プルトニウム燃料(MOX)計画は行く手を阻まれている(翻訳紹介)
米国では、解体核兵器から生ずるプルトニウムをMOX燃料にして原発で使用することが計画されています。しかし、デューク社がこの計画から撤退したことによって、エネルギー省の計画は事実上不可能となりました。
このことを伝えている「地球の友」の速報を翻訳して紹介しています。
また、この問題については、3月17日付のニューヨーク・タイムスでも「解体核兵器からのプルトニウム:原発の燃料として受け入れてもらうのは困難」という見出しで大きく報道されています(建設中のMOX工場の写真入り)。
Weapons Plutonium: A Tough Sell as Reactor Fuel
http://greeninc.blogs.nytimes.com/2009/03/17/weapons-plutonium-a-tough-sell-as-reactor-fuel/
プルトニウム燃料(MOX)計画は行く手を阻まれている
Plutonium Fuel Plan Hits Roadblock
地球の友(FRIENDS OF THE EARTH)
速報 2009年3月13日
http://www.foe.org/plutonium-fuel-plan-hits-roadblock
デューク・エナジー社の計画からの撤退によって揺さぶられる
エネルギー省のプルトニウム燃料(MOX)使用計画
MOX計画の将来は再び不確かに
エネルギー省は賛否両論の(MOX)燃料を
使用する原子炉がなくなったため
コロンビア(サウスカロライナ州)−困難に陥っている、余剰プルトニウムから作られる核燃料を使用するというエネルギー省(DOE)の計画は、その燃料を使用すると予測されていた原子炉がなくなったため、最近、深刻な打撃を受けた。
デューク・エナジー社は、ノースカロライナ州とサウスカロライナ州にある四つの原子炉で、賛否両論の混合酸化物燃料(MOX)を使用する契約を更新しなかった。そのため、この10年間次から次へと起こった問題でつまずいてきたこの計画が、今後継続出来るかどうか危うくなっている。
デューク社は、MOX使用計画は「2008年12月1日に自動的に終結した」と2009年2月27日に証券取引委員会(SEC)に提出した年次報告書の中で明らかにしている。デューク社が、MOX計画を実行するためにエネルギー省によって委託されたショー・アレバ・MOXサービス社(MOXサービス社)と行っていた契約の再交渉の試みが失敗したためである。デューク社は、「MOX燃料の使用のためにMOXサービス社から今後の提案を受け取ることに興味を持っている」と言ってきたが、今のところは、カトーバ原発(サウスカロライナ州)とマクガイヤ原発(ノースカロライナ州)での使用計画は終結している。
誤った、かつ高価であるMOX計画にとってのこの否定的な展開を踏まえ、「地球の友」は再び、「この計画にこんどこそ終止符を打つべきだ」と要求している。
「プルトニウム燃料を使用する原子炉の欠如と、この計画にまつわるこの十年間の進行中の諸問題を考慮すれば、連邦議会がサヴァナ・リバー・サイトで建築中のMOX工場の建設を中止し、終止符を打つ時期は既に来ている」とサウスカロライナ州コロンビアの「地球の友」および「サウスイースト・ニュークリア・キャンペーン」のコーデイネータであるトム・クレメンツは述べた。
エネルギー省の職員は、MOX使用の可能性について三つの電力会社と話し合っており、そして、デューク社も再び交渉に加わるかもしれない、と「地球の友」に述べている。テネシー川流域開発公社(TVA)はMOX利用に興味を持つかもしれないとはいえ、他の電力会社と同様、長時間を必要とする、燃料の使用を確証するMOX試験を行なわなければならない。
「他の電力会社は、デューク社の原発がMOX使用から撤退したことにまつわる出来事を、赤信号として受け止めるべきである。何故なら、問題の多いプルトニウム計画に参加すれば、リスクと障害に見舞われるであろうから」とクレメンツは述べた。
デューク社のカトーバ原発1号機でのMOX燃料先行試験が燃料集合体の異常な振る舞いにより失敗したこと、そしてその「先行試験の燃料集合体」は3サイクル(1サイクルは18ヶ月の照射)が必要であったが2サイクルだけで原子炉から引き抜かれたことを、「地球の友」と「憂慮する科学者同盟」は2008年8月に明らかにした。この試験は核兵器プルトニウムを使った(MOX燃料の)初の試験だったが、その失敗によって、原子力規制委員会(NRC)に燃料の性能を証明するのに必要な情報をエネルギー省に提出できなくなっている、とこれら二団体は主張した。
失敗した先行試験が、MOX計画から身をひくというデューク社の決定にどのような影響を与えたかは分からないが、失敗したMOX先行試験とそのプロジェクトの絶え間ない遅れによって、エネルギー省はMOX供給の確かなスケジュールを保証できず、たぶんそれがデューク社にこの燃料の使用を考え直させた。高純度の核兵器用プルトニウムから作られたMOX燃料は、これまで使用されたことはない。
この先行試験用のMOX燃料は、米国の解体核兵器のプルトニウムを使って製造された。解体核兵器プルトニウムはロスアラモス国立原子力研究所から運び出され、チャールストン(サウスカロライナ州)を経由して、フランスに送られ、今は閉鎖されているフランスのMOX工場(カダラッシュ)でMOX燃料に製造された。このような経過のため、さらにMOX燃料照射試験を54ヶ月かけて行うことは困難なことである。カトーバ原発の使用済み燃料プールに貯蔵されていた失敗した先行試験のMOX燃料集合体から、照射された燃料棒は取り外され、試験を行うためにオークリッジ国立研究所に送られたらしい。試験燃料の分析に関する情報は入手可能ではない。MOXを使用するのがどの原子炉であっても、試験は1サイクル18ヶ月の照射を3サイクル繰り返さなければならない。このことは、一層の不確実性、遅延およびコストの増大を引き起こすだろう。
