MOX燃料を使用する原発が、永久に核のゴミ捨て場となってしまいます。

内容:
プルサーマル用のMOX燃料が今年秋から随時、佐賀県の玄海原発3号機、愛媛県の伊方原発3号機、静岡県の浜岡原発4号機の原子炉に装荷されようとしています。その後、福井県の高浜3・4号機、島根県の島根2号機にも装荷される予定です。さらに、宮城県の女川3号機と北海道の泊3号機についても、すでに国に申請書が出されています。しかし、使用済MOX燃料については、次に述べる状況にあるため現地には強い不安が広がっています。

使用済みMOX燃料の「処理の方策」は国から具体的に説明されていません

MOX燃料が原発の炉内に装荷されると3〜4年後には、使用済MOX燃料として炉内から取り出され、原発サイト外には搬出されず、サイト内に保管されます。(資源エネルギー庁・原子力立地・核燃料サイクル産業課森本課長の北海道議会での答弁「貯蔵する場所は発電所です」。2009年1月15日。)
「原子力政策大綱」(2005年10月)では、使用済MOX燃料の「処理の方策」は「2010年頃から検討を開始する」となっているため、いま現在、処理の方策は決まっていません。使用済MOX燃料がどこに搬出されるのか、現在国からは具体的に何も説明されていません。
使用済MOX燃料は高レベルの放射能を帯び、ウランの使用済燃料よりも非常に長期に高い熱を出し続けます。原発立地の自治体住民には核のゴミ捨て場になるのではないかという強い不安が広がっています。

地元自治体から国への質問・要請書が出されています

今まで次の自治体から使用済MOX燃料の処理の方策について国に質問書や要請書が出されています。
福井県からは1999年6月7日付で、当時の通産大臣に「使用済MOX燃料の処理方針を具体的に明らかにすること」が要請されています(具体的方策についての回答はなし)。
 島根県松江市(中国電力島根原発立地市)が資源エネルギー庁に2006年10月に出した質問書では、使用済MOX燃料を再処理する第二再処理工場の操業が「確実に実施される具体的な計画」を示すこと、その操業に遅れが生じた場合には、「使用済MOX燃料はどのように処理されるのか」を示すよう求めています。資源エネルギー庁の回答(2008年12月)では、具体的な方策は書かれていませんでした。松浦松江市長は、2009年3月16日に二階経済産業大臣に面会し、具体的回答を求めました。しかし大臣は「国として責任をもって取り組む」という答弁に止まりました。
静岡県からは2008年3月31日付国への要請書で「使用済MOX燃料の処理方策や高レベル放射性廃棄物の最終処分など、燃料使用後の処理に関する課題について、早期に検討し、着実に実施すること」と要請されています(具体的な方策についての回答はなし)。
 北海道からは2009年3月30日付国への要望書で、経産省に対し「使用済MOX燃料が泊発電所に長期間貯蔵され続けないよう、使用済MOX燃料の処理の具体的方策について、可能な限り速やかに検討を進めること」と求めています(具体的の方策についての回答はなし)。
 さらに、原発関係14道県で構成する「原子力発電関係団体協議会」から、直近では2008年11月14日付「原子力発電等に関する要望書」の中で、「使用済MOX燃料が、発電所に長期間貯蔵され続けないよう、処理体系を早期に決定すること」との要望が出されています。
 
プルサーマル計画実施直前になった今でも、国からは今後の使用済みMOX燃料の方策についてまだ何も具体的な回答は出されていません。

処理方策の検討を開始するための要件は遅れた状況にあります。

「原子力政策大綱」では、使用済MOX燃料の処理の方策に関する「検討の開始」は、「六ヶ所再処理工場の運転実績、高速増殖炉及び再処理技術に関する研究開発の進捗状況」等を踏まえて行うことになっています。
2006年の原子力立国計画では、六ヶ所再処理工場の操業開始と「もんじゅ」試運転再開は2007年に予定されていました。しかし、2008年版原子力白書も認めているように、進捗は遅れており、現実的な意味での「検討の開始」が遅れるのは必至の状況にあります。

使用済MOX燃料が搬入される第二再処理工場建設は高速増殖商業炉が成功することが前提条件です。

使用済MOX燃料は六ヶ所再処理工場ではなく、これから検討される第二再処理工場で再処理される計画です。そして使用済MOX燃料の行方は、六ヶ所再処理や「もんじゅ」の進捗状況に依存しています。さらに、現在年に約500億円もの研究開発費が国費から投入されている高速増殖商業炉の実現可能性と深く関わっています。
第二再処理工場は高速増殖商業炉が作られたときに再処理をする役目になっています。原型炉「もんじゅ」が約10年間運転継続し、その後に実証炉が建設され、何年も継続運転された後に、第二再処理工場の建設が始まることになります。
高速増殖炉の開発は今は「原型炉」の段階にありますが、原型炉「もんじゅ」は運転再開の目処が立たない状況にあります(2008年版原子力白書)。高速増殖炉の商業化の予定は今まで8回延期されており、当初の計画より既に80年遅れています。現在、実証炉建設の目処は全く立っていません。
 また、フランスでは高速増殖炉から撤退しており、米国でも建設方針を取りやめることが最近明らかにされました。
このような先の見えない高速増殖商業炉や第二再処理工場を頼りにして、使用済MOX燃料を地元に置くことは不条理なことです。このままでは、地元は永久に核のゴミ捨て場になってしまうという懸念を否定することはできません。

地元を永久に核のゴミ捨て場にする内規の結果は、原子炉等規制法に違反します。

原子炉等規制法第23条第2項によれば、事業者が原子炉を設置するためには「使用済燃料の処分の方法」について記載した申請書を主務大臣に提出しなければなりません。この点、1998年より前には「再処理の委託先の確定は、燃料の炉内装荷前までに行い、政府の確認を受ける」となっていました。
ところが、その後の設置変更許可申請書では「ただし、燃料の装荷前までに使用済燃料の貯蔵・管理について政府の確認を受けた場合、再処理の委託先については、搬出前までに政府の確認を受けることとする」という「ただし書き」が加えられ、これで許可されています(例えば、高浜原発では1998年5月11日付変更申請書)。さらに、2004年3月12日付の新たな内規「『使用済燃料の処分の方法』の確認について」によって、「ただし書き」における「政府の確認をうける」際の事務手続きを定めましたが、それによれば再処理の委託先が定まらない限り、委託先を届け出る必要はなく、結局使用済燃料を永久に地元に置くことが許されるのです。つまり、高速増殖炉計画が進まないときには、再処理の委託先であるはずの第二再処理工場は建設されないことになり、政府による委託先の確認は行われないことになります。
この場合、原子炉等規制法第23条第2項(「使用済燃料の処分の方法」の記載義務)に違反するような事態が生じることは否定できません。

 現在、六ヶ所再処理工場は運転が遅れ、「もんじゅ」の運転再開も目処さえ立っていない状況です。この遅れなどにより、使用済MOX燃料の行き先は保証される見込みが立っていない状況にあります。地元が核のゴミ捨て場になるのではないかという不安をぬぐい去ることはできません。
 このような状況で、MOX燃料を原子炉に急いで装荷する理由は見あたりません。それゆえ、MOX燃料を炉内に装荷するのは当面見合わせるべきだと考えます。

以上の理由から、
使用済みMOX燃料処理の方策が具体的に明らかになるまでは、
MOX燃料の原発炉内への装荷を延期するべきです。

2009年6月16日