関西電力宛:美浜3号機の試験起動などに関する質問書
関西電力株式会社社長 森詳介様
2006年9月8日
1.美浜3号機の試験起動について
(1)遺族の意思を踏みにじったことについて
貴社は当初、7月にも運転を再開しようとしていました。しかし、美浜3号機事故の遺族の方々は、早期に運転再開しようとする貴社の姿勢を厳しく批判されました。このことは、改めて貴社の傲慢な姿勢を社会に見せつけることとなりました。なぜこのように遺族の思いを踏みにじるようなことをするのですか。
(2)下請け会社との連携さえ未だできていないことについて
5月16日に美浜3号機の格納容器内で、放射能を含む原子炉キャビティ水400リットルの水漏れ事故が起こりました。ホースを取り外す前にポンフを止めなければならないという基本的な作業手順が作業員に知らされていなかったためです。この「基本動作」を知っていたのは三菱重工業の作業責任者だけで、協力会社の作業員には知らされていませんでした。
「安全をなによりの使命に」という貴社の新聞一面広告では、作業前のミーティングに関電社員も参加し、協力会社作業員に「作業上の注意事項や安全のための情報をお伝え」していると書かれています。しかし5月事故では、このようなことは何も行われていなかったことになります。
- この事故は、貴社が掲げる「協力会社社員との意思疎通」さえできていないことを示しているのではないですか。
- この事故後、森本原子力事業本部長は「私自身を含め経営トップが現場に行き、一人一人に基本動作の大切さを説いていく」と話しました。社長や本部長が格納容器内の作業の指導にあたったのですか。
- この事故一つをとっても、貴社の「事故の再発防止策」は極めて不十分であり、美浜3号機事故の教訓は未だもって全く生かされてないことを示しています。運転再開のための起動試験ができるような状況にはないと考えますがどうですか。
(3)5名もの尊い生命を奪った美浜3号機は、貴社の安全軽視体質の象徴として、その戒めとして、運転再開など行わず、閉鎖すべきではありませんか。
2.高浜2号機の2次系配管の大幅減肉について
高浜2号機の今年4月からの定期検査(第23回定検)で、2次系配管の1ヵ所で、必要最小肉厚を割り込む大幅な減肉が確認され、配管は取り替えられました。この配管の減肉履歴は下記の通りです。
(1)1990年の定検で7.1�の配管肉厚が、9年後の定検で8.0�と肉太りし、さらに7年後の今回定検では、3.3�と大幅な減肉となっています。なぜこのようなことになっているのか、具体的に説明してください。
(2)この配管減肉に関しては、貴社のホームページで「計算必要厚さを下回っている箇所が1箇所確認されました」と書かれているだけです(6月27日プレスリリース)。以前のように減肉履歴・スケルトン番号などの情報を公開しないのはなぜですか。
3.検査制度の全面的改訂との関係について、運転中の検査や補修について
原子力安全・保安院は、「原子力発電施設に対する検査制度の改善について(案)」を発表し、意見募集を終了しました。2年後を目処に原発の検査制度を全面的に変更しようとしています。「状態監視保全」や「オンラインメンテナンス」等を大幅に導入し、検査を運転中に行うこと等によって設備利用率を向上させようとしています。
(1)「状態監視保全」について既に実施しているもの、今後予定しているものについて、例をあげて具体的に説明してください。
(2)「オンラインメンテナンス」について既に実施しているもの、今後予定しているものについて、例をあげて具体的に説明してください。
(3)美浜3号機事故は、定検を短縮し設備利用率を上げるために、原子炉が止まる前から定検作業を開始したことによって、尊い命を奪うことになりました。オンラインメンテナンス等のように運転中に検査を行うことは、事故の教訓に反するのではありませんか。
4.高浜3・4号機のプルサーマル計画について
社長は福井新聞のインタビューに応えて、プルサーマル計画について強い意欲を示しています。記事は8月24日に掲載されました。その中で、
(1)プルサーマル計画について「(関電が)中心になってやらないといけない」と述べていますが、なぜ貴社が「中心」でなければならないのですか。
(2)また「(原発で実績のある関電が)計画を引っ張るのは当然だ」と述べていますが、どのような「実績」をもとに「当然」なのですか。
(3)プルサーマル計画については、福井県の了解が得られるまで、コジェマシャ社との契約等一切進めないという理解でいいですか。
5.耐震安全性の改訂について
国の耐震安全基準が改定されました。それを踏まえて、貴社としてどのような調査などを行っているのか示してください。
6.六ヶ所再処理工場のアクティブ試験に関連して
(1)アクティブ試験の第1ステップで再処理された貴社の使用済み核燃料について、燃焼度毎に体数と重量(トン)を示してください。
(2)アクティブ試験の第2ステップで再処理予定の貴社の使用済み核燃料について、燃焼度毎に体数と重量(トン)を示してください。
(3)第2ステップではプルトニウムが抽出される予定です。貴社分のプルトニウム量とその使用方法を具体的に示してください。
(4)電事連は、青森県産の農作物や魚貝類について、宣伝チラシを発行したり、ホームページで「あおもり北采館楽天市場」のリンクを貼るなど宣伝活動を行っています。貴社としても青森産品の宣伝や販売促進などを行っているのですか。具体的にその内容を示してください。
(5)アクティブ試験で起きた内部被ばく事故について、日本原子力技術協会の石川迪夫理事長は「再処理工場で内部被ばくするのは百姓に泥が着くのと同じ」と発言しました。貴社はこの発言に同意しますか。
2006年9月8日
グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
京都市左京区田中関田町22‐75‐103
TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
大阪市北区西天満4‐3‐3 星光ビル3階
TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581