原燃にこれだけは答えてほしい県民被ばく11項目

2006年3月24日
六ヶ所再処理工場アクティブ試験
──青森県民はどのくらい被ばくするのですか?──

[六ヶ所再処理工場による青森県民の被ばく線量「0.022mSv」に関する質問]

 原燃はアクティブ試験をめぐる説明会などで県民の被ばくは、「実効線量0.022mSvを規制値としているので安全」だと説明しています。しかし、その「0.022mSv」の基礎になっている放射能の放出量や挙動及び被ばくに関する評価には大きな疑問があります。また、なぜ希ガスなどは全量を放出するのかについても不透明なままです。

 以下は、安全協定を交わす前に少なくともこれだけは、原燃に確認しておきたい県民被ばく関連11項目です。

1.クリプトン85はなぜ全量を大気へ放出するのですか

原燃はクリプトンなどの希ガスについて、「実用段階において総合的に実証された技術は確立されていない」と主張しています。15年間も前から原燃は同じことを言っています。これまで160億円の国家予算が除去技術開発のためにつぎ込まれてきました。原燃はなぜ、すでに完成している回収技術を導入し、青森県民が受ける被ばく量を減らす努力をしないのでしょうか?

2.炭素14はなぜ全量を大気へ放出するのですか

原燃は炭素14もクリプトンと同じように全量を大気中に放出することにしています。そのため、青森県で作られるお米1kg当たりにこの放射性物質が「90ベクレル」入り込むことを原燃は認めています。イギリスのセラフィールド工場では1990年代の初めからすでに炭素14の除去技術が適用されています。なぜ、原燃では適応しないのですか?

3.ヤマセによる影響をなぜ無視するのですか?

ヤマセによって上空に冷たい空気の層ができると、それが逆転層となり、排気口から出て上空に抜けるはずの放射能が地表に戻されます。六ヶ所の再処理工場の被ばく評価にはヤマセによる影響が考慮されていません、なぜですか?

4.海へのヨウ素放出量がフランスの工場より低く想定されているのはなぜですか?

放射性ヨウ素が大量に海に放出されると、海藻や魚介類で著しく濃縮されます。それを食べる人に大きな被ばく線量を与えます。六ヶ所再処理工場で想定されているヨウ素の海への放出量はフランスのラ・アーグ再処理工場の実績と比較すると、なぜか著しく低く想定されています。なぜでしょう? フランスの技術に依拠しながらなぜそのような違いがでるのか、その理由を明らかにしてください。

5.三陸海岸への影響について具体的に評価したのですか

原燃は、三陸は遠方なので汚染されないと言っています。しかし、海流は等水深線に沿って流れ、三陸方面では、水深200mの等水深線が海岸のすぐそばを通っています。そのため、海洋へ放出される放射能の大部分は三陸海岸に非常に近い狭い海域を流れていくことになります。放射能はリアス式の湾内に入り込み、そこに蓄積されるでしょう。原燃は海流の評価や解析を具体的に行っていれば、その資料を公表してください。これまで検出されなかったような放射性核種が、海産物から新たに検出されたりする事態が起こる可能性については、どう考えているのですか。また、三陸の海水、海底の堆積物や海産物などについて放射能モニタリングを行うことを具体的に考えていますか?

6.風によって海から陸へ放射能が運ばれる効果についてなぜ考慮しないのですか

下北の海岸では、波が高く吹き上がる光景がよく見られます。海から陸に吹き付ける風は、海中に放出された放射能を波しぶきにより陸に運びます。イギリスの工場周辺では、これにより、家の中からプルトニウムが検出されています。原燃はなぜこのような影響を考慮していないのでしょうか?

7.年々の放射能の蓄積をまったく考慮していないのはなぜですか

日本原燃の被ばく評価は1年分の放出放射能による被ばく線量を計算しているだけで、プルトニウムやセシウムが土壌に降り積もり、年々蓄積されることを黙殺しています。また、海岸や湾内の海底で放射能が蓄積していく効果もなぜ考慮しないのですか?

8.魚類における放射能の濃縮を過少評価しているのではありませんか

魚類におけるセシウムの濃縮係数(海水の中の放射能が濃縮される倍率)はイギリスの再処理工場では最大180と評価されているのに、六ヶ所再処理工場では「30」となっています。どうしてこんなに小さいのですか?

9.線量評価において食物の摂取量を低めにとっているのはなぜですか

日本原燃の被ばく評価では、牛肉の摂取量を1日、6グラムで計算しています。青森県が公表している牛肉の摂取量は1日20グラムです。なぜこんなに少く計算するのですか? また、フランスなどでは、被ばく評価の対象として、典型的な食料摂取を想定した「クリティカルグループ(決定グループ)」を想定しているのに、原燃は平均的な成人を対象としているだけです。なぜでしょう。魚を平均よりたくさん食べる人や肉をたくさん食べる高校生などではより被ばく量が高くなるのではないでしょうか。

10.集団被ばく線量をなぜ考慮しないのですか

イギリスでは再処理工場の稼働によって引き起こされる皮膚ガンの具体的評価が公表されています。原燃はこのような集団被ばく線量をまったく考慮していません。なぜでしょう。全操業期間にわたる集団被ばく線量を考慮した場合に計算される、ガン患者数とガンなどによる死亡者数を示してください。また、クリプトン85などの影響により皮膚ガンにかかるのは何名になるか教えてください(特に希ガスなどの場合青森県ばかりか世界的な規模の被ばくが問題になります)。

11.なぜ放射線に対する感受性の高い乳幼児への影響を見ないのですか

乳幼児は細胞分裂が活発で、それだけ放射線の影響を成人よりも強く受けます。しかし日本原燃の被ばく評価では成人だけが対象になっています。なぜでしょうか?

以上

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※:この内容は3月7日、日本原燃社長兒島伊佐美宛に出された質問に基づきます。質問は、グリーン・アクション、グリーンピース・ジャパン、と美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会から提出されたものです。 回答期限が3月14日でしたが、3月24日現在、回答は原燃からまだ来ていません。