核燃料サイクルの見直しに関する原子力委員会への申入・質問書

原子力委員会委員長 近藤 駿介 様

いま、日本においては、核燃料サイクル政策に関する見直しの論議が沸騰しています。貴職は核燃料サイクルについて合理的・客観的に再評価すると宣言されており、これは賢明なご判断だと思います。

今月から始まる原子力研究開発利用長期計画(長計)の論議にタブーは設けないと貴職は断言されています。このことは、従来の路線にこだわることなく白紙の状態で、忌憚のない論議を行って核燃料サイクルの見直しを進めていくお考えだと私たちは理解します。

そのことを踏まえるならば、従来の全量再処理路線を前提として進めているコスト試算や長計に関連する様々な施策は、やがて出される新しい方針が決まるまで、いったん立ち止まり凍結するべきではないでしょうか。

とりわけ、六ヶ所再処理工場のウラン試験を今この段階で実施することは、今後に取り返しのつかない禍根を残すことになりかねません。施設全体が放射能で汚染された後に建設中止となれば、解体のコストが跳ね上がることになるでしょう。また、ウラン試験が既成事実となることによって、逆に、長計に関する自由な論議を制約する恐れが生じることも考えられます。

現行の長計策定時には、国民の意見はわずかしか反映されなかったという批判が出されました。その大きな原因は、国民の意見募集が、策定会議のほぼ終了する時点になってから実施されたことにあったのではないでしょうか。

以上を受けて、私たちは貴職に対し次の点を申入れし、同時に下記の質問を行います。質問へのご回答は、6月7日、お会いした時にお答えいただきたく、よろしくお願いいたします。

申し入れ事項

  1. 長計の策定論議は、現行長計にこだわることなく、新たな環境の変化を率直に踏まえ、政策選択肢にタブーを設けないという原則に沿って行ってください。
  2. 上記の原則に沿う議論に制約をもたらすような、例えばウラン試験などの先行的動きについては、これを現段階で凍結するよう、原子力委員会として「勧告」(「原子力委員会及び原子力安全委員会設置法」第24条)を含む措置をとってください。
  3. 国民の選択がどのようなものかを正確に把握するための具体的な方策を講じてください。

質問事項

質問1.
近藤委員長は、2004年5月18日付け東奥日報のインタビュー記事の中で、長計で見直しを行う観点について、「現実と将来予測を踏まえて目標と行動計画を再設定すること。議論は、政策選択肢にタブーを設けずに行うことが大原則だ」と述べられています。この「大原則」は、原子力委員会としての考え方であると確認してよろしいですか。
質問2.
例えば、六ヶ所再処理工場でのウラン試験を、論議の前に先行的に実施した場合、それが既成事実となって逆に論議の行方を縛ることがあり得ると思われますが、この点についてはどのようにお考えですか。
質問3.
委員長はまた、6月1日の原子力委員会定例会議後の記者懇談会で長計について、「特定のテーマに関し、優先して取り組むという考え方もある」と述べられたと報道されています(電気新聞 6月2日)。また、「原子力委では再処理と直接処分の経済性比較なども含め幅広い観点から検証していくとみられる」ともその記事に書かれています。再処理と直接処分の経済的比較は、全体の議論の基礎となるという意味で、優先的に取り組まれるべき特定のテーマになると考えてよいでしょうか。
質問4.
国民の選択によっては、現行長計ではすでに妥当としたことについても、環境の変化を踏まえてもう一度見直すことを排除するものではないという趣旨のことを、委員長はエネルギーフォーラム誌2004年5月号の中で述べられています。この場合、国民の選択についてはどのような方法で把握するおつもりですか。

2004年6月4日

六ヶ所再処理施設ウラン試験凍結・バックエンド費用国民負担反対
プルサーマル計画中止・中間貯蔵施設計画中止・「もんじゅ」廃炉全国会議
(この「全国会議」は2004年6月6日に東京で開催される会議を指しており、次の呼びかけ人によって主催されるものです)

呼びかけ人(活動する主な団体/呼び掛け人はすべて個人の資格です)
アイリーン・美緒子・スミス(グリーン・アクション)
井上年弘(原水禁日本国民会議)
菊川慶子(花とハーブの里)
小山英之(美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会)
斉間満(伊方原発反対八西連絡協議会)
阪上武(福島老朽原発を考える会)
鈴木かずえ(グリーンピース・ジャパン)
高木章次(ストップ・ザ・もんじゅ 東京)
富山洋子(日本消費者連盟)
野坂庸子(核の中間貯蔵施設はいらない!下北の会)
伴英幸(原子力資料情報室)
平野良一
深江守(脱原発ネットワーク・九州)
松丸健二(核燃やめておいしいごはん)
松本浩(原発設置反対小浜市民の会)
松浦雅代(脱原発わかやま)
山口泰子(ふぇみん婦人民主クラブ)

連絡先:
グリーン・アクション(担当者:スミス)
電話:075−701ー7223  ファクシミリ:075−702−1952
グリーンピース・ジャパン(担当者:鈴木)
電話:03−5338−9800  ファクシミリ:03−5338−9817

連絡先

グリーン・アクション
〒606-8203
京都市左京区田中関田町22-75-103
(代表:アイリーン・美緒子・スミス)
TEL: 075-701-7223
FAX: 075-702-1952

グリーンピース・ジャパン
〒160-0023
東京都新宿区西新宿8−13−11 N・Fビル2階
TEL: 03-5338-9800
FAX: 03-5338-9817