原子力規制委員会宛の質問・要望書

大飯原発の断層(破砕帯)調査と再稼働の判断基準等に関する質問・要望書

◆大飯原発の運転を停止し、警告を発してきた活断層の専門家を調査団に入れること
◆安全基準の骨格段階で再稼働の判断を行うような姿勢は撤回すること

原子力規制委員会委員長 田中俊一 様
2012年9月29日

 大飯原発の断層(破砕帯)調査については、社会的に大きな注目を集めている。9月26日の第2回規制委員会では、「関西電力(株)大飯発電所の敷地内破砕帯調査に係る基本的方針について」が示され、「調査団」の選定などに関する基本的方向が島邦彦委員から報告された。活断層の調査にあたっては、調査団の専門家の選定が重要な意味をもつことになる。さらに、活断層であることが認められれば、これまでの対審指針や「手引き」に即して、活断層の上には重要施設はつくってはならないという大原則が順守されるべきである。

 また、大飯原発の運転継続について、「政治的判断で再稼働されたものをすぐに止めるということにはならない」という田中俊一規制委員長の発言は、「政治からの独立」という原子力規制委員会の基本的理念に反するものであり、到底容認することはできない。同時に、大飯原発3・4号の運転継続に関する安全判断について、規制委員会としての見解は未だ示されていない。さらに、田中俊一委員長は、安全基準の骨格ができた時点で、再稼働の判断が可能であるかのような発言までおこなっている。安全基準の改定を含む原子炉等規制法の施行前でも再稼働の判断ができるとするような発言は、法律そのものを踏みにじるものである。
 
 このような危惧から、以下の質問と要望に明確に回答することを求める。

質 問 事 項

1.大飯原発の断層(破砕帯)現地調査に関する「調査団」などについて
(1)これまで原発の設置許可や耐震バックチェックの審査にあたった専門家は調査団には含めないということでいいか。

(2)「調査団」に参加する専門家については、日本活断層学会などの学会の推薦を受けて、規制委員会が専門家を選定するとのことだが、選定の基準は何か。
 
(3)専門家の選定は、具体的にどこまで進んでいるのか。

(4)活断層の認定については、変動地形学の専門家で「調査団」を構成すべきではないか。

(5)地震・津波に関する意見聴取会の委員は調査団に参加するのか。

(6)大飯の断層問題に警告を発してきた東洋大学の渡辺満久さんは大飯の「調査団」に当然入るべきと考えるがどうか。

(7)現地調査では、国会議員や市民の立ち会いも認めるべきだと考えるがどうか。

2.大飯3・4号の運転を止めて調査すべき
(1)敦賀原発の断層現地調査では、掘削時に配管を破損するという事故が起きた。運転中に同様のことがおこれば大事故につながる可能性もあるため、運転を止めて調査すべきではないか。

(2)トレンチ調査は、関電の計画では2箇所となっている。これでは不十分である。原発の運転を止めて渡辺氏が指摘している3箇所を調査地点に加えるべきではないか。(別紙報告書参照)

(3)大飯原発の敷地内にはF-6断層以外にも多くの断層が存在する。地震・津波意見聴取会では、委員から「わざわざ破砕帯の多い場所を選んで原発を建てているようだ」との意見もあり、F-6断層以外の敷地内断層についても調査すべきとの意見が出ていた。それらの調査を行う予定はあるのか。

3.F-6断層が活断層と認められれば、大飯原発は運転できないはずである
(1)「発電用原子炉施設の耐震安全性に関する安全審査の手引き」(以下手引き)では、Sクラスの施設は活断層の上につくってはならないことになっている。大飯原発の場合、F-6の真上に非常用取水路が存在する。これはSクラスの施設である。
 F-6断層が活断層だと認められれば、大飯原発の運転はできないという認識でいいか。

4.断層を3つに区分する保安院の考え方について
 地震・津波意見聴取会で保安院は、「原子力発電所敷地内の破砕帯の評価に当たっての検討の考え方」を示し、断層を3つに分類する考え方を示した(�主断層、�副断層、�弱面)。意見聴取会では2回の議論が行われただけだが、委員から疑問の声が多く出されていた。
(1)この考え方は、規制委員会にも引き継がれているのか。

