福島 II −3号炉シュラウドひび割れ──経産省が東電と一緒になって隠していた疑惑に関する抗議並びに要求書

経済産業大臣 平沼赳夫様

本日正午のNHKニュースなどで、福島第二原発3号炉でのシュラウドひび割れは、1997年(平成9年)の定期検査時に既に発見されていたにもかかわらず、東京電力が隠蔽し続け、昨年7月の定期検査で発覚したかのようにウソをついていたと報道されている。そして、このことを解明しているのは、貴省の原子力安全・保安院であり、今後調査を行うとされている。

あたかも保安院が自らこの東電のウソを見つけたように発表しているが、これこそ大嘘つきである。この福島 II −3号炉のシュラウドひび割れについて東電は、1年以上前からひび割れの存在を知っていたことが、昨年8月のNucleonics Week誌の記事の中で暴露されている。この事実を私達3団体は、すでに指摘し、9月3日付で貴省に質問書を送っていた。この時、貴省の職員は、「忙しくてとても5日(質問書の回答期限)には回答できない」旨をわざわざ電話してきた。しかし結局、市民団体に問題を指摘されたため、自らが東電と一緒になってシュラウドのひび割れを隠していたことが明るみに出ることは避けられないと判断したのだろう。あたかも自らが東電のウソを発見したかのような挙にでたのである。このような貴省の姿勢に断固抗議する。

貴省が東電と一緒になって、福島 II −3号炉のシュラウドひび割れの存在を隠していたということは次のような事実から明らかである。

国際的に有名なNucleonics Week誌に記載された「東電のウソ」を貴省が知らなかったはずがない。この記事は2001年8月30日に出されている。その時期は、既にGE職員からの内部告発があり、貴省が「調査していた」時期と一致している。

その後の展開も不可解である。東電は、2001年8月24日に福島 II −3号炉のシュラウド全周14メートルに及ぶひび割れについての報告書を保安院に提出していた。この中で、応力腐食割れが起きにくいとされたSUS316Lでは、応力腐食割れはリング部において発生するものであると評価している。しかし、今回の一連の不正の中で、この時既に東電は、同じ炉のリング部以外のシュラウドの胴本体においてもひび割れを確認し、これを隠蔽していたことが明らかになっている。つまりひび割れがリング部以外にも発生することを知っていたのである。これを隠したことは、発見時期と並ぶもう一つのウソである。

理由ははっきりしている。東電は、従来材料のSUS304を用いたシュラウドを既に交換していた。SUS316Lはその交換したシュラウドの材料である。これを交換するとなると、対象には新しい炉も含まれ、莫大なコストがかかる。交換せずに済ますには検査の徹底を図るしかないが、応力腐食割れが発生するシュラウドの溶接部は、リング部以外の部分を含めると非常に長く、内側は燃料をはずす必要があり、はずしても検査が不可能な箇所が多く存在する。検査対象をリング部に限定すれば、検査箇所は4カ所で済み、ほとんどの部分を検査することができる。検査コストを押さえ、そしてリング部以外のひび割れを隠蔽し続けるためにも、ひび割れをリング部だけに限定する必要があったと思われる。

これに対する保安院の対応には大きな問題がある。東電の報告を受けて保安院は、9月6日付で、東電の他の号機と他の電力会社にもシュラウドの点検指示を出した。しかしその時の指示は、東電がひび割れを隠ぺいしていることが明らかになっているにもかかわらず、東電の報告を鵜呑みにする形で、検査対象箇所をリング部の4カ所だけに極めて限定した内容だった。保安院の指示は、検査を簡略化し、隠蔽していたひび割れも極力見つからないようとの、東電の意図に完全に合致したものであったと言わざるをえない。

要求事項

  1. 私達の9月3日付の質問書に即刻回答すること。
  2. 貴省自身が東電と一緒になって問題を隠蔽し続けてきたことに関する事実を公表し、責任を明らかにすること。
  3. 貴省の責任者が出席した上で、即刻交渉に応じること。
グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
京都市左京区田中関田町22−75−103
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福島老朽原発を考える会 代表:阪上 武
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