日本原燃の耐震設計ミスに関する青森県知事への要望書:原燃は自ら日立に提示要求した入力データの妥当性確認を行わなかった──この新たに判明した事実が示す原燃等の姿勢の欠陥を重視されアクティブ試験を中止するよう意思表明してください

2007年6月22日
青森県知事 三村申吾 様

日本原燃の耐震設計ミス問題について、私たちの6月15日の原燃交渉において、重要な事実が新たに明らかになりました。アクティブ試験に入る前提を確認するはずの2005年10月18日付保安院指示に基づく入力データ点検において、

  1. 原燃は日立に、入力データが印刷された出力シートを提示するよう要求していました。
  2. ところが日立はその要求に従わず、入力データと出力データを別々に提示していました。
  3. 原燃はその報告をそのまま受入れただけで、入力データの妥当性を確認していませんでした。


この事実は未だ原燃から公式に公表されず、保安院等でも検討されていません。
さらに、原子力安全・保安院は入力データの書かれていない原燃の設工認申請書を黙認したまま、再提示するようとの指示をしませんでした。
まず、これらの事実はアクティブ試験に入る前提条件が実は成り立っていなかったことを直接示しています。さらに、これらの欠陥にメスを入れないまま、「総点検」を繰り返しても同様の問題が起こるのは不可避であるがゆえに、アクティブ試験を継続する条件が満たされていないことを示しています。
貴職におかれてはこの問題を重視され、アクティブ試験を直ちに中止するよう端的に意思表明されることを要望いたします。
このような趣旨について、以下に詳細を述べます。

■保安院の2005年10月18日付入力データの点検指示は、アクティブ試験の前提を確認するためのものでした

今回発見された耐震設計ミスは、これまで数度の点検があったにもかかわらず発見をまぬかれてきています。その中でも、2005年1月〜2006年2月の点検は非常に重要な意味をもっていました。
2005年1月28日に原燃は、ガラス固化体貯蔵建屋で温度解析の虚偽があったことを公表しています。その虚偽は、解析コードや計算式の入力データのミスに関連していました。そこで保安院は、入力データのミスが他にないことを確認するよう改めて10月18日に指示をだしました。同時にその指示は、翌年初めにいよいよアクティブ試験が始まるため、その前提が成立することを確認するためのものでした。事実、保安院の古西課長は、アクティブ試験を前にして、「すべての膿みをだしきるよう、念には念を入れて、原点に立ち返って」点検するよう原燃に指示したと、2005年12月19日の第17回検討会で報告しています。
ところが、このときの点検でも、今回の耐震設計ミスは発見されませんでした。このことは、アクティブ試験に入る前提が実は成り立っていなかったことを意味しています。

■原燃は自ら日立に提示を要求した入力データの妥当性確認を行いませんでした

なぜ2005年の点検で設計ミスが発見できなかったかは、全体の経過の中でも重要な問題です。この点、日立から5月21日付で保安院に提出された報告書「参考資料4」の�-8頁にある次の記述に注目すべきでしょう。「その後、日本原燃殿からアクティブ試験前における設計再確認として、床応答スペクトル、及び解析コードへの入力データが印刷された出力シートの提示要求があった」(下線は引用者。以下同じ)。ここで「その後」とは、2005年1〜4月に「日本原燃殿に問題ない旨の結果を報告した」後のことで、保安院の指示が出た10月18日以後を指しています。それゆえ「その後」の点検は、まさしく「アクティブ試験前における設計再確認」を意味しているのです。
この日立の記述によって、原燃が入力データと出力(計算結果)の関係をチェックできるように、一つの出力シートに両方を書いて提示するよう、日立に要求していたことが分かります。しかし、結局日立が原燃のこの要求に応えたのかどうかは、日立報告書には書かれていません。
そのため私たちは、この点を質問書で原燃に問いただしていました。6月15日の交渉で出された原燃の回答は実に驚くべきものです。「日立から提出を受けたのは、入力データが印刷された出力シートではなく、入力データと出力データが別々のものでした」というのです。これでは、原燃の要求を日立は無視したことになります。
そもそも原燃は、保安院の指示に従って、入力データが正しく扱われているかを点検できるようにするために、出力データと同じシートに入力データを記入するよう日立に要求したはずです。ところが、原燃はこの本質的に不備な報告を黙って受け入れただけで、結局入力データの妥当性確認は行わなかったのです。この事実は、そのような点検をまじめに行う意思が元々原燃にはなかったことを示しています。
さらに、問題は保安院にも波及します。保安院は今年6月13日の検討会に提出した評価の4頁で次のように述べています。「本件耐震計算の誤りは、解析プログラムへの入力データに誤った値を入力したことに起因したものであり、かつ、その計算結果が見かけ上妥当なものであった(事業者から申請のあった設計及び工事の方法認可申請書においては、解析プログラムに実際に入力された入力値の記載はなく、計算結果のみが記載されている。)ことから、審査の過程において本計算の誤りを見つけ出すことができなかった」。ここで重要なことは、「計算結果のみが記載されている」ことで、要するに入力値が何も記載されていなかったことです。これでは、入力値の妥当性などそもそも確認のしようもないのだから、保安院はせめて2005年10月18日指示のときに設工認の再提出を命じるべきでありました。
結局、日立、原燃、保安院ともに、アクティブ試験を前にしながら、まじめに点検しようなどという意思はなかったということです。そのために今回の耐震設計ミスを見逃していたのです。このことが6月15日の原燃との交渉を通じて具体的に明らかになりました。

■アクティブ試験を中止するよう意思表明してください

これほどに重要な事実を原燃はいまだに一般に公表していません。保安院もこの事実を認識しないまま、前記6月13日の評価で「当院は、これら原因について事業者から提出を受けた報告を基に、日立からの報告も踏まえて評価した結果、事業者が実施した原因究明及び再発防止対策は妥当なものと考える」と述べています。そして原燃は、アクティブ試験を中止しないどころか、本格操業に予定どおり入りたいとまで表明しています。
もし、原燃が今回の事態を本当に反省するのであれば、まずはそのことをアクティブ試験の中止をもって示すべきではないでしょうか。そもそもアクティブ試験に入る前提は成り立っていなかったことが判明したのです。さらに、上記で明らかになったような日立、原燃、保安院の点検姿勢の本質的な欠陥にメスを入れないままでは、これからも重大な問題が起こることは必至です。それゆえ、アクティブ試験を継続する条件が成り立っていないことは明らかです。
住民の安全に直接責任をもつ貴職がこの新たな問題を検討され、アクティブ試験を直ちに中止するよう端的に意思表明されることを心から要望いたします。

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