BNFL社MOX燃料ねつ造事件の教訓から学ぶ
イギリスのBNFL社が、関西電力の高浜原発用MOX燃料を製造するに当たって品質管理データをねつ造していたことが1999年に発覚しました。その教訓は、柏崎刈羽原発に現在保管中のベルゴニュークリア社MOX燃料に対して生かされていません。
プルトニウム・スポット、燃料片(ペレット)の外径寸法等、MOX燃料の品質管理の対象となるものはいくつもあり、またデータのねつ造方法もいろいろ有ります。BNFL社で発見されたねつ造はペレットの外径寸法のデータ不正であり、その寸法の品質管理においてBNFL社ではいくつかの種類のねつ造が行われていました。また燃料製造に関するサボタージュ(燃料棒の中にネジ、コンクリートの破片の混入)も行われていました。
国と電力は1999年の秋、BNFL社で起こったねつ造の事実を通達する書簡を国はイギリス政府から、また関電はBNFL社から受け取っていたにもかかわらず、その情報を隠蔽し、プルサーマルを進めようとしていました。日本政府は二回もイギリス政府原子力施設検査局から不正の事実を通達されていたにも関わらず、「不正は無い」の電力の結論を支持したのです。このことは紛れもない事実として国会の議事録などに残されています。
BNFL社MOX燃料データねつ造事件の教訓
★データねつ造は単なる検査員の「手抜き」または「退屈」が原因というより、MOX燃料製造特有の問題、つまりプルトニウムとウランを混ぜる混合燃料の製造・検査の困難さから生じたと言えます。ちなみにベルゴニュークリア社と兄弟会社のコジェマ社のメロックス工場では、1999年に製造したMOX燃料の20.5%を不合格品として廃棄しています。つまりコジェマ社が作るMOX燃料は5個のペレットの内1個は製造時に廃止されるほど品質に問題があります。BNFL社不正事件の市民の分析では、不合格品を合格にする為の不正が行われていた濃厚な痕跡があったのです。
★ヨーロッパで製造される日本向けMOX燃料の健全性を確認する政府当局はどこにも存在しないのです。ねつ造の有無をふくめてイギリス政府、ベルギー政府、フランス政府そして日本政府いずれも一切健全性の確認は行わないです。
★BNFL社で不正が行われたことを解明できたのは、データが有ったからです。データなしでは不正の有無は解明出来ません。これはベルゴ社燃料にもどの燃料にも言えることです。BNFL事件では生データの公開があったからこそ市民は不正を暴露できたのです。そしてイギリス政府の原子力施設検査局は各ペレットの外径寸法の上・中・下の品質管理生データを元に不正の調査を行えたのです(日本政府は、BNFL社燃料もベルゴ社の燃料も一切調査せず)。
BNFL社不正事件の教訓は柏崎刈羽原発のベルゴ社燃料疑惑問題に生かされていない
BNFL社不正事件を受け、経済産業省の要求のもと、東電は「福島第一原子力発電所3号機並びに柏崎刈羽原子力発電所3号機用MOX燃料に関する品質管理状況の再確認結果について」の報告書を平成12年2月に出しました。この報告書はBNFL社不正事件の教訓を全く生かしていません。報告内容は何も具体性がなく、ペレットの外径データは(、1個のペレットの)上・中・下を不正が解明出来ない「上」と「中」と「下」の数値をばらして独立して発表し、しかもそれを数値でなくグラフにして出した。また生データは1ミクロン刻みで測定されたデータを4ミクロン刻みに纏め、この加工したデータのみを発表しています。データの不正が有っても分からないような発表の仕方です。経産省はこの報告を良しとしたのです。
BNFL社では行われなかった不正もベルゴ社では可能です。(仕様外の数値がでたときは、ペレットを適当に動かしたり回転したりして仕様内の数値が出たところで足踏みスイッチを踏む。)さまざまな不正の可能性がある中、ベルゴ社で行うことが出来る不正でイギリス政府、関西電力、BNFL社全てが「BNFL社で行われた」と認めている不正が有ります。その種類の不正の有無を解明するには、各ペレットの外径寸法の上・中・下の品質管理生データが必要です。このデータを公開し分析しなければ、BNFL社不正MOX燃料事件の教訓は全く生かされてないことになります(「BNFL社不正MOX燃料事件の教訓を生かす為には──ベルゴ社でも行うことが出来る同様の不正の有無を調べることです」をご参照ください)。
柏崎刈羽原発に現在保管中のベルゴ社燃料にはいくつもの疑義・疑惑が存在しています。生データの公開なしではこれらの疑義・疑惑の真相を調べ始めることが出来ません。
以上
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