セラフィールドはプルトニウム30キログラムを「紛失」──原子力監査公表
The Times, February 17, 2005
ザ・タイムス (英国)2005年2月17日
Nuclear audit says Sellafield has ‘lost’ 30kg of plutonium
By Angela Jameson, Industrial Correspondent
英国の主要な核施設であるセラフィールドがプルトニウム30キログラムを「失くして」いる事実を示すデータが本日公表された。
英国内の全原子力施設における年1回の核物質に関する監査が明らかにしたところによると、核爆弾7、8個を作るのに十分な量のプルトニウムが、昨年「不明量(所在不明の量)」として分類されていた。
このように大量のプルトニウムがどこかへ行ってしまっているという事実が明るみに出ることは、おそらく英国原子力グループと貿易産業省にとっては、独立の核施設廃止措置局(Nuclear Decommissioning Authority – NDA)設立にともなう原子力産業の大規模な再構築を、この数週間内に完成しようとしている時期であるだけに、非常に恥ずべきことである。
このような食い違いは、セラフィールドでは、2003年に19キログラムあり、過去10年間の累積紛失量は約50キログラムとなる。この施設を操業する英国核燃料公社(BNFL)は、この問題をおそらく単なる「記録上の損失」、つまり「在庫計算上の問題」として済ませようとするだろう。
しかし、独立の専門家たちは今回の発覚は深く憂慮するものであると語った。「彼らは、今回の問題を監査問題であるとみなしているが、テロリズムへの恐怖に対する今日の風潮を考えれば、彼らはこのようなことには異常なほど熱心になるはずなのに」と、独立系原子力コンサルタントのジョン・ラージは述べた。
また、核兵器の専門家フランク・バーナビー博士は次のように述べた、「所在不明の物質はいつもあることだが、今回の量は劇的な展開だ」「使用済み核燃料を再処理すべきでない大きな理由は、『不明量』がどのくらいなのか分からなくなるからだ」。
セラフィールドにあるすべての核物質は、汚染した貯蔵プールの中身やあらゆる排出物も含めて、国際原子力機関(IAEA)によって承認された指針に従って、毎年測定されている。
「ちょうど貸借対照表のようなもので、私たちはどれだけ入り、どれだけ出ていったかを計算している」とある関係者は述べている。
収支が合わないという事実は、悪質なことが起こったことを意味しているわけではないが、恥ずべきことであり、見苦しいことだ。核物資が不適切に転用されたことを暗に意味しているわけではなく、また施設内で警備が破られたことを意味しているわけでもない。
施設にどれだけの物質が存在するかに関するデータを常時保持することは慎重を要するし、また間違いを起こしやすい作業だ。各原子炉内に約5年間あった使用済み核燃料棒は、再処理のためにセラフィールドに運び込まれる。
それらは、処理される前に最長で4年間、貯蔵プールで冷却される。この工程では、燃料棒を細かく切断し、それらを酸に溶かして、溶液をウラン、プルトニウム、高レベル廃棄物の三つの流れに分ける。
この工程の各段階で、物質は重量測定され、プルトニウム含有量が計算される。放射能を扱うので、これらすべてが、遮蔽物越しに遠隔操作でなされなければならない。
この工程の最終段階で、回収されたプルトニウム重量が、投入した総量の概算とつりあわなければならない。それらの数値が一致することは滅多にない。しかし、食い違いが今年ほど大きくなることもまず無いことだ。
小さな測定の誤りが、今年のように、大きな誤差に増えていってしまうことがありうるのだ。
IAEAは、「不明量」に関する許容レベルの基準をプルトニウム処理量の約3%を超えてはいけないと規定している。セラフィールドでは、大量の使用済み核燃料が再処理されるので、今年の食い違いはこの基準内に収まるだろう。関係者によると、昨年、「不明量」の物質はセラフィールド工場を通り抜けた量のおよそ0.1%であった。「要するに、なにも紛失していないし、なにも施設から持ち出されていないということだ」と関係者はタイムズ紙に話した。
貿易産業省のスポークスマンは30キログラムの「紛失」は「新しい在庫評価システム」に起因するものだと述べた。
国内原子力施設の警備が9・11以降、強化されてきた。しかし、新たなデータによると、昨年、警備上の問題が45回起きている。情報公開法に基づいて明らかにされた資料によると、それらには、許可されていないアクセス事件や機微な情報の窃盗が含まれている。
国内原子力警備安全局が出したデータによると、人為ミスが深刻な警備上の問題をもたらしていると示唆している。
今後3年間、核施設の経営を引き継ぐために民間会社による入札が行われていく中で、健康安全委員会が原子力施設の安全性に懸念を示している。
(日本語訳:グリーン・アクション/美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会)
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