大飯3号機の原子炉容器出口管台溶接部の深さ約20mもの大きなくぼみを残したままでの運転を認めないでください 要望書

 10月21日、大阪・京都・兵庫の市民団体8団体は、福井県庁にて、くぼみを残したままでの大飯3号機の運転再開を認めないよう申し入れました。申し入れには福井県民も参加されました。原子力安全対策課の櫻本課長は、「技術基準は守らなければならない」と発言されました。
(要望書を提出した8団体:さよならウラン連絡会/日本消費者連盟関西グループ/脱原発へ!関電株主行動の会/くらしを見つめるひととき/毎月26日のランチタイムに関電前に集まる女たち/原発の危険性を考える宝塚の会/グリーン・アクション/美浜の会)

「(技術基準の)53�を割り込んでもすぐに問題が起こるわけではない」(関電広報10月8日)
あれほど繰り返した「コンプライアンス」の姿勢などみじんもありません

大飯3号機の原子炉容器出口管台溶接部の
深さ約20�もの大きなくぼみを残したままでの運転を認めないでください

要  望  書

福井県知事 西川一誠 様
2008年10月21日

 関西電力は、大飯3号機の原子炉容器出口管台溶接部で見つかった深さ20.3mmにも及ぶ応力腐食割れについて、研削後のくぼみを補修することなく、11月上旬にも運転を再開すると表明しています。
 私たちは、このような前代未聞の補修なしの運転再開について、なんと危険な運転をするのかと危惧すると同時に、このような運転が許されてはならないと強く感じています。
 私たちは10月8日に、大阪市内で関西電力と交渉を持ち、この大飯3号機の問題をとりあげました。関西電力の資料では、くぼみ部分の肉厚は53.6mmで、この部分の必要最小肉厚は53mmとなっており、技術基準を割り込むまでにわずか0.6mmしかありません。11ヶ月の運転中に、ひび割れが発生・進展し、技術基準を割り込む可能性を否定することはできません。
 関西電力は、「ウォータージェットピーニングを実施するので、傷の発生は防げると思う」と希望的観測を述べるばかりでした。しかし、大飯3号機の約20mmにもおよぶ傷を、関電は当初「傷の深さが評価できない非常に浅いもの」と評価していたように、UT(超音波探傷検査)の性能には限界があります。関西電力の評価では、UTでは約3mm以上の傷でなければ確認できないこと、さらにECT(渦電流探傷検査)でもo.5mm以上の傷でなければ傷の有無を確認できないとしています。このことは、既に現在でも溶接部には微少な傷が存在する可能性を示しています。また、関西電力が述べるUTやECTの精度は、平面上での測定の場合であり、くぼみ等の変形部位で、同様の精度が確保できるか疑問です。「ウォータージェットピーニングを実施」しても、微少な傷の発生・成長を完全にくい止めることはできません。
 わずか0.6mm以上に傷が進展すれば、技術基準に違反した違法な運転となります。そのような可能性があるにもかかわらず、運転を再開するなどもってのほかです。関電は交渉の場で、「(技術基準の)53mmを割り込んでもすぐに問題が起こるわけではない」などと語り、あれほど繰り返していた「コンプライアンス」(法令順守)の姿勢など、みじんもありません。
 8日の交渉で関西電力は、原子炉容器の上蓋管台部での貫通までの時間について「5万〜50万時間」(約5.7〜57年)と自らの評価を紹介し、これは、原子炉容器管台部についても同様だと述べました。わずか6年余りで貫通するという可能性を自ら評価しながら、これら部位の検査は約10年に1回という状況です。これでは、貫通割れ事故が起こる危険性が十分あります。
 大飯3号機のひび割れは、原発の心臓部である原子炉容器の管台溶接部で生じているものです。放射線も強いため補修は困難を極め、下請け労働者に多大な被曝を強要します。補修方法そのものも確立していないため、補修を次回定検に先延ばしにしていますが、補修方法やそのための工具が1年で確立されるという確たる見通しはありません。
 ただただ原発の稼働率を上げるためだけに、くぼみを残したままでの危険な運転を強行しようとしています。美浜3号機事故、鉄塔倒壊事故により死者まで出した関電の姿勢は、やはり現在も、安全性をないがしろにするものです。補修や取替が不可能な場合は、国の技術基準を満足することはできず、運転を停止するべきです。
 そもそもこの大飯3号機は異例ずくめです。削っても削ってもひび割れが続いていたため、技術基準に基づく必要肉厚を薄く変更し、さらに、それでも傷が深いため、傷の部分だけさらに必要肉厚を薄く変更し、一つの部位で2つも必要肉厚が存在するという強引な手法をとりました。このようなやり方自体が国内では初めてのことです。このまま大飯3号機の運転再開を認めれば、この異例の手法が常套手段と化し、危険な運転が平然と行われる事態になることが強く懸念されます。
 国内PWR原発では、インコネル600製部材の一次系配管・溶接部で応力腐食割れが多数発生しています。今回、大飯3号機でくぼみを残したままでの運転を認めれば、今後、他の原発でも同様の危険な運転が繰り返されることが懸念されます。
 大飯3号機は2004年の美浜3号機事故直前に、原子炉容器上蓋管台(インコネル600製)で貫通割れが生じていました。この貫通割れ事故で、インコネル600製の他の部位を検査しておれば、当時でも今回の傷は発見できたはずです。その意味でも、関電の安全管理の責任が問われるべきです。
 そもそも、なぜ大飯3号機のAループで深刻な応力腐食割れが生じたのか、その肝心の原因が特定されていません。関西電力がまずやるべきことは、徹底した原因究明です。

要  望  事  項

大飯3号機の原子炉容器出口管台溶接部の
深さ約20mmもの大きなくぼみを残したままでの運転を認めないでください。

2008年10月10日

グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581