地震動の過小評価を許さない1・29院内集会・政府交渉

地震動の過小評価を許さない1・29院内集会・政府交渉
交渉報告204団体の署名質問書と資料

  • 武村式で地震動の再評価をするよう強く求める。204 団体で署名提出
  • 水素爆轟の可能性を指摘しクロスチェック解析を要求
  • 国が関与する避難計画は何も具体化していない

集会には約70名の市民が参加しました。再稼働審査が進む原発立地地域から佐賀の永野さん、愛媛の井出さん、福井の石地さん、Sing J Royさん等4名、北海道の安斎さん、新潟の金子さんが参加されました、関西、福島からも参加があり、原子力規制を監視する市民の会の専門家グループの滝谷さん、井野さん、後藤さん、そして福島みずほ議員にも参加いただきました。

◆地震動評価

冒頭、武村氏で地震動の再評価をするよう求める204団体の署名を提出しました。

政府交渉でまず問題になったのが、地震動評価の問題です。相手方は原子力規制庁の御田(みた)氏でした。同じ時間帯に規制委員会で行われていた審査会合を抜けてきたとのこと。安全管理官(課長クラス)の小林氏と、保安院時代から長年、耐震関係を担当してきた人です。

具体的な例として大飯原発の近くにあるFoA−FoB断層をとりあげ、同じ断層でありながら津波評価と耐震用基準地震動で、地震規模を示す地震モーメントやすべり量が津波評価の方が約4倍も大きいこと、その理由は適用する式が津波では武村式、基準地震動では入倉式と、異なっているためであることを確認しました。

このような二重基準をやめて、基準地震動評価にも「武村式」を使うよう要求しました。

手がかりとして、小林安全管理官が、12月18日の審査会合で、津波評価での具体的なすべり量2.91mを示し、これを基準地震動評価にも使うべきだと発言したことをとりあげ、これは事実上武村式を使うべきだという意味になると、その確認を迫りました。

その審査会合の場に居たという御田氏は、小林氏本人にも確認したが、あれは他の方法でもやってみてはどうかという意味で、武村式でやれといったわけではないと回答しました。テープ起こしをした文面を提示すると、顔をしかめていましたが、ほかにもいろいろな手法があるのでそれらも使うべきだとの意味だと、これはこれで重要な発言でした。

小林氏の真意はともかく、2.91mを使えと言ったというテープ起こしの事実、2.91mが武村式から導かれた数値であることについては認めざるを得ませんでした。

また、武村式は日本周辺の地震データから導かれた式だということは明確に認めました。

御田氏は、入倉式のほうが武村式よりも新しいと述べ、入倉式のレシピでは地震動の再現性が確認されていると強調しました。しかし、日本の大地震の再現性が確認されていないことを、まさに武村式が示していると言えるでしょう。

こちらから改めて、次の点の確認を求めることになりました。

  1. 小林氏が審査会で述べたのは、津波評価のすべり量2.91mを基準地震動にも使うよう発言したこと(テープ起こし通り)。
  2. 2.91mは武村式に基づくものであること。
  3. 武村式を含めて、他の手法での再評価を関電など電力事業者に要求すること。

◆水素爆発

新規制基準で要求される重大事故時の水素爆発の評価について、基準が禁止している水素爆轟(ばくごう)が発生する水素濃度13%の基準値を超える恐れがある件について、相手方は、PWR担当の布田氏でした。この件については、検討中を繰り替えしていました。

こちらからは、電力事業者の評価が水素濃度12.8%で、基準の13%に肉薄していること、解析コードに不確かさがあり、これを考慮すると13%を超えるおそれがあること、一つのコードでしか行われておらず、他のコードをもちいたクロスチェック解析を行うべきであることを主張しました。

布田氏は、クロスチェック解析を実施するかどうかは場合による、また、解析コードの不確かさについては確認していると回答しました。ここで、規制市民の会の専門家グループの滝谷さんが発言し、事業者の出した資料では、解析コードの不確かさは2.4%程度になっている、これを考慮すると13%を超えてしまうとの指摘がありました。

