2016年11月30日: [日本語訳] アレバ・ジャパン社宛書簡(再々度要請):MOX燃料品質保証データの情報公開について
[日本語訳]
Frédéric Patalagoity,
President and Managing Director
AREVA Japan
Urban Toranomon, Bld 5F 1-16-4
Toranomon, Minato-ku
Tokyo 105-0001
Japan
2016年11月30日
Dear Frédéric Patalagoity,
日本の原子炉用に製造されたアレバ社のプルトニウムMOX燃料の製造規格、品質管理と最終的には安全性について、我々の憂慮を再度この書簡にて要述させて頂きます。貴アレバ社により供給され高浜原発3,4号機と伊方原発3号機に装荷されたMOX燃料に関し、今年2度に渡り、貴社に対し書簡を送付させて頂いたことは御存じと存じます。2017年3月に予定されているプルトニウムMOX燃料の更なる船積み計画に鑑み、我々は貴殿と貴社に対して日本の市民社会からの憂慮に応えるよう要請しています。ご存知の通り、アレバ社の品質管理、製造規格は、この日本を含めかつてないほどの関心事になっています。
ご存知のように、15年前、プルトニウムMOX燃料の品質管理、製造規格のレベルの低さについて最初に露呈したのは英国セラフィールドのBNFL社により製造された福井県にある関西電力高浜原発4号機用8体のMOX燃料についてでありました。当時公開されたBNFL社の品質管理データに基づく分析を根拠としてグリーンアクションと美浜の会及び市民たちが訴訟を起こしました。最初の2か月もの間、関西電力とBNFL社は品質管理データの捏造を否定しましたが、1999年12月の司法判断が下される1日前に、関西電力とBNFL社は高浜4号機用のプルトニウムMOX燃料の品質管理データに捏造されたものが含まれることを認めました。その燃料は英国に返還され、処分されました。
1999年と2000年、我々はMIMAS法によりコジェマ/アレバ社のメロックス工場などで製造されたMOX燃料の製造・品質管理水準について分析を行いました。その結果、その品質管理はBNFL社以下であったことが分かりました。本件は、福島第一原発3号機用の32体のMOX燃料の装荷差し止めの裁判で争点となりました。それは東京電力とコジェマ社の子会社であるコモックス社間の契約のもと、MIMAS法により製造されたものです。福島地方裁判所は差し止めこそしなかったものの、MOX燃料の品質管理データは公開されるべきとしました。しかしその後もコモックス社によりそのデータが公開されることはありませんでした。そうした安全性と品質管理をめぐる疑惑と論争もあり、東京電力は2011年3月の原発事故の6か月前である2010年9月まで32体のMOX燃料を使う事が出来なかったのは周知の通りです。
2001年には28体のMOX燃料集合体が新潟県柏崎刈羽原発に輸送されましたが、品質管理問題、MOX 燃料の安全性をめぐる議論があり、刈羽村の人々の反対で、柏崎刈羽原発3号機に装荷されることはついぞありませんでした。15年近く経ちましたが、いまだにその燃料は原発敷地内の燃料プールに未使用のまま保管されています。アレバ社がMOXビジネスを日本の電力会社を相手に再開しようとした時も、品質管理と製造問題が継続しました。552キロのプルトニウムを含む12体のアレバ社製MOX燃料集合体が2010年高浜原発に輸送されました。そのうち8体は3号機に装荷されています。アレバ社と原子燃料工業(NFI社)(MOX燃料のデザインコード開発および認証に携わっており、関西電力および他の日本の電力会社の契約上の代理人)の間で、アレバ社の仏マルクールのメロックス工場の高浜原発用を含む日本のMOX燃料の規格・品質管理上の不合意があったことは存じ上げています。アレバ社の製造に関わる問題および非協力的な態度の結果、アレバ社が主張する中、NFI社は程度の低い規格・品質管理に合意しています。それは関西電力のMOX燃料にも及んでいます。アレバ社は2010年の品質管理のデータ公開の我々の要請に応えていません。
MOX燃料使用に伴う安全上の懸念・問題は厳しいものです。メロックス工場の規格・品質管理上の重要な問題がこれを更に厳しいものにしています。メロックスで採用されているMIMAS法の技術には、多数の問題、とりわけMOX燃料の熱安定性に関し深刻な問題点があります。もしプルトニウムペレットが熱で膨張し、ガス状の核分裂生成物によって内圧が生じれば、ガスで満たされたペレットと被覆管のギャップが開きます。これは安全上深刻な結果をもたらします。冷却材喪失事故の際,MOX燃料はもともと扱いにくいが、更に脆くなりやすくなり、燃料の‘再配置‘も起こりやすくなります。不均質な燃料構造は、過渡変化が起こると燃料棒破損と冷却経路を塞ぐ可能性を増し、炉心の冷却機能に衝撃を与えることがあり得ます。炉心燃料を十分に冷却できなければ炉の安全性がどうなるかは、2011年の福島第一原発の3つの炉のメルトダウンをもちだすまでもなく明らかです。よって、製造規格や品質管理について最も高い水準が保たれなければならないことは大変重要です。しかし、メロックス工場においてはこの限りではないようです。
