六ヶ所・再処理施設及び高レベル廃棄物管理施設・ガラス固化体貯蔵建屋の設計変更・解析に関する日本原燃への質問書──ギュウギュウ詰めに変更したのに固化体温度がそのままなのはなぜですか

 六ヶ所・ガラス固化体貯蔵建屋の除熱解析に誤りがあると1月14日に原子力安全・保安院から指摘されたことについて、貴社は1月28日にその誤りを認め、「簡易計算」ながら再評価した結果を公表しました。詳しい内容は、そのときの第2資料に記載されている通りです。(以下、第2資料として引用:「特定廃棄物管理施設のガラス固化体貯蔵建屋B棟及び再処理施設においてガラス固化体を貯蔵する類似の冷却構造を有する設備における崩壊熱の除去解析の再評価結果報告書」)

 貴社は、解析誤りの原因等が明らかになっていないにも係わらず、4月18日に、ガラス固化建屋(KA)と第1ガラス固化体貯蔵建屋・東棟(KBE:以下、東棟)に関する「設計及び工事の方法の変更申請」を保安院に提出しました。

 この解析の誤りをめぐる問題について質問するにあたり、質問の趣旨を明確にするため、設計変更が2回行われた唯一の建屋である第1ガラス固化体貯蔵建屋・西棟(KBW:以下西棟)に主な焦点を当てて、私たちの疑問的観点を先に述べます。

 私たちが強く疑問に思うのは、西棟では2回の設計変更が行われ、そのために除熱解析の対象に変化があったにもかかわらず、貴社の解析では2回とも、ガラス固化体温度や他の温度がまったく変わっていないことです。仮に解析の仕方に間違いがあったとしても、このようなことは、ある意図が働かない限りあり得ないことではないでしょうか。

 貴社は、2001年(H13年)の西棟の第2回目の設計変更時の誤りについては、第2資料で一言も触れていません。そのような誤りが他の施設・設備に存在しないことは、まだ確認してないのではないでしょうか。

 西棟の第1回目の設計変更申請は1996年(H8年)で、迷路板の位置・構造・材料などを変更するものでした。この変更は東棟(KBE)と共通であり、さらに、ガラス固化建屋(KA)及び廃棄物管理施設の貯蔵建屋B棟(EB2)とも共通するものです。この変更の理由は「施工性の向上」でした。

 このとき、変更された迷路板部の構造を見れば、冷却空気の流れが悪くなるのは一目瞭然です。したがって、固化体温度が上昇するのは必然です。それにも係わらず、貴社は設計変更前と寸分違わない温度のままで国に変更申請書を提出しています。

 このときの誤りを貴社は「文献式の解釈誤り」と称していますが、これは方便に過ぎません。仮に何らかの式の適用誤りがあったとしても、温度が前と寸分違わないなどということはあり得ないからです。

 西棟の第2回目の設計変更申請は2001年(H13年)に出されたもので、1つの貯蔵ピット当たりの固化体収納管数を相対的に増やすというものです。平たく言えば収納管をよりギュウギュウ詰めにするような変更であり、貴社はこれを「貯蔵の効率化」と呼んでいます。

 この変更では、貯蔵ピット内のガラス固化体の収納管数を4×20=80本から7×20=140本と1.75倍に増やしながら、冷却空気の入口幅(ピットの横幅)は6mから8mへと1.3倍にしか増やしていません。ピット内ガラス固化体からの熱の発生量が1.75倍に増え、それだけ多くの冷却空気が必要になります。入口が以前より相対的に狭いため、空気流に対する抵抗が増えて空気の流れが悪くなり、固化体温度が上昇するのは必然です。

 それにも係わらず、貴社は固化体温度が高まることを認めず、設計変更前と寸分違わない温度のままで変更申請書を提出しています。

 このように、2回の設計変更をしても2回とも、温度を変えないことにしたのはなぜなのでしょう。率直に言えば、貴社は「施工性の向上」や「貯蔵の効率化」を優先させるあまり、固化体温度を変えないことを先に決め、設計変更前とまったく同じ値を書いて申請したのではないでしょうか。もし、正当な解析を行っていれば、貴社の第2資料・表3にある「再評価値」が如実に示すように、第1回目の変更ですでに固化体温度が設計上の上限である500℃を超えていたはずです。そうなれば、設計変更をすること自体が不可能になってしまいます。貴社の行為は2005.4.25設計ミス」などではなく、虚偽の解析、虚偽の申請だというべきでしょう。

