電気事業者の経営や原子力政策の失敗を電力消費者に押し付ける法律案に反対する要請書
コストから原発を考えるプロジェクト
原子力発電のバックエンド事業にともない発生する経費を電力消費者から徴収することを認める新たな法律を制定することに反対します。よって、今国会で法案の上程を行わないよう要請します。理由は以下のとおりです。
1)原子力バックエンド事業は将来にわたってどれだけの経費を必要とするのか、本当のところまったく見通しが立っていません。
資源エネルギー庁は、直接処分に比してコスト高が明白となった再処理路線を前提に、六ヶ所再処理工場で再処理される使用済核燃料のバックエンド費用の総額を約19兆円と見積もっていますが、再処理路線を選択してしまえば、費用負担はこれだけでは済みません。(*注1)
六ヶ所再処理工場で再処理できるのは、発生する使用済核燃料の半分に過ぎず、操業期間も限られています。全量再処理を選択する限り巨額な再処理工場を次々と建てていかなければならないという悪循環に陥ります。原子力委員会は、第二再処理工場を想定して約43兆円のコスト試算を出していますが、原子力に関するこういった試算が、当初見積り以内に収まった例はありません。
加えて、いずれの試算も再処理工場が稼動率100%で動くことを前提にしています。しかし、六ヶ所再処理工場の建設過程や他の工場の経験を見てもそのようなことはあり得ません。稼動率の低下により、費用負担はますます増えるでしょう。
現在、国民経済はすっかり疲弊しています。そうでなくても、こんな青天井にもなりかねない費用負担に応じることはとてもできません。
2)費用負担を一方的に消費者に押しつけるやり方には賛同できません。
原子力発電が事業化された当初から、放射性廃棄物問題の深刻さは再三指摘されてきました。にもかかわらず、きちんとしたバックエンド対策を計画することなく、問題を先送りにしてきた責任を曖昧にすることはできません。
「原子力は安い」と消費拡大を宣伝し、地域独占で守られてきた電気事業者が過去の利潤を還元してでもバックエンド費用を負担すべきではないでしょうか。同様に、国策としてしゃにむに原子力発電を推進し再処理路線を見直ししようとしない政府の責任も決して小さくありません。電力消費者のみをもっぱらの受益者に仕立て上げ、そこに一方的に負担を押しつけるやり方は、とてもフェアなものとはいえません。
電力自由化の中で、負担に耐えられないのであれば、電気事業者の判断で速やかに再処理路線から撤退させるべきです。そのために必要な制度・措置について真剣に検討することこそが、今、政府に求められています。
3)事業者の能力が疑われる六ヶ所再処理工場の稼動は危険です。
六ヶ所再処理工場では、今年1月になって、安全上重要な高レベルガラス固化体貯蔵施設において、設計にミスがあったことが明らかになっています。設計ミスは国の安全審査においても発見されませんでした。同様な問題が他の再処理施設にも存在する可能性があります。再処理工場は放射能汚染災害の可能性を高め、日常的にも放射能を放出します。事業者(日本原燃)の能力が疑われる工場を稼動させるのは危険です。
4)核燃料サイクル政策(再処理路線の継続)について国民的な合意が得られていない中で、制度・措置の法制化を急ぐべきではありません。
資源エネルギー庁電気事業分科会の中間報告には、「今回取りまとめた制度・措置の前提条件が引き続き満たされていることの確認や必要に応じた見直しも含め、議論を進めていく必要があるものと認識する。」との記述があります。しかし、パブリックコメントに寄せられた意見については審議が行なわれないまま、法制化だけが進められようとしています。
また、原子力委員会において、新原子力長期計画(以下、新計画)の策定にあたり、核燃料サイクル政策を含む原子力政策の見直しについて検討が行なわれていますが、まだ結論は得られていません。今年半ばには、「核燃料サイクル政策についての中間取りまとめ」を含む新計画案全体について、国民に意見を聴くパブリックコメントを募集するとのことです。
要請
核燃料サイクル政策について国民の合意のないまま、コスト膨張が明らかな再処理路線を前提にしたバックエンドコストを、消費者に負担させる「バックエンド法案」を、今国会へ上程しないよう強く求めます。
*注1 電気事業分科会中間報告「バックエンド事業に対する制度・措置の在り方について」
電気事業者の経営や原子力政策の失敗を電力消費者に押し付ける法律案に反対する要請書(PDF: 219kb)
コストから原発を考えるプロジェクト
事務局:
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「コストから原発を考えるプロジェクト」は、消費者団体、環境保護団体、脱原発団体の連合体です。原発のコストの問題に焦点をあて、市民や国会、電力会社などに、「もう、原発はやめていこう。他のやり方をすすめよう。」と呼びかけていきます。当面の課題として、原発コストを大幅に増やす核燃料の再処理は止めるべきであることをアピールし、原発に偏った経済的優遇措置や税金投入への動きを監視していきます。
呼びかけ団体(アイウエオ順):
核燃やめておいしいごはん/グリーン・アクション/グリーンピース・ジャパン/原子力資料情報室/原水爆禁止日本国民会議/ストップ・ザ・もんじゅ東京/東電と共に脱原発をめざす会/日本消費者連盟/ふぇみん婦人民主クラブ/福島老朽原発を考える会