メロックスのMOX燃料の熱安定性の問題はアレバ社により日本の原子炉の燃料が供給される計画の多くの問題の一つにすぎません。高浜原発のMOX燃料が搬送されてから5年経ちますが、アレバ社は製造規格・品質管理の詳細について公開する努力を怠っており、それは日本の人々にとって看過できないことです。東京電力福島原発事故の被害にあった日本の人々は、今、玄海3号と伊方3号の再稼働及び高浜原発3,4号機の再稼働というリスクにさらされています。高浜3,4号機にはそれぞれ24体、4体、つまり1,088キロ、184キロのプルトニウムを含むアレバ社製のMOX燃料が装荷されます。
日本の原子力規制委員会がMOX燃料のリスクの再評価を行ってないことは大変残念なことであり、このことを我々は原子力規制委員会に対し主張しています。それは信頼のおけない原子力安全・保安院による評価に依存することを意味するからです。同時に、このレベルの低い製品の生産者であるアレバ社は、まさにこれから日本の原子炉で使われようとしているMOX燃料の製造規格・品質管理の必要とされるデータ、生データの公開の義務を負っています。
この問題を透明にするとの確約なしでは、燃料が安全であるとの保証は無意味になります。
アレバ社が高浜原発の貯蔵中及び使用予定のMOX燃料、並びに伊方原発3号機と玄海原発3号機用のMOX燃料の品質管理データを公表することは、なお一層重要であります。更に我々は、フランスで製造中のMOX燃料16集合体の全ての品質管理データの提供を要請します。これらにはおよそ736キロのプルトニウムが含まれ2017年初めに4号機用に輸送される予定です。2010年にフランスの原子力規制機関であるASNは、グリンピース・フランスに対し、日本に輸送された高浜3号機用の燃料に関し、「ASNは日本の電力会社向けの製品の品質管理に関わっていない」と述べています。フランスと日本の規制機関のどちらも燃料規格と品質管理を監督していないアレバ社MOX燃料には、関西電力がアレバのMOX燃料を使うことによって、明瞭に追加の大きい損傷や危険があります。この問題に関して透明性を実現しなければ、燃料は安全に使用できると言っても、意味がありません。
我々は、アレバ社が将来のビジネスに対し、危機感を抱いていることを理解しています。現在フランスで貯蔵されている日本の16,000kgのプルトニウムについて、日本の電力会社との更なるMOX燃料契約を確実にすることは優先度が高いはずです。そうなれば、2016年に予定されているものも含めて、フランスから数百トンのMOX燃料が輸送されることになります。しかし、ビジネス上の利益を安全性より優先することはアレバ社自身を含め、誰の利益にもなりません。フランスの原子力産業において進行中の危機を考慮しても、貴社がフランスでの多数の原子炉のため、規格外の主要な鉄鋼部品の製造に中心的な役割を果たしていることも含め、基本的な品質規格を求める我々の要請に答えるという儀礼すら果たせないことは、既に落ち込んでいる貴社の名声を更に傷つけることになります。
福井の、関西圏そして愛媛、佐賀県ひいては四国、九州そして広く日本の人々に対し、プルトニウム実験を行う事は許されるべきことではありません。東京電力福島原発事故の記念日が近づいているだけにアレバ社がメロックス工場のMOX燃料、のすべての品質データの公開を拒んでいる事実は理解しがたいことです。我々は高浜・伊方・玄海原発で使用される30体のMOX燃料集合体並びに関西電量の為にメロックスで製造中の16体のMOX燃料集合体の品質管理データの即時公開を求めます。
敬具
Shaun Burnie
Senior Nuclear Specialist
Greenpeace Germany,
Tokyo
Aileen Mioko Smith
Executive Director,
Green Action
Kyoto
Hideyuki Ban
Co-Director,
Citizens’ Nuclear Information Center
Tokyo
Hideyuki Koyama
Director,
Osaka Citizens Against the Mihama, Ohi and Takahama Nuclear Power Plants
PDF: アレバ・ジャパン社宛書簡 2016年11月30日
English version: Letter to AREVA, 2016-11-30