 また、上記のとおり、貴社は第2資料にある経過の中で、第1回目の設計変更時の解析誤りについては記述していますが、2001年(平成13年)の第2回目の設計変更時の誤りについてはまったく何も触れてさえいません。それゆえに、その誤りと同様の誤りが他の施設・設備にないかどうか、調査すらされていないことは明らかです。

 再処理工場という危険な施設で誤りの行為が行われていながら、「品質管理体制は改善された」などと言っても、それは世の中に通用しないでしょう。青森県民やさらに一般の人々の安全性などまるで眼中にないような姿勢が貴社ではまかり通っているということです。

 設計変更に伴う誤りがあったことが明らかになったのに、誰も責任をとらないのはなぜですか。このような会社がウラン試験を継続していることに私たちは強い危惧を抱かざるを得ません。

 以上述べた問題意識が単なる憶測に過ぎないのかどうかを明らかにするために、以下の質問を行いますので、5月9日までに文書で回答をお寄せください。

質問事項

1.西棟(KBW)の2001年(平成13年)7月設計変更について

質問1.
西棟(KBW)に関する2001年(平成13年)7月の設計変更申請では、ガラス固化体の温度が変更前と同じ値になっています。それが誤りであることは、いまでは、第2資料・表3によって貴社も認めています。それがどういう誤りであるのか、なぜそのような誤りが起こったのかについて、貴社から何も説明がありません。その内容を説明してください。
質問2.
第2資料・表3の東棟(KBE)の設工認に関する数値は、西棟の2001年(平成13年)変更前の数値と同じはずです。そして、「入口迷路板部圧力損失」が東棟では17Pa、西棟では10Paとなっています。つまり、西棟では、2001年の設計変更によって、空気流に対する抵抗力が下がるという結果になっています。なぜ、どのようにして空気流への抵抗力(圧力損失)が減少したのか、この点を具体的に説明してください。
質問3.
西棟での2001年(平成13年)時点での誤りと同様の誤りが他にないことは、どのようにして確認されているのですか。

2.西棟の特別な危険性について

質問4.
西棟に関する2001年(H13年)の「貯蔵の効率化」の結果、第2資料・表3の「再評価値」によれば、ガラス固化体や壁の温度が他の建屋と比較して著しく高まる傾向になっています。また、外部に面する壁は、変更前には2重になっていたのに、変更後は地下の壁でも1重になっています。壁にひびが入れば、地下水が直接貯蔵ピットにしみ込む危険があるのではないでしょうか。このように、「貯蔵効率を上げる」ために危険性を高めたことについてどう考えているのですか。

3.1996年(H8年)の設計変更について

質問5.
貴社の第2資料・表3によれば、東棟(KBE)での「入口迷路板部圧力損失」の設工認の値は17Paとなっています。これは表3の冷却空気流量とつじつまが合うように計算された値のはずです。ところが、15頁の圧力損失の式を用いて「文献式の解釈誤り」を適用しても、とてもそのような値にはなりません。どのようにつじつまが合っているのか、第2資料15頁のBC、LBCなどの数値を公表して説明してください。
質問6.
KBE等の設計者による「文献式の解釈誤り」には2種類ありますが、そのうち決定的だと貴社も認めているのは、本来迷路板部の断面積を採るべきところを、迷路板がない場合の断面積を採用して計算したことです。迷路板による空気の流れにくさを計算するのが解析の目的なのに、迷路板を無視した計算をするなどということがなぜ起きたのですか。それほどに貴社や元請の技術的センスが低いのなら、すべての設計に信頼性がないことになりませんか。

4.4月18日付「設計及び工事の方法の変更申請」について

 貴社が4月18日に保安院に提出した「設計及び工事の方法の変更申請」について質問します。

質問7.
貴社の今回の変更申請では、外気温度は何度と仮定しているのですか。
貴社のこれまでの解析では、第2資料・表3にあるように、外気温度を29℃と仮定しています。しかし最近では、六ヶ所の夏季最高温度は34℃を超えるようになりました。さらに地球温暖化の傾向を考慮すれば、29℃ではなくせめて35℃を想定する必要があるのではないでしょうか。この点についてどう考えていますか。また、変更する必要がないというのなら、その根拠を示してください。
質問8.
貴社の4月18日記者発表では、変更申請の解析結果としては温度だけが公表されています。放射線の外部に漏れる量は前とどう変化したのか、1991年(平成3年)及び1996年(平成8年)の値と比較して公表してください。

2005年4月22日

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作成:2005年4月22日

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