「もんじゅ」廃炉は持続可能な社会への第一歩

第22回日本環境会議・滋賀大会
環境再生と持続可能な社会
─Sustainable Societyを目指して─
[第4分科会「持続可能な社会とエネルギー」]

講演レジュメ

アイリーン・美緒子・スミス(グリーン・アクション代表)

2003年1月27日の「もんじゅ」裁判原告勝利判決

「もんじゅ」は1トン以上のプルトニウムを燃料として使う研究開発中の「高速増殖炉」の原型炉です。核燃料サイクルの中核施設と位置づけられてきましたが、1995年12月ナトリウム漏えい火災事故のため停止して以来、現在も止まっています。これまで開発費として1兆円が投じられた上、止まっていても維持費として年間100億円を浪費しています。一方、電気をつくりだした実働時間はたったの1

時間に過ぎません。

本年1月27日、国を相手取った「もんじゅ」訴訟で、名古屋高裁金沢支部は原告側勝利の画期的な判決を下しました。国が旧動燃事業団に与えた原子炉設置許可を無効だとするものです。

今、私たちは持続可能な社会の実現に向けて大きな転換点にいるといえます。

「もんじゅ」を中心とする日本の核燃料サイクル計画は、持続可能な社会への道を大きく妨げている

日本では核燃料サイクルの開発が40年以上も続けられて来ましたが、その中心となる高速増殖炉は商業的に電気をつくるには未だ至っていません。この間、日本のエネルギー研究開発予算の大半は原子力、とりわけ高速増殖炉「もんじゅ」を中心とする核燃料サイクル開発に投じられてきており、今もその状況が続いています。高速増殖炉で電気エネルギーを作ることは大変な危険を伴うだけでなく、経済的にもとても採算のとれるものではありません。そして、なによりこのあまりにもかたよった予算配分のあり方が、これまで持続可能なグリーン・エネルギーの研究開発を大きく妨げてきたことが問題です。

  • ><br />図:日本のエネルギー研究開発予算(2001年)<br />IEA: Energy Polocies of IEA Countries 2002 Reviewのデータをもとに作成</li>
</ul>
<h2>「もんじゅ」計画は、日本の原子力発電を延命させている</h2>
<p>日本の原子力発電所からは毎年大量の核廃棄物(使用済み核燃料)が発生します。広島原爆が投下された時に降った「死の灰」のおよそ5万倍が毎年生み出されているのです。</p>
<p>「もんじゅ」を中心とする核燃料サイクルはこの使用済み燃料からプルトニウムを取り出し利用する計画として、この膨大な核廃棄物に「未来の重要なエネルギー源であり、負の遺産ではない」という特別な名目を与えてきました。つまり「もんじゅ」を中心とする核燃料サイクル計画は日本の商業原発から発生する核廃棄物問題の先送り、そしてまた更に核廃棄物を生み出し続けるための免罪符となっており、原発の運転を持続させている大きなカギとなっているのです。</p>
<p>国内では巧妙に政治問題化されずにきたものの、私たちが既につくってしまった核廃棄物の問題は大変深刻なものです。</p>
<ul class=
  • ><br />図:日本の原子力発電所から発生する核廃棄物(13基増設の場合)</li>
</ul>
<h2>「もんじゅ」早期運転再開を目指す動き</h2>
<p>さて、高裁判決によって「もんじゅ」はもう廃炉にされるものという安堵感が広がっていますが、決して油断できる状況ではありません。</p>
<p>あくまでも核燃料サイクルに固執する国は、判決から間もない1月31日、判決を不服とし最高裁へ上告受理申立を行いました。その後、全国の図書館に「もんじゅ」の必要性を訴えるパンフレットを配置させたり、地元での説明会を開催するなど、「もんじゅ」の早期運転再開を目指して活発に動いています。ねらいは最高裁の判断を待たずに「もんじゅ」の改造工事を福井県と現地である敦賀市に了解してもらい、『改造された新「もんじゅ」』を既成事実とし、判決による拘束を無効としてしまおうというものです。</p>
<p>福井県の「もんじゅ安全性調査検討専門委員会」でも推進派の学者ばかりが動員され、改造工事による安全性が主張されるなど、政治的な情勢如何によってはいつ何時了解が出され改造工事が強行されるか予断を許さない状況です。</p>
<h2>「もんじゅ」を廃炉に──全国市民の活動</h2>
<p>「もんじゅ」の廃炉を求める全国署名は92万名以上に達し、目標である100万人突破まであと一歩のところまで来ました。署名活動は現在大詰めを迎えています。(「もんじゅ」廃炉全国署名の事務局は「ストップ・ザ・もんじゅ」です。署名入手はTel:</p>
<p>072ー843-1904まで、または以下のサイトで署名できます:<a href=「もんじゅ」を廃炉に! 全国署名運動)

    核燃料サイクルはもはや実現しない夢として、その「負の遺産」を直視せざるを得ない時期になりました。エネルギー研究開発予算配分の適正化をはかり、先送りにしてきた核廃棄物の問題を真剣に議論すべきです。「もんじゅ」の廃炉は、持続可能な社会におけるエネルギー政策のあり方を模索する第一歩と位置づけられます。

    あと一押し、みんなの声を集めて、ぜひ「もんじゅ」の廃炉を勝ち取りましょう。そして、子どもたちに持続可能な社会を引き継いでいきましょう!

    (グリーン・アクション 電話:075-701-7223 e-mail: office@alexandertechnique.co.jp ホームページ:www.greenaction-japan.org)

    以上

    グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
    京都市左京区田中関田町22−75−103
    TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

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    グリーン・アクション
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