日本原燃宛:六ヶ所再処理工場による青森県民の被ばく線量「0.022mSv」に関する質問書

2006年3月7日
日本原燃社長 兒島伊佐美様

 貴社の六ヶ所再処理工場からは大量の放射性物質(放射能)が大気と海に放出されます。貴社はアクティブ試験をめぐる説明会などでこのような放射能による被ばくは、「実効線量0.022mSvを規制値としているので安全」だと説明されています。

 しかし、その0.022mSvの基礎になっている放射能の放出量や挙動及び被ばくに関する貴社の評価には大きな疑問があります。また、なぜ希ガスなどは全量を放出するのかについても強い疑問を抱かざるを得ません。

 そのため、下記の質問を行いますので、3月14日までに文書でご回答くださるよう要請します。

1.クリプトン85はなぜ全量を大気へ放出するのですか

 貴社は「希ガス、炭素-14及びトリチウムの回収・固定化、貯蔵保管については、実用段階において総合的に実証された技術は確立されていない」(2001年(H13)7月変更申請書7-4-2頁)として、これらの核種については全量を環境中に放出することにしています。しかし、この貴社の記述はいまから15年も前の1991年(H3)7月の申請書からずっと修正されないままになっています。これまで除去技術開発のために、日本原子力研究開発機構(旧・核燃料サイクル開発機構)に多額の国家予算がつぎ込まれてきました(2003年までに約160億円)。それはいったい何のためなのか、強い疑問を抱かざるを得ません。

1-1.
クリプトン85の除去技術はすでに存在しているのに、なぜ六ヶ所再処理工場へ導入しないのですか。経済的理由によるものですか。
1-2.
除去技術を導入した場合の費用と、これらの核種を全量放出することによる人命へのリスクを金銭に換算した場合との比較を示してください。
1-3.
もしまだ何らかの理由でその技術が使えないということであれば、再処理工場の運転はやめるべきではないでしょうか。

2.炭素14はなぜ全量を大気へ放出するのですか

 炭素14はやはり上記のように全量を大気中に放出することにしています。そのため、例えば米1kg当たりに90ベクレルもの炭素14が入り込むことを貴社は認めています。しかしイギリスのセラフィールド工場では1990年代の初めからすでに炭素14の除去技術が適用されています。

2-1.
なぜ炭素14の除去技術を適用しないのですか。
2-2.
その技術を使う費用と、人命のリスクを金銭に置き換えた場合の比較を示してください。
2-3.
もしまだ何らかの理由で除去技術が使えないのであれば、再処理の運転はやめるべきではないでしょうか。

3.大気放出放射能の拡散評価で、ヤマセによる逆転層の影響を考慮しないのはなぜですか

 ヤマセによって上空に冷たい空気の層ができるとそれが逆転層となり、放出された放射能がそこで反射されて地表に戻されるような効果が生じます。

3-1.
このような効果についてなぜ考慮しないのですか。

4.海へのヨウ素放出量がラ・アーグの実績より非常に低く想定されているのはなぜですか

 放射性ヨウ素が大量に海に放出されると、海藻や魚介類で著しく濃縮されるために、それらを食べる人に大きな被ばく線量を与えます。ところが、六ヶ所再処理工場で想定されているヨウ素の海への放出量を、ラ・アーグでの放出量の実績(800トン再処理換算)と比較すると、なぜか、六ヶ所の方がヨウ素131で約29分の1、ヨウ素129で約20分の1と著しく低くなっており、それだけ被ばく線量の計算値が低く抑えられるようになっています。

4-1.
半減期が8日と短いヨウ素131は、基本的に高レベル濃縮廃液貯槽などで新たに発生するものですが、六ヶ所ではその大部分をそのまま海洋へ放出することになっています(申請書第4.2-3図)。それゆえ、放出量がラ・アーグより低いということは発生量自体が低いと見積もったことを意味しています。なぜ発生量がラ・アーグより低いのか、その理由を示してください。
4-2.
半減期が約1千6百万年もあるヨウ素129は、基本的に使用済み核燃料中から出てきます。その大部分が大気への経路に追い出され、残りが海洋に放出されることになっています(申請書第4.2-2図)。海洋放出分がラ・アーグより低いということは、大気経路への追い出し技術がそれだけ優れていることを意味します。フランスの技術に依拠しながらなぜそのような違いがでるのか、その理由を明らかにしてください。