プルトニウム燃料を使用する原子炉がないにもかかわらず、MOXサービス社は、34トンの「余剰」核兵器級プルトニウムからMOX燃料をつくるため、サウスカロライナ州のサヴァナ・リバー・サイト(SRC)に50億ドルの工場を建設するために納税者の金を使い続けている。
2009年3月4日、米国政府の会計検査院(GAO)は、「エネルギー省:国家核安全保障管理局と環境管理局における契約とプロジェクト管理上の問題」(http://www.gao.gov/products/GAO-09-406T)というタイトルが付けられた報告書を公表している。この報告書は電力会社へのMOX燃料の確実な供給に関する潜在的な諸問題を強調している。サバンナ・リバー・サイトのMOX工場に関して、会計検査院は次のように述べている:「このプロジェクトのスケジュールは、他の諸問題に加えて、十分に信頼できるスケジュールを確保するため必須である業務慣行を厳守していない。
とりわけ、MOX燃料製造施設(MFFF)プロジェクトのスタッフは、統計的手法を用いて、それらの現在のスケジュールについてリスク分析を実施していない。・・・従って、国家核安全保障管理局(NNAS)は、MOX燃料製造施設(MFFF)プロジェクトの完成日についてその信頼度を十分に述べることができないし、それ故、そのプロジェクトに関するNNSAのスケジュールは信頼できない可能性がある」。だから、燃料供給のための信頼できるスケジュールを必要とする電力会社は、その必要性が満たされうるのかと、神経質になっている。
「地球の友」はエネルギー省の職員から次のような情報も得ていた:DOEはデューク社に、MOXの供給スケジュールが間に合わない場合には従来の濃縮ウラン燃料(低濃縮ウラン:LEU)を供給すると提案した。しかしデューク社のMOX契約が期限切れになる12月1日までに、LEU燃料に関する交渉はいい結果を生まなかった。
デューク・エナジー社は2009年2月27日に証券取引委員会に「Form 10-K」の年次報告書を提出した。[訳注:Form 10-Kは日本の有価証券報告書にあたるもの]
http://idea.sec.gov/Archives/edgar/data/1326160/000119312509041096/d10k.htm
「1999年に、デューク・エナジー・カロライナは、マクガイヤとカトーバ原発で使用するMOX燃料を購入するために、ショー・アレバ・MOXサービス社(MOXサービス社:以前のDuke COGEMA Stone & Webster, LLC)と契約を結んだ。契約によると、2007年からMOXサービス社は、サウスカロライナ州エーケンにあるエネルギー省のサバンナ・リバー・サイトで建設中の施設で、余剰核兵器からのプルトニウム備蓄でMOX燃料をつくることになっている。MOX燃料は従来のウラン燃料に似ている。NRCの調査と認可を受けた後、フランスで製造された先行試験用の4体のMOX燃料集合体がカトーバ原発1号機で2サイクル(およそ3年間)照射された。2008年、デューク・エナジー・カロライナ社とMOXサービス社は、2008年12月1日の契約満期に先だって、その契約の諸条件を再交渉するために議論していた。当事者達は合意に達することはできず、その契約は2008年12月1日に自動的に満期となった。デューク・エナジー・カロライナは、余剰核兵器処理プログラムの目的を今後も支持し、MOX燃料の使用のためにMOXサービス社から将来の提案を受け取ることに興味を持っている、とMOXサービス社に伝えていた。」(14頁)。
注:
デューク社のカトーバ原発で失敗したMOX先行試験に関する、「地球の友」(FOE)と「憂慮する科学者同盟」(UCS)の2008年8月4日のニュース・リリース:http://www.foe.org/nuclear-fuel-test-failure-raises-concerns
http://www.ucsusa.org/news/press_release/nuclear-fuel-test-failure-0140.html
デューク社カトーバ原発で失敗したMOX先行試験に関するUCSとFOEの4頁の解説記事−「アレバの燃料集合体試験の失敗は、エネルギー省のMOX燃料試験の破滅を運命づける」−請求すれば入手可能。
[訳注:日本語訳は下記でみることができる]
http://www.greenaction-japan.org/modules/wordpress/index.php?p=350
http://www.jca.apc.org/mihama/world/ucs080804.htm
デューク社がNRCに提出した2008年6月10日の報告書は、NRCのホームページのADAMS電子ライブラリーへ行き、「ML081650181」で探索できる。この報告書は、失敗したMOX試験について初めて公に言及している資料。
http://www.nrc.gov/reading-rm/adams/web-based.html
燃料集合体の異常な膨脹問題を検討しているアレバ社の2008年4月の説明は、NRCのホームページのADAMS電子ライブラリーへ行き、「ML081300390」で探索できる。
ショー・アレバ・MOXサービス社の2008年10月18日の懇願−、さらに多くの原発でMOXを使用することを求める「米国の全ての原発を所有する電力会社へ」−請求すれば入手可能。
翻訳:グリーン・アクション/美浜の会