渡辺満久氏のコメント
コメント
2012.08.07
東洋大学・渡辺満久(変動地形学)
大飯原子力発電所内において、F-6に関する現地調査が実施されているが、これについて強い要望がある。本調査ではボーリング調査が主体となっているが、「最近の活動性の有無」を明らかにするための調査方法として、ボーリング調査は不適切な調査手法である。時間と経費ばかりかかってしまい、確証を得ることができない可能性が高い。F-6の最近の活動性を確認するためには、数少ないトレンチ調査結果に重大な関心を払わなくてはならない。
本来であれば、国が調査会社を指定してトレンチ調査を実施すべきである。しかし、調査結果を正しく審査する体制が整っているのであれば、事業者がトレンチ調査を行うことを容認してもよいと考える。しかし、私共がこれまでに指摘してきたように、原子力安全・保安院による審査には非常に大きな問題がある。志賀原子力発電所のS-1断層の件は、誤った審査が行われてきたことを明確に示すものである。誤った審査を行ってきたことへの反省はなく、審査にあたった「専門家」の責任が問われることもなく、同様の審査が継続されてきたことに国民は気づきつつあるのではないか。
大飯原子力発電所の再稼働にあたっては、まず、F-6などの断層が活断層ではないことを明らかにすべきであった。その確認なしに再稼働に踏み切ったことは、とうてい許されることではない。再稼働してしまった状況下では、「F-6は活断層ではない」というストーリーができあがっているという疑念をもつ国民も少なくないであろう。上記したように、これまでの審査体制に大きな疑問があるのであるから、なおさらである。
今回のトレンチ調査結果が信頼できるものであることを示すためには、原子力安全・保安院の専門家だけではなく、活断層学会等が推薦する第三者の専門家を立ち会わせることが必要であると考える。このような姿勢を示すことによって、今後の安全審査への信頼を回復することができると思われる。