川内原発の再稼働を認めないよう求める緊急要請書
川内原発の新基準適合について「疑問が残る」
「今後も噴火を予測できる前提で話が進むのは怖い話だ」
川内原発の再稼働を認めないよう求める緊急要請書
鹿児島県知事 伊藤祐一郎 様
鹿児島県議会議長 池畑憲一 様
鹿児島県議会議員 各位
一.日本火山学会の提言を尊重し、警告を重く受け止め、川内原発の再稼働に同意しないこと。
11月3日、日本火山学会の原子力問題対応委員会は、原子力規制委員会の審査基準「火山影響評価ガイド」について、噴火予測の限界や曖昧さを踏まえ、見直しを求める提言をまとめました。提言は、巨大噴火について、モニタリングによって前兆の把握は可能としている点について、「噴火予測の可能性、限界、曖昧さの理解が不可欠」とした上で、ガイドの見直しを求めています。石原和弘委員長(京大名誉教授)は、ガイドに基づいて川内原発の新基準適合が認められたことについて、「疑問が残る」とし、「今後も噴火を予測できる前提で話が進むのは怖い話だ」とも述べています。
その一方で九州電力は、鹿児島県議会原子力特別委員会において、根拠がないにもかかわらず、「破局的噴火の場合は、地震などの前兆事象が数十年前から分かる」との認識を示し、山元春義副社長も報道陣に、「数十年かかり兆候が出てくる。しっかりモニタリングすれば、原子炉を停止し燃料を運び出し冷却する時間的余裕は十分にある」とこれも根拠なく述べています。鹿児島県知事も、記者会見で九州電力のこの説明内容を取り上げ、火山リスクについては問題なしとしています。これは、火山の専門家の見解とも原子力規制委員会の認識とも異なります。10月24日に行われた市民と原子力規制庁との交渉の場でも規制庁担当者は、数十年前に前兆が出るという見解について疑義があると述べています。
また、運用期間中に破局的噴火が発生する可能性についても、十分に小さいとする九州電力側の主張に対し、火山モニタリング検討チームにおいて、専門家は疑義を唱えていますし、日本の巨大噴火のリスクは100年に1%であるとの新たな知見も明らかになっています。
川内原発の再稼働を許せば、冷却のために5年は搬出することのできない燃料が新たに生まれてしまいます。数か月前に巨大噴火の前兆を捉えたとしても、人の避難は間に合っても、核燃料の避難は間に合わず、噴火と放射能という未曽有の複合災害を生むことになります。川内原発の再稼働を認めることのないよう要請します。
2014年11月4日
反原発・かごましネット/避難計画を考える緊急署名の会(いちき串木野市)/原発避難計画を考える水俣の会/玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会/美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会/グリーン・アクション/グリーンピース・ジャパン/福島老朽原発を考える会/FoE Japan/原子力規制を監視する市民の会
問合せ:090−8116−7155(原子力規制を監視する市民の会:阪上)
●補足説明
火山影響評価ガイドは、「核燃料の搬出等を行うための監視」としてのモニタリングの実施と「兆候を把握した場合の対処として、適切な核燃料の搬出等が実施される方針」の策定を要求しており、巨大噴火の数十年前に兆候を把握することが前提となっています。
川内原発の火山審査は、火山の専門家抜きで行われましたが、原子力規制委員会は、専門家の警告を無視できず、政府の公式見解として、「巨大噴火については観測経験がなく、規模や時期について予測は困難である」ことを認めています。また、九州電力が予測は可能だと主張する唯一の根拠となっている論文についても、原子力規制委員会が設置した火山モニタリング検討チームにおいて、専門家が論文の著者に確認し、「一つの事例にすぎず姶良などにそのまま適応できない」と指摘しています。検討チームでは、噴火の前兆現象は、せいぜい数か月〜数年前からであり、核燃料の搬出に間に合うという保証はないとの指摘も相次ぎました。核燃料の搬出には、燃料の冷却を待つだけでも5年はかかり、搬出先の目途は全くありません。
九州電力は結局、設置変更申請において、モニタリングのやり方や前兆の捉え方についての判断基準、核燃料搬出の具体的な方針や時間的に間に合う根拠を示すことができず、原子力規制委員会もただそれを実施するという方針を確認しただけで、実質的な審査はされませんでした。方針の中身については、今後、保安規定の審査で検討することになっていますが、九州電力は、10月8日に提出した保安規定案にも方針の中身を書けずにいるというのが実状です。九州電力は、公開義務のない社内規定に書くとしています。もし、燃料の搬出計画は、噴火の前兆が出てから立てるというのであれば、とても間に合わないでしょう。
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