5.三陸海岸への影響について具体的に評価したのですか

 貴社は申請書で、海流は等水深線に沿って流れると記述しています。三陸方面では、水深100mばかりか200mの等水深線までもが海岸のすぐそばを通っています。それゆえ、海洋へ放出される放射能の大部分は津軽暖流に乗って、三陸海岸に非常に近い親潮前線との間の狭い海域を流れていくことになります。放射能はリアス式の湾内に入り込み、そこに蓄積されるでしょう。

5-1.
そのような評価・解析を具体的に行っていれば、その資料を公表してください。
5-2.
これまで検出されなかったような放射性核種が、海産物から新たに検出されたり、海中放射能のバックグラウンド濃度が上昇したりする事態が起こる可能性については、どう考えているのですか。
5-3.
貴社として、三陸の海水、海底の堆積物や海産物などについて放射能モニタリングを行うことを具体的に考えていますか。放出前にあらかじめモニタリングしておくことが重要ではないでしょうか。

 

6.風によって海から陸へ放射能が運ばれる効果についてなぜ考慮しないのですか

 下北の海岸では、波が高く吹き上がる光景がよく見られ、夏場にはヤマセが海から陸に吹きます。イギリスでは海中の放射能が風で陸に運ばれ家の中からプルトニウムが検出されています。

6-1.
貴社の被ばく評価において、このような経路が考慮されていないのはなぜですか。

7.年々の放射能の蓄積をまったく考慮していないのはなぜですか

 貴社の被ばく評価では、1年分の放出放射能による被ばく線量が計算されているだけで、放射能が年々蓄積していく効果がまったく考慮されていません。

7-1.
大気中から土壌に降り積もるセシウムやプルトニウムなどが年々蓄積していく効果をなぜ考慮しないのですか。
7-2.
海岸や湾内の海底で放射能が蓄積していく効果をなぜ考慮しないのですか。

8.魚類における放射能の濃縮を過少評価しているのではありませんか

 貴社は魚類の濃縮係数を30としていますが、セラフィールドでの実態に基づく調査では、セシウムの濃縮係数は最大180と評価することができます。

8-1.
貴社の被ばく評価では、なぜ魚類の濃縮係数をセラフィールドより相当に小さくとっているのですか。

9.線量評価において食物の摂取量を低めにとっているのはなぜですか

 貴社の被ばく評価では、牛肉の摂取量を1日に6グラムとしています。ところが青森県は2月7日公表の資料で牛肉の摂取量を1日20グラムとしています。また、フランスなどでは、被ばく評価の対象として、典型的な食料摂取を想定したクリティカルグループ(決定グループ)を想定しているのに、貴社は平均的な成人を対象としているだけです。

9-1.
食料の摂取量を全面的に見直すべきではないですか。
9-2.
なぜクリティカルグループを被ばくの対象として想定しないのですか。魚を平均よりたくさん食べる人や肉をたくさん食べる高校生などではより被曝量が高くなるのではないでしょうか。

10.集団被ばく線量をなぜ考慮しないのですか

 被ばく線量の評価において、貴社は集団被ばく線量をまったく考慮していません。しかし特に希ガスなどの場合青森県ばかりか世界的な規模の被ばくが問題になるのは明らかです。イギリスでは皮膚ガンの具体的評価が公表されています。

10-1.
全操業期間にわたる集団被ばく線量を考慮した場合に計算される、ガン患者数とガンなどによる死亡者数を示してください。
10-2.
クリプトン85などの影響により皮膚ガンにかかるのは何名になりますか。

11.なぜ放射線に対する感受性の高い乳幼児への影響を見ないのですか

 乳幼児は細胞分裂が活発で、それだけ放射線の影響を成人よりも強く受けます。しかし、貴社の被ばく評価では成人だけを対象にしています。

11-1.
なぜ放出放射能が乳幼児に与える影響を特別に考慮しないのですか。乳幼児の被ばくによるリスクは成人と比べて高く、大きな被害をこうむる可能性があります。このままでは、注目されないまま放置される危険があるのではないでしょうか。

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