(2)「弱面」について、下記ご教示いただきたい。
1)12万〜13万年前以降に動いていないものを「弱面」と呼ぶのか。
2)12万〜13万年前以降に動いたものであっても、断層活動以外の成因でずれているものを「弱面」としているのか

(3)12万〜13万年前以降に動いたものでああれば、「手引き」に従い「断層活動が原因であることが否定できない場合には」、活断層とすべきであると考えるが、いかがか。

(4)9月4日の福島みずほ議員へのレクでは、小林耐震室長(当時)は、活断層だと認められれば、現在の「手引き」どおり、その上に重要施設を作ってはならないと述べたが、それは現在もそのとおりの認識でいいか。その場合の活断層とは、12万〜13万年前以降にずれが認められたものという理解でいいか。

5.再稼働の判断基準と、大飯原発を動かし続けている安全性の根拠について
(1)再稼働についての規制委員会の基本的方針は、下記のとおりでいいか。
  �ストレステスト結果は判断基準にしない。
�4閣僚の判断基準は規制委員会の判断基準にしない。
�新たな安全審査指針、防災指針、安全基準等は来年7月までに策定することになっており、少なくともそれまでは、停止中の原発の再稼働判断は行わない。
(2)規制委員会の田中俊一委員長は、26日の会見で、新しい安全基準の骨格を来年3月までに策定し、骨格段階でも再稼働の判断を行う可能性があると述べた。これは事実上、安全基準の改定を含む原子炉等規制法が正式に施行される前でも再稼働の判断を行うということになる。法律にも違反し、再稼働ありきのこのような姿勢は撤回すべきではないか。
 
(3)規制委員会は「政治からの独立」を基本的姿勢としているはずだが、田中俊一規制委員長は、9月22日付朝日新聞のインタビューで、大飯3・4号の再稼働について「(国が)政治判断として福井県やおおい町と相談して決めたことなので、すぐに止めることはしない」と述べている。26日の会見でも同様の趣旨を発言している。

  �規制委員会では、大飯原発3・4号の運転継続について審議したのか。

�大飯3・4号は運転を続けているが、規制委員会としてこれに関する安全性の判断根拠は何か。

�「政治判断で決めたことなので、すぐに止めることはしない」というのは、「政治からの独立」を掲げる規制委員会の基本的理念に反する。田中俊一氏は、この発言を撤回すべきではないか。

(4)大間原発の工事再開が決定されたと報道されている。
  �少なくとも、福島原発事故の教訓に立った新しい安全基準が策定され、審査がされてから、大間原発の工事再開を検討すべきだと考えるが、いかがか。
�まずは、工事再開の中止を表明するべきではないか。

要 望 事 項

1.大飯原発の断層調査にあたっては、原発を止めて行うこと。
警告を発してきた渡辺満久氏などを調査団に含めること。また、現地調査では、国会議員や市民の立ち会いを認めること。

2.断層活動が否定できない限り活断層と認めること、活断層の上には重要施設を設置してはならないという「手引き」の原則を堅持すること。

3.安全性の判断根拠もない大飯3・4号の運転を直ちに停止すること。安全基準の骨格段階で再稼働の判断を行うような姿勢は撤回すること。

4.大間原発の工事再開については、まず、中止を表明すること。少なくとも、新しい安全基準が策定され、それに即した十分な審査が行われてから検討されること。

5.原子力規制員会の人事は、日弁連などから、原子力規制委員会設置法7条7項違反であることが指摘されている。また、国会の同意を得ていない状況で、内閣による任命を行うことは、法律の濫用である。�日本原子力研究開発機構や日本アイソトープ協会は原子力事業者であり、原子力規制委員会設置法第7条第7項3号で原子力事業者の委員長・委員への就任を禁じている規定に違反していること、�設置法の理念に反していること、�低線量被ばくの影響を過小評価している田中俊一氏、中村佳代子氏の資質は疑問である——などの理由により、原子力規制員会の人事は撤回すべきである。

2012年9月29日

グリーン・アクション
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