水素爆発の問題はすでに新規制基準に違反している可能性があり、きちんと検討するよう求め、また、クロスチェック解析については、重大事故の解析などこれまでなかったことですので、当然のこととして実施を求めました。

◆原子力防災・避難の問題

原子力防災の件は、原子力規制庁で内閣府原子力災害担当室でもある中氏が対応しました。重大事故では、電力各社のシナリオは、事故から約20分後には炉心溶融、1時間数十分後には溶融燃料が原子炉圧力容器を抜けて出てくる(メルトスルー)となっている。

このシナリオは、審査基準で求めている「溶融炉心の下部への落下を遅延・防止するために原子炉圧力容器へ注水」に違反するとの指摘に対して、布田氏は「炉心を守らないでいいのか」と審査会合やヒアリングで聞いている。四国電力からだけ「他のポンプを使って注水を検討したい」と回答があったと紹介した。規制委員会としては、審査基準を審査の判断とするべきで、炉心溶融を放置する現在のシナリオは認められないとはっきり態度を示すべきとの指摘に対しては、口を濁しながらも「他の方法などについても検討がされるかもしれないが、審査基準で書かれているものが判断基準です」と答えました。

次に、このシナリオの場合(事故から約20分で炉心溶融開始)、一体避難準備でいつから避難なのかという質問に移りました。規制庁の中氏は一般的な対応について説明を始めました。しかしそうではなく、質問書では具体的な避難開始等の時間を聞いています。質問書は事前に出しているにもかかわらず「回答は準備していない」と。回答は宿題となりました。

国の指針では5km圏内の住民は、炉心溶融に至る前に「避難の準備」、炉心溶融が起こっているときは「避難中」と説明しました。やりとりの中では、事故後約20分で炉心溶融開始となっているが、電力各社は事態把握に10分は必要としています。そうすると、10分で避難が実施できるのかについて、「10分での避難は簡単ではない」と答えました。

避難計画については、何も具体化していないことがはっきりしました。

  • 広域避難についての国と自治体の協議も「大きな骨格だけ」
  • 台風や積雪等との「複合災害は考慮すべき」と回答しましたが、具体的に台風等による避難路の検証はしていない。冬の北海道で一体避難できるのか、一度現地に来てほしい。福井の規制庁職員から地元の不安は伝わっているのか?回答はまだもらっていない等々の意見が続きましたが、何も進んでいません。
  • スクリーニングについての詳細は「年度内に示せないか検討中」。「ゲート式のスクリーニング機器は、話題にはなっているが・・」。数万台の自動車・バスの集結地点、除染についても具体化していません。
  • プルーム通過による影響を避けるために、30�を超えて設定するPPAという区域設定が進んでいない件についても、いつになるかはわからないという状況でした。
  • 国の「原子力災害対策指針」で乳幼児の飲食物摂取制限を撤廃したことについては、「乳幼児も含め配慮した基準にしている」などと、ひどい回答でした。
  • 避難所の開設期間については「2ヶ月を上限にするよう、国から指導はしていない」
  • 避難受け入れ地域が右端する費用については、「基準を示すのは難しい」と答え、自治体の要求にも耳を貸そうとしていません。

こんな状況では再稼働はできないだろうと迫ると、中氏は、「防災は原発が稼働していても止まっていても問題になる。再稼働には関係なく、全力で取り組みたい」という的外れな決意表明。会場からは、防災なしに再稼働などありえないとの声があがりました。

1・29院内集会・政府交渉 連絡先団体
グリーン・アクション/美浜の会/原子力規制を監視する市民の会

地震動の過小評価は許せない!1・29院内集会・政府交渉
Ustreamのアーカイブ(配信:IWJ チャンネル 5)

2014年1月29日:地震動の過小評価は許せない!1・29院内集会
http://www.ustream.tv/recorded/43213235
5:35基準地震動(美浜の会:小山)
33:20重大事故対策(フクロウの会:阪上)
48:10重大事故対策・防災計画(美浜の会:島田)
57:44報告

2014年1月29日:地震動の過小評価は許せない!1・29政府交渉
http://www.ustream.tv/recorded/43215182
3:30基準地震動
53:40重大事故対策
1:13:30重大事故対策
1:21:20防災計画