「六ヶ所再処理施設総点検に関する検討会」第9回への要望書
2004年2月24日
- 主査 神田 啓治 様
- 検討会委員 各位 様
日本原燃の報告には虚偽があります
それをそのまま是認することなく、責任ある正確な判断をしてください
現在のスケジュール優先をけっして容認しないでください
私たちが原子力安全・保安院から入手した「日本原燃株式会社 再処理事業所 再処理施設の工事についての使用前検査成績書」(当時の核燃料規制課作成)に照らせば、原燃の根本原因分析(RCA)過程での「事実」に、少なくとも次の点で重要な虚偽が含まれています(別紙資料を参照してください)。
このような虚偽に基づく原因判断について、それはすでに終了したことだとの姿勢はけっしてとらないでください。現在まさに目の前にスケジュール優先が存在することに目を向けてください。地元青森県民はもちろん、国民全体に対する責任を明確にしてください。
日本原燃報告の虚偽
1.工期の妥当性判断
貴検討会を通じて非常に重要な位置にある資料7−2−1の4頁で、原燃は「F施設プールライニング工事の工期設定に無理があったかどうかについて、原子力発電所プールの工事量及び作業工数と比較することにより評価した。その結果、・・・(略)、工期の設定は妥当であったと判断できる」と記述しています。ここで作業工数の基礎となる後張りライニング工事期間について、原燃は「約7ヶ月」としています(資料6−5)。
ところが、前記「使用前検査成績書」の具体的事実から、この期間は約7ヶ月ではなく、実際には約3ヶ月であると判断できます。原燃は資料6−5で何も具体的な事実を示すことなく、7ヶ月という虚偽の期間を意図的に書いているに過ぎないのです。
この工期(スケジュール)問題は、最初から何度も繰り返し議論されてきた貴検討会の重要課題のはずです。それなのに、資料6−5について何も検討することなく、虚偽の報告をそのまま是認するような姿勢では、貴検討会としての責任が問われるのではないでしょうか。
2.ライニングの「板取」について
原燃の根本原因分析では、ライニングの「板取」について、現場での(単に設計図どおりにするのでなく、実際のコンクリート躯体の測定結果に基づく)板取工程は存在したが、それが機能したかどうかはっきりしないとの判断を示しています(資料7−2−3添付−1−1)。その判断によって、基本的な責任を施行会社に負わせています。この責任転嫁は、資料7−2−1の2頁にある「事実関係から導き出される主な行為の流れ」からも読み取れます。
ところが、前記「使用前検査成績書」によれば、すでにミリ単位にまで切断されたライニングプレートのすべてが、コンクリート打設が完了する前に現場に搬入されたと判断できます。すなわち、現場での「板取」工程は最初から想定されていなかったということです。しかも、そのプレートを受け取っているのは、施行会社ではなく元請会社なのです。
明らかに原燃の根本原因分析の前提が事実と異なっており、それは責任の所在判断にも影響を及ぼすものです。このような虚偽を放置したまま、前に進んでよいのでしょうか。
原燃の根本原因分析の結果が示すもの
問題はこれら個別の虚偽ばかりではありません。それ以上に、原燃が行った根本原因分析の結果はきわめて重要な事実を物語っています。例えば、「化学的な安全性など原子力安全以外に対する品質保証の考慮が十分でなかった」との記述は、委員からもご指摘のあったとおり、再処理工場の本質的部分が信頼できないと原燃が自認していることを示しています。根本原因分析の結果は全体として、原燃の品質管理に根本的な欠陥があったこと、すなわち、F施設や本体は初めからつくり直す以外に信頼性がないことを示しています。このことを、原燃が自ら吐露していることを意味しています。
現在のスケジュール優先をけっして容認しないでください
上記のように、虚偽に基づく原燃報告では、大量の不正溶接の原因は解明されているとは言えません。ところが、原子力安全・保安院は、これらは終了したとして強引に次の段階に進もうとしています。2月13日付けで原燃に報告書を提出させ、第9回検討会(2月29日)および第10回でそれに片をつけようとしています。委員の中から、「議事の運び方が一回では多すぎるし、余りにもスケジュール優先」だとのご意見さえ出ているほどの急ぎ方です。
このような強行姿勢の背後には、東電福島第二原発における使用済み燃料プールの切羽詰った状況があると思われます。その4号機や2号機では、六ヶ所プールに運び出すことができないため、今回の定検で取り換える燃料体数を制限せざるをえない状況にすでに追い込まれています。1号機と3号機の使用済み燃料プールも、逼迫がもはや時間の問題となっています。六ヶ所F施設をつくったときと同様の状況が、いままたより切迫した姿をとって迫ってきているということでしょう。
しかし、東電の切羽詰った状況があるからと言って、六ヶ所プールの不正問題を安易に片付けることはけっして許されることではありません。青森県民はもちろんのこと、国民全体もそのような「解決」ではとうてい納得することはできません。原子力安全・保安院のスケジュール優先に迎合することなく、真実を見極めるよう十分時間をかけて、安全を第一にしっかりと検討してください。
地元住民や国民に対する貴検討会の責任をまっとうしてください
貴検討会での議論には、本来の役割範囲を超えている部分もあるようですが、それはまったく自然なことだと思われます。なぜなら、291箇所という大量の不正溶接の存在から、原燃の体質そのものに根本的な欠陥があるに違いないとの問題意識を誰もがもつからです。そのような目で地元住民から、国民全体からも貴検討会は注視されています。しかも、六ヶ所再処理工場を本当に動かしてよいのかどうかの広範な議論が背後にあるために、客観的にみれば、貴検討会が再処理工場の運命を大きく左右するような立場におかれているのです。それだけの責任が事実上貴検討会に課せられているのではないでしょうか。
これまで貴検討会で行われてきた率直な議論からすれば、いまのようなままで終息を図られてしまうことは、委員のみなさんにとってけっして本意ではないと思われます。ぜひ再度初心にかえって、少なくとも虚偽の点については見逃さずご検討くださるよう要請いたします。
付記:前記「使用前検査成績書」の分析結果(別紙資料)について、正確かどうかを確かめるため、私たちは2月4日に質問書を原燃に提出しました。しかし、何度催促してもいまだに回答が寄せられないため、ここでの判断は、手持ち資料の範囲内の情報に基づくものであることをお断りしておきます。
以上
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