青森県議会全員協議会(2月15日)に向けての議員宛説明資料:高レベル放射性廃棄物──ガラス固化体貯蔵施設「設計ミス」の問題:再処理とめよう! 全国ネットワーク
青森県議会全員協議会(2月15日)に向けての議員宛説明資料
ガラス固化体が冷却できない
日本原燃が、ガラス固化体を充分に冷却できないような貯蔵施設を設計・施工していたことが明らかになりました。
例えば、再処理施設内の西棟施設では、ガラス固化体の中心温度が430℃になると原燃は計算していましたが、実は624℃にもなることが1月28日に判明しました。(注1)
温度が600℃にもなるとガラス固化体は軟化し、ひびわれを起こし、地下での永久貯蔵にはとても耐えられないものになります。
そうすると、施設からの運び出しもできません。そのような「設計ミス」に基づく貯蔵施設を原燃は青森につくっていたのです。
(注1:1月28日に日本原燃が公表した「再評価結果報告書」p.13。西棟施設では、ガラス固化体の中心温度は約430℃→624℃、天井部のコンクリート温度は65℃以下→136℃に修正された。)
原燃の元請丸投げ体質が原因?
原燃は温度評価を間違った理由を、元請会社が「文献式の解釈を誤って計算した」からだと主張していますが、これは明らかにごまかしです。
前の設計から新たな設計に変更した際、明らかにガラス固化体を冷却する空気の流路が著しく狭くなっていました。「迷路板」というものの取り付け方を変えたためです。空気の流れが悪くなるので、ガラス固化体の温度が前の設計より高まることは、計算するまでもなく明らかでした。ところが変更前と温度の値がまったく変わらないという信じがたい解析結果を元請会社が出し、原燃はこれをそのまま国に変更申請(注2)として出していたのです。
プール水漏れ事故のときにも元請・下請会社への丸投げが批判されました。今回の問題も同じように丸投げが原因だとすれば、原燃の体質がいっこうに改善されていないことを表しています。
(注2:平成8年4月 事業変更許可申請)
同じようなミスは他にないのか
昨年、国の「六ヶ所再処理施設総点検に関する検討会」を交えて行われた再処理施設の健全性の総点検は、施設が設計通りに施工されているかどうかを検査したものであって、設計そのものと設計変更のチェックは行なわれていませんでした。(注3)
今回のミスは、設計変更を行ったときに生じた問題であり、原燃の設計能力・設計に対する姿勢が、したがって「再処理施設の健全性」そのものが疑われる出来事です。
(注3:2月1日「再処理とめよう!全国ネットワーク」が原燃に申入れを行った際に確認した。)
施工性を高めようとする効率主義が、今回の問題を引き起こしたのでは?
原燃がそのような設計変更を実施したのは、「施工性」を高めるためでした。
ガラス固化体貯蔵施設の空気流路に迷路板を付けるのは、放射線(ガンマ線と中性子線)が空気流路を通って外部に出るのを防ぐためです。しかしそうすると空気の流れ路が狭くなり、そのため冷却性能が悪くなるというジレンマが存在しています。その“程度”をどうするかというのが、迷路板の構造にかかっているわけで、設計変更はその“程度”を変えるものです。
設計変更により空気の流路が変更前より著しく狭くなるために、固化体の冷却に影響が出ることは誰にでも分かることです。もちろん設計者には分かっていたはずです。(設計者がこれを分かっていなかったとすれば、それはそれで大問題です。) 元請はそれを分かっていたことを伺わせるような記述が原燃の説明書(注4)にあります。
「施工性」を高めること、すなわち工期や経費を短縮したいという動機が、今回の原燃が主張する「解析ミス」を導いたのではないでしょうか? つまり、この「解析ミス」は、本当はミスではなく、変更を許可してもらうための意図的な確信犯的なものである可能性がきわめて高いということです。
(注4:1月28日「再評価結果報告書」p.20)
保安院の無責任な態度
ガラス固化体貯蔵施設において要ともいえる冷却と放射線遮蔽に係る設計変更があったにもかかわらず、行政庁(かつては科技庁、現在は保安院)も原子力安全委員会も、その解析をチェックすることなく追認が繰り返された挙句、許可され建設されてきました。原燃ばかりでなく、国の責任も厳しく問われるべきです。
ところが保安院は昨年12月、ウラン試験の開始前に、今回の解析ミスを原子力基盤機構から知らされたにもかかわらず、これをただちに公表することなく、青森県にも連絡しませんでした。原燃に対してもウラン試験開始の翌日になって照会した、と言っています。
青森県民の安全よりも事業者を優先する、規制当局としての責任を放棄した行為です。
さらに保安院は、私たちが行った会見(注5)のなかで、仮に設計ミスを見逃したとしても、使用前検査等があるからそこで引っかかるので問題はないという見解を示しました。ガラス固化体貯蔵施設の場合、発熱する模擬固化体を用いて試験をするということです。その妥当性には疑問があるものの、「段階的規制」と彼らが呼ぶこのような発想自体が、安全審査に対する無責任な姿勢を露呈しているというべきでしょう。
(注5:2月1日「再処理とめよう!全国ネットワーク」の保安院への申入れ)
原燃にウラン試験を続ける資格はあるのか
原燃は、これら貯蔵施設は、現在ウラン試験を実施中の施設とは「切り離されている」から、ウラン試験は継続してもいいと主張しています。しかし、どちらの施設をつくったのも、切り離されていない同一体の原燃です。その会社の設計能力と品質保証体制に疑問が生じた以上、ウラン試験を継続していいという原燃の主張は成り立ちません。外から指示を受けるまで重大なミスを放置してきたのですから、「設計ミス」は過去の事であって現在は品質保証体制が整っている、などという話も成り立ちません。
そもそも、化学試験の期間中に起こった不適合を処置できないうちに、またどのように処置したのかの報告も行わないうちにウラン試験に入った事そのものが、ウラン試験への移行条件を無視した行為です。
一方で発覚したミスを抱えながら、他方ではウラン試験を続行するという日本原燃の姿勢は、事の重大性を軽視し、事業の進展を急ぐあまり安全性をないがしろにする「スケジュール優先」の体質そのものです。再処理施設という極めて危険な施設を扱う日本原燃の管理・運営能力と企業姿勢に強い不安と危機感を覚えるものです。
MOX工場の議論を始める時ではありません
三村知事はアクティブ試験の手続きを中断しましたが、一方で、MOX工場の議論を始めています。知事の姿勢には一貫性がありません。再処理稼働が無ければ、MOX工場はないわけなので、MOX工場の議論を今始めることは、アクティブ試験も再処理工場の本格稼働も認めたことになるのです。
まずは、ウラン試験を中止し、再処理施設の総点検を再度行うべきです。
県議の皆様の良識ある判断を、切にお願いいたします。
以上
2005年2月13日
★詳しい内容が以下のホームページに掲載されています。
──「再処理止めよう!全国ネットワーク」が2005年2月1日に日本原燃宛に提出した申入書
──同じく2月9日に経済産業省の「六ヶ所再処理施設総点検に関する検討会」に提出した要望書
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